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世界救出旅行記  作者: なんか てる
――ある紳士はかく語る――
3/4

昔語り

差し込む朝日の眩しさと白が動く気配で目が覚める。



「おはよう、白」


「……おはよう」



寝ぼけているのか目をしばしばとさせている。

白を着替えさせて顔を洗ってやる。

時間が経つに連れて人間らしくなっていく、少し変化が早すぎて怖い気もするが。

軽く朝食をとった後はいつも通り街へと向かう。



「準備はできたかい? 街へ行こうか」



外套を羽織り帽子とステッキを手に取る。

まだ寝ぼけまなこな白の手を引き街へと向かう。

周りをきょろきょろと見回している、注意するべきか成長に喜ぶべきか。








相変わらず門番の彼は元気がとりえのようだ。

大通りへと抜けて裏路地に入る。



「いらっしゃい、白ちゃん」



マスターの奥さんが笑顔で飛び出してくる。

そんなに楽しみだったのだろうか。



「白のことを頼めるかな? 」


「もちろんよ! いきましょう! 」


「……うん」


「しゃべった!? 」



さすがにそれは驚きすぎだぞ。

驚きつつも奥さんはしきりに白へと話しかけている。

白も白でびくびくしながらもわかることには返事を返している、このぶんなら任せても問題ないだろう。



「言っておいで白、私はここで待っているから」


「え……うん」



少し驚いた後返事をして奥さんの後についていった。

カランカランと音を鳴らしてドアが締まっていく。



「驚きすぎて声も出ないですよ、エイルズさん」



その割には声が出ているではないかマスター。



「白、もう話せるようになったんですね」


「昨日少し本を読み聞かせてあげたのでな」


「それだけで!? 」


「若いものは物覚えが良くて羨ましいよ」


「もうそんなレベルの話じゃない気がするんですけど」



コップを拭きながらマスターは呆れた顔をしている。

注文をしなくても用意してくれるようになったのは、もうだいぶ昔の話だ。



「それも気になってたんですけど、メアリーと二人で大丈夫なのかも心配ですね」


「マスターの奥さんだろうに」


「そうですけど、あんなに浮かれてるのを見るのは久しぶりですからね、なにが起こるかわかりませんよ」



旦那がそれでどうする、思わず声にしそうになったが飲み込む。

そういったマスターの顔は別に心配などしていなかった。



「はい、ホットでよかったですよね? 」


「相変わらずの手際、見事だね」


「仕事ですから」



顔がにやけているぞマスター、クールに決めたつもりだろうに。

相変わらず良い香りだ。

マスターが打って変わったように影を落としながら口を開く。



「こう言ってはなんですが……」



そう言ってマスターはもっとも言いたかったことを口にする



「どう考えても白の成長速度はいじょ、いえなんでもないです」



そこで言うのをやめる。

マスターもそうだが私も何度も思ったこと、白は誰が見るでもなく異常だとわかる。

けれど別に気にしない、ちょっとくらい変わってる人などいくらでもいるのだと、そう思うようにしている。

いや私は、何度もこの思考にはまっている、マスターも同じなのか。

白を害するつもりはないが、人はただ異なるものを忌避する。

白が何者であれ私たちはただ安心したいだけなのである。

ぐったりとした白が、この後奥さんに引きずられるようにして帰ってくるまで、答えのない思考の渦に捕まるのであった。






心なしかぐったりしている白を連れて帰ってきた奥さんは、何か焦っているようだった。



「ちょっと! エイルズさん、何ですかこのカード! 」



なるほど、だいたい理解した。

白がぐったりしてる理由はおそらく、奥さんに質問攻めにされた結果なのだろう。

もしかしたら着せ替え人形にもなっていたかもしれない。



「黒! 黒のカードなんて初めて見ましたよ私!! 」


「黒がどうしたんだいメアリー」


「黒よ、黒のカード!! 」



何故か敬語になっている奥さん。

私を見つけた白が必死になって駆け寄ってくる。

軽くトラウマになっていないか?

