24話
シグルはマリアナをまたベッドに引っ張りこんだ。昨日の昼間にも引っ張りこまれて悪戯をされている。マリアナは身を固くした。
「マリアナ。今日はさすがにしないよ。ダレン先生に注意されたからね」
「…はあ。そうですか」
マリアナが答えるとシグルはぐっと抱き寄せた。
「マリアナは良い香りがするね」
耳元で囁かれてマリアナはびくりとなる。シグルは面白そうにくつくつと笑う。
「シグル様。もしかして、私とんでもないことをしました?」
「そんなことないよ。むしろ、嬉しいくらいだ」
そんな事を言われてマリアナはどくんと心臓が高鳴るのがわかった。顔に熱が集まる。シグルはさらに彼女を抱き込んだ。
「マリアナ。ちょっと、わたしの上に乗ってくれないかな?」
「え」
「その。馬乗りにってわけじゃなくてね。わたしが下になるから上にはマリアナになってほしいんだ」
簡単に説明されてマリアナは頷いた。そろそろと彼から離れる。シグルは仰向けに体を動かすとマリアナに手招きをした。
そのまま、シグルの上に乗るが。彼の腹などに足などが乗らないように注意しながらにする。
ちょうど、マリアナがうつ伏せになるとシグルはよくできましたと言わんばかりに頬にキスをした。顔は笑っている。
「…シグル様。この体勢だと疲れませんか?」
「ん。そんなことはないよ」
「私は疲れそうです」
「マリアナ。今は難しく考えるのはやめよう。楽しむ事だけを考えたら?」
「はあ。わかりました」
マリアナは堅い調子で答える。シグルの秀麗な顔が間近にあって余計に心臓が悲鳴をあげそうだ。向こうはどうなのだろう。ふと、そう思ってシグルの胸元に耳を当ててみた。
どくどくと速く打っていて彼も自分と似たような状態だと気づく。
「シグル様。心臓がすごく速く鳴ってる。私と同じですね」
「…マリアナ。それは言わないで。不意討ちは良くない」
シグルはうっすらと頬を赤らめた。月明かりでわかる。マリアナはふふと笑ったのだった。
その後、マリアナとシグルは普段とは逆転した体勢でいちゃついた。といってもシグルがマリアナをからかっているのだが。月光の下で恋人同士が逢瀬を楽しんでいる。
「シグル様。私、戻りますね」
「んー。駄目」
「な、何でですか?!」
「え。だって、私がもっといちゃつきたいから」
「…完全に個人的な理由ですよね。いちゃつきたいって」
マリアナがじとりとした目で言うとシグルはあらぬ方向を見た。
やはり、当たっているらしい。シグルの事を余計にじとりと見る。マリアナは騙されまいとした。が、シグルはごまかすように額にキスをする。
マリアナはそれでも機嫌を直さない。本当に戻らないと侍女のジュライたちに心配をかけてしまう。焦る彼女をよそにシグルはなかなかマリアナを部屋に帰さなかったのだった。