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Sky Soul  作者: 世幡 知 
1/8

序章

天空城編


登場人物



レイ・ホープ 主人公。十歳の銀髪の少女。月族。

キバ     忍者。十九歳の黒髪の男。ティラといつも行動している。

ティラ    ローブを着た子。八歳の金髪の男の子。

ミルト    白い光の龍の子。


レアン    双子。十八歳の金髪の男。目が紅い。

カノン    双子。十八歳の金髪の女。目が紅い。


マナ     天空城のボス。十歳の茶髪の少女。

リム     マナの秘書。十七歳の赤毛の女。

ギーム    謎に包まれた男。十七歳。

ヴァッシュ  天空城の新米。十六歳の青髪。


この世界・・・。

天空(フロウティング・)(キャッスル)という名の団体が支配する世界。

ほとんどの人がその団体を支持するが、一部、くらい闇の世界があった。

それは  呪われた月族。

天空城の闇の部分は彼等、月族が何でも知っていた。

だが、希望は絶たれた。

天空城に、月族は滅ぼされた。

呪われた月族の名は、時が経ち人々から忘れ去られていった。

一部をのぞいて―――――――。

・・・・・お前だけが、最後の希望だ。











序章 出会い

一 ミルト

空には夕日が浮かんでいる。

気持ちが悪いくらい、真っ赤だ。

私は高く茂った枯れ草に隠れていた。

辺りは犬の鳴き声がする。

この草原の中にいると私は確実に死ぬ。

私は草原の向こうの森に目をむけた。

森の中に逃げれば、見つけにくくなり犬に噛まれた傷も癒せる。

  (私は・・・・・・まだ、死なない。)

自らにそう言い聞かせた。

静かになった草原の中、私の心臓の鼓動が聞こえる。

不意にパンッという銃声の音が草原に鳴り響いた。

鳥が一斉にバサバサと羽の音を響かせながら飛立った。

パンパンパンと連続で銃声の音が聞こえ、飛んでいた二匹の鳥が悲しく墜落した。

あの弾にはあたってはならない。

龍の血が穢れてしまう。

(あの時はバカだった・・・・。)

私はなぜこうなったのかをゆっくり思い出した。

     *************************

私が村の隅で村の人々の話を聞いていたときのことだ。

私は村の裏に茂る甘い果実をのんびりと食べていた。

このときは飢えていてしょうがなかった。

私は果実を食べながらおろかな人間どもの話を、耳をすまして聞いていた。

「龍の気を感じます。」

白いローブを着た女の人が言った。

私は食べるのをやめ、じっとした。

(きづかれたのか・・・?)

「龍は高く売れるぞ。そして、戦力にもなる。ゆくのじゃ!賞金稼ぎよ。」

白いひげを長く伸ばした、村長らしき者が杖を振り上げた。

賞金稼ぎは3人いて、一人が中年の男、もう一人が中年の女、もう一人が年は10くらいの少女だった。

少女には並々ならぬ殺気があった。

中年の男と女よりも秀でている。

白ローブの女は、聖魔導を使って龍の情報を集めた。

「白き龍の子のようです・・・・この世で無敵と呼ばれる光の龍・・・。あとは不明です。」

「わかったか。レイ。」

中年の女は言った。

「了解です。」

と少女はこたえた。

少女は古稀使われているようだった。

私は静かに思った。

(国の犬・・・・・か。哀れだな。)

「いくのじゃ!!」

村長らしき者が言うと賞金稼ぎは「はっ。」と言い、音もなく砂煙だけを残して消えた。

―――私はわれにかえった。

(弾・・・・あのいやなにおい・・・あれには触れてはならない。)

私は同時に恐怖と興奮を感じた。

これは武者震いではない。

ただの恐怖だ。

(怖い・・・・怖い、怖い、怖い!)