それ程に奥さんが楽しんでいたのだろうか。



「黒のカードよ!? 王国から認められたギルド員がもらえるっていうあの黒なのよ!! これが驚かずに要られますか! かつての魔王、現トップランカー、ギルドマスターの3人しか持ってないのよ!! 」



何か因縁でもあるのか?

えらく熱がこもっている上にそれは、あまり知られていない事実なのだが。

我関せずを決め込み黙々とコーヒーに口をつけていた私にとうとう矛先が向く。



「それでどういうことなんですか!? エイルズさん、教えてください!! 」


「落ち着きたまえ」


「すいません、でもですね! 黒ですよ! 魔法使いなら一度は憧れる魔王の黒ですよ!! 」



そういう理由で興奮していたわけか。

それならば尚の事話しづらくなってしまったが……



「そうか、夢がかなってよかったではないか」


「エ、イ、ル、ズ、さん」



満面の笑みを浮かべているが、目が笑ってないぞ。









少し場が落ち着いたあたりで口を開く。

奥さんのアプローチが激しく止む終えずといった感じではあるけれど。

白を隣の席に座らせてやり、話しだす。

迂闊だったか、お金を渡すよりこちらのほうが白にとっては安全だろうと思ってしたことだったが、裏目に出てしまったようだ。



「あまり話したくはないのだがね、マスターと奥さんにはお世話になっていることだし、少しだけ昔話をしよう」



相も変わらずここは私以外の客はいないようだ、聞かれる心配もあるまい。

白にはミルクを注文する。



「今でこそ国は一つとなり魔物も少なくなり、この世界は割と平和だが、60年前のある出来事の前はそうでもなかったのだよ」


「60年前といえば魔王を倒して魔王の称号をもらった英雄のお伽話で有名ですよね? 」


「どこにでもある魔王を倒す英雄の話だ、ただ英雄が剣士ではなく魔法使いであったことを除けば、今では子供でも知っているお伽話だ」


「魔法使い? 魔王って魔法使いなんですか!? 」


「それも今から話すとしよう……」



そう、かつて愚かな少年が魔王を打ち倒し魔王という称号を手に入れるに至る物語。

少し長い昔話を始めるとしよう。



「かつて世界は43からなる集落によって成り立っていた――



今では誰もが知っている英雄物語の真実を語るとしよう。



「今からおよそ60年程前の話になる、かつて世界は一つではなかった。


50年ほど続いている世界規模での戦争によって大地は荒れ、緑が失われていた。


人々は争い奪い、時に協力し集落を吸収していき強大な組織となっていった。


はじめは2つの国に落ち着いた集落群も我先にと新しい国を立ち上げ新たな戦いを呼び込んだ。


欲深い人間を頂点に増えては争い、減っては分裂を繰り返す、終りの無い悪循環。


その中には戦いを忌避するものもいたが、始まった時代の流れは変えることなどできない。


毎日のように血が流れ、勝者の前に敗者が傅いていった。


世界平和のためなどという理由によって行われる戦争はひどいものだった。


数の暴力、賄賂、買収、敗者を奴隷へと落とし、時には国に火を放ち全てを焼き尽くすこともあった。


かつてより続く長い長い闘争の時代は数多くの国を産み数多くの国を破壊していった。


歴史の分岐点となることになる60年程前のその日、ある国の大通りに一匹の、どす黒い魔力をまとった物体が突如として現れた。


人々はそれに、魔法によって構成される得体のしれない物体『魔の物』という名前をつけた、これが今の世界へと至る最初の分岐点となる」



一呼吸置くために冷めてぬるくなってしまったコーヒーに口をつける。

あまりにもマスターたちが真剣に聞いてくれているため、喫茶店の空気が止まっているような感覚を覚える。

コホンと咳払いを一つし、続きを口にする。



「魔の物と呼ばれる存在は発生する時期は違えど、世界の各地に次々と現れいづる。


それは次第に猛威をふるい出す。


