生徒(♀)のヤンデレ日記
お久しぶりですの方とはじめましての方に
唐突に思い浮かんだ内容ですのであまり期待しないでくださいね…
5月23日 晴れ
今日は新しい先生が来た。歳は三十路は越えてはなさそうだけど女子には人気がある容姿である。なんていうんだろ。今どき風の男の子がそのまま大人の落ち着きを得たみたいな?どうでも良いけれど女子の皆の甲高い声が耳に付く。
5月30日 晴れ時々曇り
あの先生の授業は分かりやすくて聞いていてとても楽しい。退屈をしない授業なんてこの学校では初めてだ。気になることがあっても群がる女子の塊に授業の質問さえ出来ない。まあいいか。どうしてもあの先生に答えて欲しいものでもないし。他の先生を見つけよう。ちらりと横目で眺めたあの人の瞳は私を見ていたような気がした。
6月2日 雨
相変わらずあの先生は女子にモテるようだ。梅雨の時期なのに傘を忘れたと言い張る女子を送るか、傘を貸すべきか悩んでいる。どうして知っているかなんて聞かないでね?だってあの人が勝手に独り言を喋ってただけだもの。『中途半端な優しさは残酷ですよ』……と、通りすがりに伝えれば私の名前を呼ばれた。
何故知っていたのだろう?
私はクラスでも目立たない一人の生徒なのに…
先生の呼びかけにも答えないまま帰宅を急ぐ。
6月15日 雨
青天の霹靂。どうやら私は人生初の告白をされたみたい。頬を染め、照れくさそうに笑うあの人が好いていたのは地味な私だった。
すごく嬉しかった。先生の事を好きだなんて思った事はなかったけど誰かに必要とされ好かれている、その事実が私を浮かれさせた。
その時はただ携帯の番号を教えるだけだったけども。いつか普通に話せるようになれるかな?
6月20日 曇り
皆に秘密の交際が始まった。学校では目線も合わせない、言葉も交わさない日々。だけどデートになればガラリと雰囲気は変わる。
先生の隣に立つのに恥ずかしくないようにと苦手な化粧を母に教わり、アースカラーばかりの衣服をダメだしされた従姉妹のコーディネートで身を固めた私を『可愛い…』と先生は言ってくれた。いけない。二人の時は名前を呼んで欲しいと言われたのだった。これから気をつけないと!
7月7日 晴れ
折角の七夕のデート。私は思い切って歳上の恋人に電話をしてみた。…可笑しい。コールは鳴るのに一向に出てくれない。お仕事が忙しいのかな?
7月9日 曇りのち晴れ
先生先生先生っ!どうして私を避けるの?!
アレがいけなかったの?先生が大切に思っている人と話したから?
先生って独占力が強い人なんですね。でも大丈夫。私は先生のモノなのだから。
7月13日 雨
もうそろそろ夏休み。夏休みの予定は先生の家に行くの。その日が楽しみで楽しみで。合鍵は貰ってないけどきっと一緒に帰ろうって事よね。二人で夕飯の食材を買って手を繋いで帰るのかな。あー楽しみ!
7月16日 曇り
今日はなんと先生の誕生日!お祝いしたかったのに先生は知り合いの人と前から予定してた飲み会に行っちゃった…
仕方ないよね。社会人には大人の付き合いがあるもの。だから一人でケーキを食べたけど変だなぁ。フォークは欠けるしお皿は割れちゃった…
不良品かなぁ?ケーキもぐちゃぐちゃだし、まとめて捨てちゃおう。
7月21日 晴れ
いつにも増して先生の機嫌が良いみたい。それとなく探ったら飲み会した知り合いの人に欲しかったモノをプレゼントされたみたい。こういう時って大人はずるいな。私が用意したのは手作りのケーキだけだったし、早く私も大人になりたい……
7月29日 晴れ
先生のマンションに行ったら女の人が出てきた。きっとお姉さんだろうと思いながらとっさに物陰に隠れた私の目に映る光景。それはセミロングの綺麗な女性に口付ける先生。
変だよ先生…
だって私にはキスなんてしてくれなかったのに。手も繋いでくれなかったのに!
どうして……?
先生には私がいるでしょう?
甘い雰囲気を醸し出す二人を視界の隅に入れながら齧った親指から血が流れる…
7月30日 雨
女の嫉妬って怖いものね。元は生存本能から来るみたい。そんな私も女だもの。愛しい人を取られないように行動しなきゃ。
力を込めて押した背中は華奢だった。
悲鳴をあげる暇もなかった彼女のうなじに見える紅い華にさえどす黒い感情が渦巻く。
もう彼女は息をしてないのに。
死人にさえ嫉妬してはこれから先、私は苦労するだろう。
だって先生はとても魅力的で素敵な人だもの。
離してあげないんだから……
8月1日 雨
先生を見た。喪服をまとい雨に濡れた先生。きっと雨だけではない水に濡れた表情は泥棒猫が死んだからなのかな?たぶん仲は良かったのだろう。でも恋人の私ほどじゃないよね?
これで先生を私だけのモノに出来たかな…
8月8日 晴れ
先生が私に会いに来てくれた!怖い顔してるけどどうしたの?
胸倉を掴まれ壁に荒々しく叩きつけられても私は先生を嫌いになったりはしないわ。大声で脅されてもよ?
今更気付いたのね
私があの人の背中を押した事を……
8月9日 晴れ
先生に呼び出されたまま向かったのは学校の屋上。何をするのかわからないけど先生が初めて電話をくれたから行かない理由なんてなかった。
いつかこうなるってわかっていたの……
うだるような熱気のもと、振るわれる鈍器には真新しい赤が付着している。それは私が流した赤……
当然の報い。頭では理解していても感情は別だった。
ぐちゃぐちゃな顔で狂ったように私を殴る先生をまだ好きな私は可笑しいのかな?
先生から恋人を奪って、理性さえ奪ったのはただの小娘である私。
なんて愉快なんだろう。
あぁ、先生好きです…
血濡れの想いはお気に召さなかったようですね。貴方が壊れてしまったのが私の影響なんてとても嬉しいの。
薄れゆく意識のなか小さく呟く。
「私から逃げれば良かったのに……」