重なる、影
「ごめん、とってー」
ころころ。 足下に転がってきた、白いボール。
あのこ、誰だっけ。
ツンツンした変な髪。
1年前に引っ越してきた男の子。
「ねー、なにやってるの?」
「バレー。すっごく楽しいよ。やってみない?」
え?今?
「違う違う。ボールはさ、こうやってぽーん、って相手に返す感じ」
あーもう。
ボール、当たると痛いし。
全然真っすぐ飛んでいかないし。
そんで、あっちの子。
なんか横向いて。
ちらっとこっちを見て、またふいって向こうを向く。
私がいると、邪魔なのかな?
「あっ」
ボールが川へ転がる。
男の子、ダーッて走ってく。
小さい方の子は動かない。
ちらっとこっちを見て。
「無理しなくて、いいよ」
「じゃさ、続きやろ」
戻ってきた。息を弾ませて。
「ごめん。ありがと。
でも今日はもう行かなきゃ」
「そっかー。じゃあまたね」
向こうで小さい子が、ちょっと笑った。
いいなー。
ホントはさ、もうちょっと、やりたかった。
4年生。
あ。 またやってる。
小さい子が上げるボールを、大きい子が打とうとして。
でも全然当たらない。
それでも、何回も。ずっと。
5年生。
自転車で通りかかる。
いつも通り。
全然当たらないな。
…あれ?
なんか。かすった、かも。
自転車を降りて、観る。
うーん、錯覚?
6年生。
塾の帰り道
もう、暗いのに。 あの子ら、凄いな。
あ、あたった。 でも落ちる。
飛ばない。
小さい子、座る。
膝の間にボール挟んで、顎を載せる。
大きい子。腕を振り回して叫んでる。
ふふ。仲良し。いいな。
中学生になって。 通学路が変わった。
それっきり、見てない。
「ん、これでよし、と」
横断幕、掲げ終わった。
うん。いい。
そのまま、コートを見下ろす。
ウチのユニフォームは、青みがかった緑に黄色い切り返し。
対する、あっちは。
真っ赤な上下に、黒いライン。
あ、 あの黒髪のっぽが主将なんだ。 ツンツン、変な頭。 寝癖そのまんま、みたい。
その後、猫背でのそのそついていく金髪。
小さいなあ。あれでレギュラー?
練習が始まる。
バレーのボール、前は真っ白だったんだよね。
今日のボールはミカサ。青と黄色、結構好き。
コート脇。スコアを付ける準備。相手の選手も頭に入れる。
あ、あの金髪、セッターなんだ。
長い前髪の奥で、じっとみんなの動きを見てる感じ。ちょっと怖い。
試合開始。
こっちのサーブ。
レシーブ、セッターの真上。
軽くジャンプする金髪。
速攻。決まる。
「今のは仕方ない。次。ディグ、正確にね」
声をかける。
「おう」
リベロが答える。
ぱあん。
いい。 チャンス。いけっ!
うわ、ブロック高っ!
しかも2枚?
「ちっ」
フェイント。読まれる。
ボール、高くセッターの上。
「ブロック!早く!」叫ぶ。
セッター、飛ぶ。
速攻くる!
… えっ?
何、あれ。
しゃがんで、飛ばない。
うそ。
河原の光景。
合わない、スパイク。
ううん。
「バーン」
一拍遅れて飛んだ、ツンツン頭。
スパイクが、落ちた。
ボールが、合ってる。
重なる、影。
あなたたち、だったんだ。