得体のしれない存在に恐怖した人々が我先にと剣を槍を魔法を、考えうる限りの戦力をぶつけた。


けれども、それはまるで火の粉を振り払うかのごとくその歩みを止めることなく、むしろ人に襲いかかったのだ。


大の大人がまるで赤子をひねるかのごとく次々と殺されていく様は人々に危機を抱かせた。


数多く存在した国はその中でも巨大だった一つの国を中心とし連合王国を築く。


皮肉にも人々の戦いを止めたのは自分たちが殺されるかもしれないという、ただの恐怖だった。


けれどそんな理由でも、長く続いた戦いに終止符をうち人々を結束させるには足るだけの理由となった。


人々が長く続いた戦いに疲弊していたことも大きく関係していたのだろう。


標的のすり替えとも取れるが、それでも人々に争いの愚かさを再認識させるだけの時間にはなった。


協力し戦う人の前に魔の物たちは為す術もなく次々と倒されていく、皮肉にも50年もかけて人々は自分達で争うことの愚かさを学んだのだった。


順調に進む戦いにも綻びが出始める、季節が一巡りしたあたりから魔の物たちの動きが変わりだしたのだ。


そう、それはまるで指揮官に操られる部隊のように、何らかの目的を持ち進撃する軍隊のように。


人々の間にある目撃談が噂されるようになる。


噂とは『言葉を操る魔の物を見た』といったものである。


そんな馬鹿なと、人々は切り捨てるも賢くなっていく魔の物を見るうちにその意見は変わっていく。


そうして誰が言ったのか、世界を震撼させる一つの噂が流れる。


『魔の物の王が生まれた』


どこからその情報が流れてきたのかは誰にも分からない。


もしかしたら魔の物が情報を操作していたのかも知れない。


その噂が流れるようになって以来、魔王がいると思われる箇所において明らかに規模の違う戦略級魔方陣の展開が観測されるようになった。


その魔法は嫌でもその噂を信じるしかないほどの破壊をもたらした。


ひとつの魔方陣から繰り出される雷は街を消し飛ばし、地面に描かれる魔方陣から吹き荒れる業火は国を焼き払った。


やっとのことで平和へと向かおうとしていた人々の希望をすべて壊し、恐怖のどん底に突き落とすには十分すぎるほどの衝撃だった」



少し休憩しようとする私を奥さんの咎めるような目が捉える。

その目は「おい、さっさと続きをいいなさい」と言っている。

まったく、年寄りはもう少しいたわるものだというのに。



「より強くなっていく魔の物たちの襲撃に連合王国ですら対処できなくなった時に、一人の少年が立ち上がる。


その少年が腕を振れば城壁にまとわりつく魔の者たちは瞬く間に魔法に焼かれ消滅していった。


滅びへと向かう人々にはその少年が童話に出てくる勇者のように見えたという。


人々は次々に少年を褒め称えた。


曰く魔王を倒す勇者だと。


曰く世界の救世主だと。


曰く王国の危機を救う英雄だと。


なんとも独りよがりな考えだが、絶望と希望の狭間で揺れる人々は彼に頼るしかなかった。


それは狂気にも似た盲信だった。


英雄だと呼ぶ傍ら、彼らはまるでつき出すがごとく彼に戦いを強いた。


少年もまたどこか普通ではなかったことが災いしたのだろう。


当時12になったばかりの少年には世界を脅かす魔の物の存在など眼中になかった。


時間があれば本を読んでいたその少年には人並みの体力などなかったが、少年には本を読む傍ら鍛え続けた魔力があった。


当時の同世代の子供にしては変人に分類されるであろうことを延々と続けていたのだ。


人がどう思えどただ少年は本が、文章を読むことが好きだったのだ。


故に人並み外れたその魔力と知識が解放される機会はなかった、だから誰の目にもつかなかった。


戦いにおいては国の力自慢が次々とかり出されていったが、兵役を帯びていない12の青年が目につくことはなかった。


あえてもう一度言うが、少年にとっては本こそが全てだった。


だから少年が魔の物すら退けられない大人に呆れ、本を守るため、その著者を守るため国を守ったのは必然だった。


