2 成人の日
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私は夫との間に、二男二女をもうけた。今年は長男が二十になる。夫に似た、理知的な美しい容姿。だが、とても優しい子に育ってくれた。とても私の遺伝子を半分受け継いでいるとは、思えない。自慢の息子だ。どうやら周りからも、夫が若かりし頃と同じく、沢山の人に囲まれているようで、彼はとても輝いていた。人生の中で、最も生き生きしている時期だと思う。私はこれから出かける、という息子を目を細めて見つめた。
「母上・・・。本当にいらっしゃらないのですか?誰でも参加できるのですから、遠慮されなくてもいいのですよ。」
今日は某邸宅にて、新成人やそれを祝う者が集まり、パーティーが開かれる。規模も大きく、老若男女集まるパーティーなのだ。だが、私は集会やパーティーが苦手だし、もともと身分が低いため、夫や息子の邪魔になりたくなかった。実は、このような集会では、お見合いのような意味合いも持つ。今回は夫や息子、娘、夫の実家の者、友人が沢山出席するので、夫も私が不参加を伝えると、許可してくれた。因みに、私の両親はすでに他界、兄弟もいず、友人も昔馴染みが数人程度。私が出席してもつまらないものだろう、といってあっさり了承したのだ。
私は息子に微笑み、言った。
「いいのよ。気にせず、楽しんでらっしゃい。私はああいう場は苦手だし、まだ、体の調子も戻らないから。」
私は年末から、風邪をこじらせて寝込んでいて、最近やっと家事をするまでに、体力がもどったのだ。年はとりたくないものである。年々体力の衰えを感じていた。
息子は目を伏せ言葉を発しようとする。すると、夫が息子を呼ぶ声が聞こえ、弟妹たちも部屋にやってきた。
「ウィルフレッド、ここにいたのか。」
「兄さん、馬車がきましたよ。行きましょう。」
「お兄様、早く行きましょ。」
息子は苦笑いし、答えた。
「わかりました。母上、それでは行ってまいります。なにかあったら、すぐ連絡してください。なるべく早く帰ります。」
息子は心配性だ。彼の小さい頃いろいろあったせいかもしれないが、ずっと私を気づかってくれていた。しかし、今は立派に仕事もし、自立している。もう、彼を縛りたくない。様々な出会いをし、素敵な恋愛を経て結婚し、幸せになってほしい。
息子が、夫たちと部屋を出ていこうとする。しかし、ドアを閉める直前に私の方を振り替えった。
「・・・母上。ここまで育て上げてくださって、感謝しています。母上は、誰がなんと言おうが、私の自慢の母上なのですから。父上も、私や、私を育てた母上を、愛しています。自信を持ってください。」
と一礼し、出ていった。
私は驚いて、息子の閉めたドアを見つめた。感無量とは、この事を言うのだろう。つらいこともあったけど、息子を産んでよかった、そう私はしみじみと思った。
息子よ、成人の日おめでとう。