21話
久しぶりの更新です。
マリアナは懸命に看病をした。侍女や女官に手助けをされながらだが。
一応、マリアナは自分の事は自分でやれる。侍女はカナンの他にはあまり側にいさせなかったのもそのためだった。が、王宮ではそうもいかない。
「マリアナ様。とりあえず、お部屋に案内いたします。少しはお休みください」
そう見かねて声をかけてきた侍女がいた。名はわからないが。
「…あの。あなたは?」
「あ。申し訳ありません。不躾にお名前を呼んでしまいました」
「それはかまわないわ。お名前を教えてもらえたら助かるわね」
ほのかに微笑みながら言うと侍女は頭を深々と下げた。
「本当に申し訳ありません。わたくしはお嬢様にお仕えすることがこのたび、決まりました名をジュライといいます。以後、お見知りおきを」
「ジュライというのね。私は改めて名を言うとマリアナ・ラインフェルデンよ。ラインフェルデン公爵家の次女にもなるわ」
「ご丁寧な自己紹介をありがとうございます。では、お嬢様。お部屋へ案内します」
マリアナと言わずにお嬢様と呼ぶジュライに肩を竦めながら後に続いたのだった。
ジュライは客室にマリアナを通すとそのまま、軽食を持ってくると退出していった。ドアが閉まり、マリアナはソファに沈みこんだ。
(あー、疲れた。眼鏡がないと見えにくいったらないわ。まあ、カナンがコンタクトレンズと言ったかしら。新製品の目に埋め込むガラスを試供品で渡してくれたから助かった)
マリアナ付きの侍女であったカナンはとある有名な商会の総取締役の長女だったりする。商会は遠い医学や科学の進んだ東方諸国とも交易をしているのだ。そちらでは眼鏡よりも便利の良い片眼鏡やコンタクトレンズなる物が新しく発明されたらしい。まだ、コンタクトレンズは試験段階らしくマリアナが使っているのはハードタイプだ。
そんな事を考えながら目がゴロゴロするので眉をしかめた。ハードタイプの付け心地はあまり良くなかったが。それでも、物がはっきりと見えるのは有難い。眼鏡をカナンに持ってきてもらおうと決めたのだった。
そうして、軽食をジュライが持ってきてくれたので昼食にすることにした。カナンがいないので一人で寂しく食事をとるのは味気なかった。
「ふう。シグル様が早く回復なさったら良いのに」
独り言を言ってしまう。部屋には誰もいない。一応、ジュライや他の侍女たちが毒味をしているはずだ。
それを思い出しながらも軽食のスコーンやサンドイッチに手を伸ばした。
スコーンにはベーコンとチーズが入れてあり甘みと塩っ気が効いていておいしい。サンドイッチもゆで卵をみじん切りにしてマヨネーズで和えたものやハムとレタスを一緒に挟んだものなどがあった。後、カップにコンソメ味のスープがありでマリアナは素直においしいなと思いながら口に運んだ。シグルも柔らかく煮込んだスープくらいだったら食べているだろうか。それを気にしながらもスコーンをまた食べた。
「お嬢様。皇太子殿下がお呼びです」
夕方になり、ジュライが呼びにきた。マリアナは頷いて立ち上がる。
ドアを開けてくれた騎士二人に礼を言ってシグルのもとへと急いだ。早足で向かうと侍女や女官などとすれ違う。皆、沈痛な面持ちで歩いていた。マリアナはそれを横目に見ながらシグルの事を思い浮かべたのだった。