そこに正義も偽善も何もなかった。


少年はただ己のためだけに魔の物を消し去ったのだ。


だが周囲は少年の事情など考えない、ただ愚直に英雄だとおだて上げるだけだった。


挙句の果てに、家にこもってでてこないのはこの日のためだったなどと、そんな馬鹿げたことを言うものすら出てくる始末だった。


それほど人々が切羽詰まっていたということでもあるのだろうが。


少年を筆頭とした連合王国は瞬く間に魔の物を退けていった、実際は少年しか戦っていないが、国では王国の連戦連勝だと告げられた。


少年もまた未熟だったのだろう、気づいたときには引き返せないところに持ちあげられていた。


王国は少年を最大限支援し、表では魔王を倒す勇者として、裏では使い勝手のいい手駒とした。


会う人会う人が少年に希望を口にし、ある者は手を合わせ、またある者は少年に自慢の武器を手渡した。


彼らに悪意はなく、ただ少年に期待していただけなのだ、自分よりそれこそ少しの努力では追いつけないものに希望を託して何が悪い、そう彼らは信じているのだ。


表では優しい言葉で戦場に向かへと言われ裏では国の走狗となり魔の物を倒す。


少年もまた不器用だったのだ、ただただ疲弊していった、だから少年はすぐにでも魔王を倒す必要があった。


少年は焦っていた、倒せば終わりだと、そう信じてやまなかった。


ちょうどいい具合に向こうも同じ考えだったのだろう、次々と減る味方に動揺した彼らは全戦力をぶつけてきた。


魔の森と呼ばれた住処より出ずる、魔王を筆頭に地平線にずらっと並ぶ魔の物の軍勢は壮観であった。


対するこちらは城壁を囲むように部隊を配置、少年はその前に一人ぽつんと立っていた。


先に動いたのは魔の物の軍勢だった。


地響きを連れて一斉に動き出すその様はまさに天災だった。


それからの出来事は人々の脳裏によく焼き付いていることだろう。


少年はその軍勢に向かってかけ出したのだ、唯一人。


魔の物の群れに少年が飲み込まれ、姿が見えなくなったところから一歩的な虐殺が始まった。


いや、そもそも虐殺と呼ぶのもおこがましい、まさに瞬殺だった。


少年がいると思われる所を中心として魔方陣が展開されていた、それはほうとうに魔方陣と呼ぶのだろうか。


その瞬間世界が紅に染まった、少年が展開した魔方陣は地平線の先へと続いていた、終りを見たものはいないという、もしかしたら世界すべてを包んでいたのかもしれない。


その模様に触れた魔の物は次々と、いや瞬き一つした頃には魔王と呼ばれた物を残して全て消滅していた。


理解の範疇を超えるとはこの事か、人々は空いた口が塞がらなかった。


国を次々と吹き飛ばした魔王ですら戦いを放棄していた、そして語りだしたのだ、己の正体を。


はじめは意識を持たないただの魔力だったという。


長い争いにより無残に朽ちていったものの無念、恨み、後悔、それらを乗せた魔力の残滓はやがて集まり形を成した。


それが私たちなのだと、それをあっけなく消し飛ばすお前もまた化物だなと笑っていた。


愚かしいことだな、己達の行って来たことで己の身を滅ぼす、非肉にもならないと嘲笑っていた。


終わりはあっけないものだった、全てを言い終えた人の姿をしたそれは自ら霧散した。


少年は見聞きしたことを伝え日常へと戻ろうと国へ向かったが、そこに待っていたものはなんとも残酷な人間の本性だった。


あたりは静まり返っていた、人々は誰も少年に目を向けなかった。


人々は口々にこういったのだ、君こそが魔法使いの王『魔王』だと。


褒め称える声とは裏腹にそれは単なる皮肉だった、彼らにとって少年は魔王すら倒しうる魔王なのだと、言外にそう言っているのだった。


人々にとって魔王がいなくなった今となっては少年が最後に使った世界を覆い尽くす魔法こそが恐怖の対象だった。


王国は少年の功績を称え、少年に正式に魔王の称号と莫大な資産、そして魔の森全域の所有権を譲った。