その時、私には冷静さが無かった。

頭の中で飛ぶと撃たれることなんて、わかっていたのに。

私は我を忘れ、気がついたときにはもう・・・・飛んでいた。

目の前に中年の女が不意に現れた。

中年の女はあの鉛の玉を撃ってきた。

鉛の玉は私の体すれすれに空気を切った。

今度は中年の男が、魔法銃をかまえた。

私は鋭くとがった牙を剥き出し、炎を吐くぞと威嚇した。

・・・しかし実際には吐けなかった。

光属性の魔法なら何でも使えるが、威力がありすぎてこの村を丸焼きにしてしまう。

(血はみたくない・・・・。)

そしてその一瞬のスキに弾を一発入れられてしまった。

スローの映像を見ているようだった。

「残念だったな。白き龍。」と中年の男が言った。

(これで終わりなのか・・・・。)

あたると思った瞬間、地面から不思議な力に引き寄せられた。

(なんだ!?)

不思議な力で、翼が制御不能になった。

ドスンと鈍い音がし、地面にたたきつけられる。

(くっ・・・・!)

尻尾にひどい激痛が走る。

尾から血が滴り落ちた。

真っ白な尾は血でくどい桃色に染まっていた。


――――そして今、ここにいるのだ。ただ広いだけの灰色な草原に。

私は目をつむり、耳を澄ました。

目をつむれば、神経が研ぎ澄まされる。


――――犬の唸る声がする。


周りに二匹。

中年の男のにおいがする。

どうやら飼いならされているようだ。

私は目をかっと目を開いた。

―――今ならわかる。犬がどのようなステップで自分を()りに来るのか。


(私は、死なない!)

私は最後の力を振り絞った。

私は前につっぱしるように見せかけた。

もちろん、つかまるわけがない。

犬が二匹両脇から、襲いかかってきた。

犬は目が充血し、口からよだれを垂らしている。

狂気の犬だ。飼い主によく似ている。

私はフッと微笑みを浮かべた。

私が左にフェイントをかけると犬どもは左にとんだ。

私は右にステップをふみ、さらにとびかかってきた犬を踏み台にして、空へと舞い上がった。

今の私に弾など、当たらない。

私は一声ほえると森へと急いで向かった。

      ***********************

何分か飛ぶと森に入った。

やっと体が癒せる。

私は草むらに倒れこんだ。

よほど疲れていたのか目をつむると、ぐっすりと寝てしまった。


・・・・私は夢を見た。


**********************

そこは戦場だった。

血の匂いがする。

大砲やミサイルの音が耳に響く。

私と母は草むらにじっと息を潜めていた。

「―――――ミルト。私のかわいいミルト。ここで待っているのよ。絶対に動いたり、声を出したりしてはいけない。」

私の母、ユーンは言った。

「母様・・・・・・?」

私、ミルトが言った。

ユーンは前方に人間が大勢いるのを感じ取った。

(ミルトは死なせない。天空城の団体は危険だわ。ミルトが利用されてしまう。)

「じっとして待っているのよ。」

ユーンはミルトを優しくなめた。

そして草むらからとび出した。

ミルトは天空城という言葉を心に刻んだ。

(復讐してやる・・・。)

ユーンは草むらから飛び出し、ユーンはほえた。

そして、ユーンの声はもうそれから、聞こえなかった。

******************

ミルトは飛び起きた。息が荒くなっている。

(はっ!・・・・・・・嫌な夢を見た・・・・。)

ミルトは周りを見渡した。人の気配は感じない。

(賞金稼ぎは追いついていないようだな・・・。)

そのとき、後ろからミルトは強烈な殺気を感じた。

(何ぃ・・・・?誰かいるのか?)

ミルトは息を殺し、緊張して硬直した。

すると頭の中で声がした。

{残念だけど、君の心は・・・・・}

そして振り向くと賞金稼ぎの少女がいた。

ミルトに剣先を突きつけている。

「全てお見通しさ。」

(・・・・・!!)























