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歓声が一拍遅れる日


こんな音、したっけ。


体育館の音が好きで、こういう試合には時々付き合いで来るけど、

今日は、少し違う気がした。


最初にそう思ったのは、ホイッスルが鳴って、ほんの少ししてからだった。

キュッ、というシューズの音。

パァン、と乾いたボールの音。

それから――わあっ、と上がる歓声。

いつも通りのはずなのに、どこか変だ。

音が、ほんの一拍だけ、遅れてくる。

「……ねえ、なんか今日、音変じゃない?」

隣に座ってる友達にそう言うと、「え?」って顔をされて、それで終わり。

たぶん、私の気のせいなんだと思う。

でも。


パァン。


まただ。

ボールが打たれた音がして、それから少し遅れて、どよめきが広がる。

今の、決まったの?

コートを見る。

白いネットを挟んで、選手たちはもう次の位置に動いている。

さっきのプレーがなんだったのか、置いてけぼりだけど。

「……早くない?」

漏れた声は、今度は誰にも届かなかった。

キュッ、と床を止まる音だけが、やけに鮮明に耳に残る。



パンッ。

白いユニフォームの子が、相手のサーブをきれいに上げる。

「ひろくーん!」

友達の声に重なるように、ドンッと床を蹴る音。次の瞬間、もう誰かが打っている。

ボールがどこに行ったのか、目が追いつかない。

オレンジの子が飛び込んで、ドッと倒れる音。

たたっ、と足音が続いて、

キュィイッ――

強く、鳥の悲鳴みたいな音が鳴った、とたんに、

ぱあん、とボールが跳ねた。

一瞬遅れて、ピィィー、と笛。

「え……アウト、だったの?」

友達の声が、少しだけ遅れて届く。

歓声とどよめきが、あとから波みたいに広がる。


わかんない。

ボール、どこに落ちたの?



サーブが向こうへ伸びる。

「入ってる!」の声。

慌てたレシーブが、横へずれる。低い。外れる――と思ったのに。

ネットの向こう、視界の端。黒いユニフォームが、動く。

背中に、9。

近い。

踏み込む。しゃがむ。

後ろ向きのまま、長いトスを――

えっ?


ドンッ


音が、した。


パァン


ボールが、跳ねた。


とん、とん、ととん

跳ねながら、コートの後ろ、人の影の方へ転がっていく。


誰も、手を、出さない。

シン、という音が頭の中に響いた一拍後、

ウワァー、と声が、下から上に突き抜けていく。


私は、今日。

すごいものを見逃したらしい。




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