極め付きに異例として、国を救った英雄を育てた両親を国の認める貴族とし、王城の側に豪邸を建てさせた。


少年が使う強力な力を封じるために国は人質をとったのだ。


国を救った少年を待っていたのは莫大な金と未開拓の広大な森だった」



乾いた喉を潤す、コーヒーはすでに冷めてしまっている。



「え……あれ? ちょっと待って、それじゃあエイルズさんって……」



搾り出すように言う奥さん。

私に否定して欲しいのだろうか。



「愚かな少年の末路だ」



今では笑い話にできる苦い思い出だ。

私も当時は若かったのだ。

さすがに、真っ青な顔をした二人をみると申し訳なくなってくる。



「魔王が魔王で、森が莫大な金で、だからカードが黒で」


「黒って金持ちの証じゃなかったんですね、いつも黒ってすごいなーと思ってましたけど実はそんな裏話があったんですね」



落ち着け奥さん、そしてマスター、君は相変わらずだな。



「金持ちが黒を使うというのは意図的に流された噂なのだよ、せっかくだしもうひとつ面白いお話をしよう。


有名な話として名前を持たない存在がいる、それを人々は精霊と呼んできたのだが、マスターは知らないのだったね。


何故それが物語の中だけで語られるのかというとかつては本当に存在していたのだよ。


人々が争い出す110年前まで人は、小さな集落で精霊達とのんびり暮らしていたというわけだ」



だから白の存在はとても凄いことなのだと付け足しておく。

奥さんがやっと落ち着いたのか話しかけてくる。



「エイルズさんっていくつですか? 」


「今年で72だよ」


「てっきり50くらいだと」



マスターがそう言う、奥さんは追撃を食らって意気消沈といった感じだ。



「苦い昔話だ忘れてくれ、今まで通りに接してくれたほうが私も助かる」


「そ、そうですね、ごめんなさい」


「かまわないさ、湿っぽい空気にしてしまったね」


「いえ」



マスターは相変わらずだとして、奥さんも割り切ったのかもとの表情に戻っている。

その後はたわいもない会話をして少し時間をつぶす。

奥さんは少しした後もう一度白を連れて買い物に出かけていった。

白が少し嫌そうな表情をしていたのは言うまでもない。






秘密を共有し合ったなかというものだろうか?

それからの日々は少し騒々しいものとなった。

私たちは毎日のように喫茶店に通い、普段は裏にいる奥さんも度々顔を見せるようになった。

奥さんが私に魔法を教わりたいと言い出したり、少しづつ成長していく白を奥さんが話攻めにしたりと、とても充実した平和な日々を過ごした。

白の成長速度に関しては敢えて言うまでもなく異常だった。

週が巡ればわがままを言うようになり、また週が巡れば我慢を覚え、また週が巡れば一人で考えるようになり、一月程たった頃には見た目相応の、10歳前後の少女と遜色ない態度をとるようになった。

表情は未だに硬いがそれでも白の成長は異常だった。

そうして何気ない日々がいつまでも続くと思っていた。

いつものように喫茶店へと向かい白は奥さんと、私はマスターと話しているときにそれは起こった。

その時のことはよく覚えている、長い長い旅の始まりとなる出来事だった。



「どうした白? 」



異変に気づいたのは白と話していた奥さんではなく私だった。

何かは分からないが白からとてつもない力が溢れている。



「うぅ……」


「白!? きゃっ! 」



苦しそうにうずくまる白に近づいた奥さんがとっさに手を引いた。

そして世界は白に包まれた。

咄嗟に3人に声をかけるも返事はない、姿が見えない。

いや、この場合私だけがここに囚われたのか?



「ご名答」



そう答え何もない空間から現れたのは他でもない、あどけない少女の顔に深い笑みを携えた白だった。

全然思ったように世界を書けないというジレンマ。

少し展開が急だったやもしれない。

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