二 レイ

ミルトはまだ、動けないでいた。

(殺される・・・。)

少し時間がたつと、少女は言った。

「私に協力するきはない?」

ミルトは静かに少女の話に耳をかたむけた。

「私は呪われた月族。・・・この刺青が証拠。」

少女は巻いているターバンを少しずらして刺青を見せた。

左目の下に淡い水色の雫の形をした刺青が三つ彫ってある。

左が一番大きく、右にいくにつれて小さくなっていく。

「月族は龍と心を通わす。龍の心、見ているもの、考えていること、全てが見える。それを聞いた天空城の団体はすぐ月族狩りにやってきた。龍は戦力になるから。くやしいけど、月族は戦いの渦から、逃げられない。呪いみたいなもの。」

「私の年が七のときだった・・・・・・・。」

少女は目を伏せ、悲しそうな表情で語りだした。


三年前――――――「兄さんどうしたの?」

少女の兄は緊張しているのだろうか、窓の外を見て、固まっていた。

「奴が来た。天空城だ。そこに隠れていろ。・・・・・出てくるんじゃないぞ。」

兄の握り締めた拳が震えている。

{怖いものなしの優しい兄さんが、震えている・・・。}

兄は少女の背中を押し、少女を見つけにくい隠し扉の裏に隠れさせた。

「絶対、出てくるんじゃないぞ。」と兄は小声で言った。

少女は隠し扉の隙間から部屋の様子をのぞいた。

入り口の扉が開き、誰かが兄を連れて行こうとしている。

兄の両手は紐で硬く結ばれ、この部屋を出て行った。

兄の右目の下にある、私と同じ形をした刺青が、きらりと虚しく光った。

その光は涙だったのだろうか。

私は目をギュッとつむった。

目から大粒の涙がぽろぽろと、絶え間なくこぼれた。

{ごめんなさい、兄さん。私は弱いから助けられない。ごめんなさい・・・。}

少し時間がたつと、またドアの開く音がした。

最初は兄さんかと思ったが、兄さんはあんな乱暴な開き方しない。

その誰かが入った後、たくさんの人がドタドタと入ってきた。

少女は怖くなって隠し扉が開かないように魔法をかけた。

人間達は何かを探している様子だった。

見つからなかったようで、くやしそうに地団太を踏む奴もいた。

少し時間が経つと、人間達はバタバタと出て行った。


――かなり時間がたった。

奴らはこの村から出て行ったようだ。

なにか焦げ臭い匂いがする。

嫌な予感がした。

怖くなって、隠し扉から勢いよく出て行った。

少女は大きく目を見開いた。

外を見たとき震えがとまらなかった。

全てが燃えていた。

私は誰かいないかと必死にさがしたが、誰もいない。

少女はガクリと膝をついた。

頬から最後の涙が零れ落ちる。

そして思った。

{なんて私は弱虫なんだろう。あそこに隠れているより、みんなと一緒に連れて行かれればよかった。}

とても、くやしかった。

そして少女は誓った。

「絶対みんなを助け出しに行くんだ。そして私は・・・絶対・・・強くなる!」


「もう、泣かない!」


少女の叫んだ声は誰もいない村に響いて寂しく消えた。

―――――「そして兄さんは帰ってこなかった。今は生きているのかもわからない。でも私は兄さんが、みんなが、生きていると信じている。私は兄さん達を助けに行くんだ。」

そういって、少女は話をきった。

「もう一度聞こうか。協力しない?」

(・・・・・・・わかった。信じきったわけじゃないけど、一緒に行くよ。でも、私の復讐にも付き合って。)

そう返事をすると、少女は小さくガッツポーズをした。

「その返事を待っていたんだ。私の名前は・・・レイ・ホープ。{細い希望の光}」

レイは嬉しそうにいった。

自分の名を言うのに少しためらったがミルトはこたえた。

(私はミルト。・・・・でも、あいつらはどうするの?)

ミルトは賞金稼ぎたちのことを思い出した。

レイは困った顔をしてこたえた。

「・・・・残念だけど、おっさん達は倒さないとね。」

(・・・・・・残念か?)

