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12話

シグルは父の大公に視線を送った。大公は頷く。マリアナは気づかない。それも仕方のない事であったが。

「…シグル。マリアナ嬢を連れて庭園に行きなさい。今は春だからな。チューリップなどが咲きごろだろう」

大公がそう命じるとシグルは頷き、マリアナの手を再び握った。二人は大公に見送られながら、庭園へと向かった。




シグルとマリアナは庭園に出てゆっくりと散策をしていた。シグルは父の大公から言われた事を思い出した。

『いいか、シグル。側妃を娶らずに正妃を娶れ。ちょうど、マリアナ嬢は公爵家令嬢だ。スルガや他の国の姫を正妃に据えても良いが。それだと、国内の貴族の重鎮達は納得しないし。反発も起こるだろう』

苦悩しながらも言った事柄は重みがある。マリアナを正妃に据えれば、国内の貴族の反大公派を黙らせる事もできるが。何より、父の大公は母や妹で叔母のリナリアを他国に人質に取られかけた事があるのだ。

母のメアリアン妃がスルガ国に人質に取られていれば、シグルや他の兄弟達は生まれていない。

まあ、スルガ国は叔母のリナリアを人質として寄越せと言ってくるばかりか誘拐未遂まで起こしている。

先代の大公はそれを受けて身代わりに公爵家や他の有力貴族達の令嬢方を差し出す事を決めたとも聞く。

それを反対し阻止したのが父の大公、サミュエルであった。父は代わりに祖父でもある先代にこう提案した。

『だったら、わたしの後宮にいる側妃達の中で能力の高い者を選んでスルガ国に送り込みましょう。ただ、シンフォード公爵のご息女など数名は例外といたします。側妃の中で罪を犯した者がいるようなので。その者に命を助けてやる代わりに間者として動くように言い含めます』

冷静に淡々と告げた父は氷のような皇太子だったと後に伯父のエドワードが言っていた。

マリアナや母のメアリアンは父の大公のそういった側面を知らない。シグルはスルガ国に行った側妃の黄薔薇の君ことレイラや白百合の君のアリシアのその後をこう聞いた。

二人はスルガ国で革命が起こった時に母国のヴェルナード公国に帰ろうとした。だが、公国が送り込んだ間者だとばれてしまい、反国王派の兵士に逃げている途中で見つかってしまう。追われていたのだ。

そして、当時の国王の弟、王弟の元まで引き連れられてそのまま、処断されたという。

そこまでを思い出してシグルはため息をついた。マリアナはそんな目に遭わせたくない。

母もである。密かに決心したシグルは空を見上げた。父と母から受け継いだ黒髪と紫から黒紫の公子ー人をこき使う方だと揶揄された事がある。黒紫と酷使をかけたのだが。

そういう風に言われても構わないから、国を母や妻達を守れる国主になりたいと彼は思ったのだった。

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