魔法を知りたい教師と魔術を知りたい生徒
授業も終え、今日は誰一人僕の部屋に訪ねることもなく、ゆったりと魔法について実験することができた。
「まずは、何から手をつけようかなぁ」
この感覚、久しぶりだ。魔術を始めた頃、魔術に魅了された頃の感覚に近い。何から始めようか。何の続きをしてみようか。この感覚は最も重要で、これなしでは何も起きない。
「まずは魔力の不純性の研究からかなぁ…」
魔力の不純性、今となっては研究している人もいないみたいだけど、昔はかなりホットな研究だった。魔力と重魔力の違いは何かと研究をしていたとある研究者がそれに気づいた。魔力より重魔力の方が揺らぎが少ないんだとか。だが、なぜ魔力には揺らぎがあるのかは誰も調べられなかった。これが分かれば僕が魔法を使うのに一歩近づけるはず。この話題が熱かった頃の僕は魔術の研究で手一杯だったからなかなかそういう研究に手を入れられなかった。
「不純性…本当に不純だから揺らぐのかな…」
まずはそこだ。今までの研究者たちは魔力にはいろんな要素が混ざっているせいで結合できずに揺らぐ。重魔力は魔術器官によって純化され、揺らぎがなくなる。こう考えられていた。
「もし不純ではなく、そもそもの魔力が固定の形を持たないなら…あ、なるほど…」
魔力の不純性…これは違う。これは魔術の純性が理由で揺らいでいたんだ。でもまだこれは仮定…やはりこれの答えを見つけるためには…
「魔法が使える助手がいるなぁ…」
僕がそんなことを思っていると部屋の扉がコンコンとノックされた。
「はーい。誰ですか?」
「あ、初めまして。一年生の酒井悠です…」
僕は悠さんを見たことがあった。それは…
「君、朝の騒動の中心人物だった子じゃなかったっけ?」
「あ、そうです」
そう、今日起きた自由党と実力党の喧嘩騒動。それを引き起こした黒幕とも言える人物。それが彼女、悠さんだ。
「で、なんのようかな?」
「えっと…朝のあれってなんだったんですか?」
「ん?あー…あれね」
朝、僕がやったことは一つしかない…
「〈拒絶〉、これのことかな?」
「はい、それです!魔法じゃないですよね?雪先生が魔法を使えないということは知ってますから」
「そうだね。これは魔術だよ」
「魔術!?」
この反応をされるたびに魔術の衰退を感じざる終えない…個人的には悲しいことだ。
「あの!私に魔術を教えてもらえないでしょうか!」
「へ?」
意外な一言だった。この子からはかなりの魔力を感じる。きっと魔法も簡単に放てるだろう。それほどの才能だありながら、何故魔術に?
「魔法の才能があるだろう。君はそっちを鍛えたくはないのかい?」
「いえ、私の目標は最強の魔法使いです。魔術師ではありません」
「なら尚更…」
「でも!今の私では雪先生の魔術…〈拒絶〉でしたか?それを破ることができません。私が思う最強の魔法使いは魔術師にも陰陽師にも剣士にも…どんなやつにでも勝てる人です。でも今の私はそうじゃない。だから私より強い人に教わりたいんです」
「…なるほどね。でも魔法と魔術は結構違うよ?」
「でも雪先生は魔術師なのに魔法を学んでいますよね。なら私を止める権利はないはずです」
「うっ…それを言われちゃうとなぁ〜」
その通りではある。魔法術という存在を知っているから言い切れる。確実に強くなる。
「じゃあ、こうしようか。魔術の初歩中の初歩、〈浮遊〉を成功させたら教えてあげるよ。魔術師は魔法使いより才能が最初は重要でね。才能がなければ使うことすらできないんだよ」
「わかりました。意地でも成功させます」
「期間は2週間、1センチ以上浮いてたら成功。ただし魔法で浮くのはダメだよ」
「はい。では今からやってきます!」
すごい勢いで部屋を出ていった。教えてあげたいのはやまやまだけど、魔法より魔術の方が発動させる才能が必要だ。初歩の〈浮遊〉程度も発動できなければ、そもそも魔術を教えることはできない。
「…もしクリアできたら助手をやらせてもいいなぁ…」