さりげなくミルトはつっこんだが、レイはその言葉を無視して話を続けた。

「その時は隠れてね。ややこしくなるから。」

(ええ。言われなくてもそうしますとも。)

ミルトは木の根っこの小さな穴に隠れた。

何分か経つと賞金稼ぎたちが草むらを揺らして、やって来た。

(噂をすれば・・・だな。)とミルト。

「レイ、なにか見つかったか?」

中年の女が話しかけて来た。

レイは首を振り、背中に下げている剣を手に取った。

「なんのつもりだ、レイ」と中年の男。

レイの顔が無表情になる。

レイは一瞬その場から消え、男の前に移動し、剣で肩を切りつけた。

血が空中にはねる。

レイは返り血を避けたが、頬にひとつ、ぽつんと男の返り血がついた。

レイはその血を手でぬぐった。

男は倒れて動かなくなった。

ミルトは恐怖に顔がひきつった。

(一瞬だ・・・・。)

「くそ!何だと言うのだ!」

女は舌打ちして弓を三本引き、放った。

三本の矢が弧を描き、空中を切る。

レイは二本よけたが一本は右の頬にかすれた。

頬が摩擦熱でひりひりする。

もう少し右だと、刺さっていたかもしれない。

レイは頬の痛さに耐え、呪文を唱えた。

地面には青い光の筋の魔法陣が浮かび上がった。

古代の言葉が円状に浮かび、それを縁取るように円が描かれている。

ミルトにはよくわからない、月族のものであろう。

レイは呪文の唱え終わりに小さくボソリと何かをつぶやいた。

(呪文の名称なのだろうか・・・。)

すると辺りがまぶしく光った。

目がつぶれそうだ。

(まぶしい・・・。)

ミルトは思わず目をつむった。

目を開いたとき、そこにいたはずの、目の前の女は消えていた。

(・・・・何があったのだろうか。)

レイは剣についた血をぬぐい、鞘におさめ、何も無かったかのように近づいてきた。

レイは空を見上げた。

いつのまにか、夜になっていたようだ。

空にはいくつもの星が散らばり、大きな月は不気味に青白く輝いていた。

「きれいな星空だね。・・・・・これでまた、兄さんに近づいたかな。」

{そういえば昔、兄さんがこんなこと言っていた。}

―――――「いつでも笑っていろよ。」

どういう意味なのかはわからない。

なにが言いたかったのだろうか。

レイにとって、謎めいた言葉だった。

しかし、レイはいつも微笑む努力を重ねた。

――――ミルトは考えていた。

こんな怖い人間について行っても大丈夫なのだろうかと・・・。

コイツがもしも、邪悪なヤツだったら・・・・?

私はどうなる?

死ぬにきまっている。

ミルトの自由はコイツに奪われた。

今、考えていることも全部聞こえているのかもしれない。

ミルトは身震いした。

半信半疑で付き合えば・・・・何とかなるかな。

「邪悪なんかじゃないよ。いつでも君の味方さ。たとえ君が敵になってもね。」

とレイは言い、微笑んだ。全部聞こえていたのだ。

しかし、その微笑は決して邪悪なものではなかった。


この二人の絆はやがて硬く結ばれた。

 


三 謎の人

ミルトは疲れのせいかぐっすりと寝ている。

尾にけがをしているのでよく効く薬をぬり、包帯を巻いた。

レイの魔法のせいで地面にたたきつけられ、傷ついた傷だった。

{あの時は、ごめんね。重い傷だけど、君なら三日で治るはず。}

レイはあくびをした。

「君を見ていたら、なんか眠くなってきたよ・・・。今日はここで野宿だね。」

このまま寝るとさすがに危険なので、レイは強力な結界を張った。

これで雑魚敵だけは入れない。上級者の魔導師ならすぐにみやぶられるが、こんなところに来る奴なんていないだろう。

「おやすみ・・・。」

レイは草むらに寝転がったまま、ぐっすりと寝てしまった。


――――――――深夜。

(べに)(づき)を背景に丘の上に立っている人がいた。

その人はじっとミルトたちのことを見つめていた。

ミルトたちの敵かどうか、わからない。

だが、敵だとしたら襲ってくるはずだった。

その人は黒いフードを深くかぶり黒い衣装につつまれ、死神のようだ。

表情は無表情だった。

紅月の光に天空城の十字架のような紋章がキラリと光った。

謎の人は数分たつと、煙のように消えた。


暖かい目で見守ってください。

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