魔術と魔法
「魔術の衰退?」
「そうなのです。ここ数十年で衰退が加速しまして、今では魔法が主流、魔術では魔物一体すら倒せないといったような形でして…もちろん一部の貴族や王族は本来の魔術を知っていますが、何者かによって文献などが消し去られ、魔術師も有名なものたちは行方不明になり、魔術は停滞衰退しています。」
「なるほどね…だからあの子は…」
合点がいった。あの子、葉奈ちゃんは僕の魔術を見て心底驚いたような顔をしていた。でもあの程度の魔術なら魔術全盛期の頃にはみんなよく使っていた。全盛期から下がったとしても知らないのは不思議だと思っていたけど、誰かが裏で糸を引いていたのなら納得だ。
「あの、雪様」
「何かな?颯太くん」
再び2人からの圧が強くなるが、無視して話を続ける。
「魔術と魔法とは何が違うのでしょうか?」
「全くの別物だよ。そもそも根幹として魔術の方が先にあったんだ。でも魔術を使えないものも存在した。その魔術を使えないものたちのために人間によって開発されたのが魔法なんだよ。だから基盤は魔術、それを真似て作ったのが魔法だね。ただ魔法が魔術に劣っていたのは最初の頃だけで、時が経つにつれて魔法界に生まれた天才たちが劇的なスピードで魔法を魔術と同じ次元にまで押し上げたんだよ。だから魔法と魔術は同列の存在として昔は扱われていたんだ。」
「なるほど…でも魔術の方が先にあったと言うだけで、魔法と魔術は別物とは言えないのでは?」
「そうだね。さっきの話だけだとそう思えるかも知れない。でも魔術と魔法の違いはもっとあるんだ。その中でも重要なのが変換だよ」
「変換?」
「そう、魔法は魔力を術式に通して魔法を放つ。対して魔術は魔力を一度魔力器官と言われる部分に流し込み、魔術を使うための魔力に変換させる。それを魔術界では魔重力と言われている。その魔重力を使って魔術を発動させるんだ。ここで重要なのは魔術には術式が必須ではないことだ。魔法は必須なんだけどね」
「え、でも無詠唱者とかもいますよ?」
「それは音でしょ?術式は音じゃなく行為、まあ音も入るけど、音じゃなくてもいい。指を鳴らすでも、魔法陣でもなんでもいいんだ。詠唱は魔法を安定させるのが声に出すことだから唱えているだけだよ。」
「そうだったんですか!じゃあ魔術は術式がいらないと言うことは詠唱もいらないと言うことですか?」
「詠唱をする魔術師ももちろんいるよ。でもそれは術式としての効力を求めたものではなく、魔術を安定させるためなんだけどね」
「なるほど…でも知れば知るほど魔術が強く聞こえます。」
「そうでもないんだよ。魔法のいいところは使用するハードルが低いという点」
「ハードルが低い…ですか」
「魔法の最小で有名なのはトーチ、火属性の魔法で指先程度の火を灯すだけの魔法…でも魔術は区切りが存在していてね。一定魔重力を使わない魔術は同じやり方で発動させることが可能なんだ。違いはイメージだけ。逆にいうとそれができないと他の魔術も使えないんだよ。火を灯すことも出来ない。だからハードルが低い。まあ、魔法が作られた理由がそれだから当たり前なんだけどね。」
「そう考えるとそうかも知れません…あ、あと!」
「颯太!お前ももう一国の王、いい大人なんだ。そんなにはしゃぐな」
「はーい…」
「それで、今日は雪様はどうされるおつもりですか?」
「今から宿を探そうかなって感じだね。本当は泊めて欲しいんだけど…」
チラッとそばの男女を見るがかなり目を鋭くさせている。全然信用されていない顔だ…
「ふむ、ならば一つ私の願いを聞いてくれませんか?」
「なにかな?それをすれば宿を用意してくれる?」
「もちろんですとも…お願いの内容なのですが…」
・・・
私が王都にきたから半月が経ちました。ついに入学式がやってきたのです!春雷魔法学園、王都でも最大級の魔法学園で、有名な魔法使いも多く輩出している凄い学校です。その一員になることへの緊張は今まで味わったことないものでした。結局この半月は雪さんに会うことも出来ず、普通な暮らしをしていました。いつもは父上母上と共に来ていたので1人で来ることは新鮮でしたが、なんとかこの日を迎えられました。
「さて、これが私の魔法への第一歩…」
私が門を潜った瞬間でした。ドゴーンっと何かが爆発したかのような音が鳴り響きました。その音のなった方向を見ると2人の男女が言い合い…いえ、もうそんな次元ではありません。魔法を使って争っていました。
「てめぇ…よくもやりやがったな!」
「暴れないでください。今度魔法を使ったら私も魔法を使わざる終えませんので」
周りはざわついている。見た感じ先輩の方々でしょう。これからこんな学園で過ごすと考える緊張より恐怖を感じました。
「そこまでですよ。それ以上やるなら僕も君たちを捕らえなければならなくなりますから」
その声は聞き覚えがあった。私がゆっくりとその声の主の方向を向くとそこには見たことのある人物が立っていました。
「雪…さん?」




