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家出JK『お嬢様』を助けてお菓子をあげたら懐かれた  作者: しぐれのりゅうじ


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13話

「お兄さん、茜さん。今週の土曜日に三人でお出かけしない?」


 鏡花とショッピングモールへ行った日から数日経ったある日、夕食を三人で囲んでいると突然提案してきた。


「お出かけってどこに行くの?」

「近くの公園あるでしょ? 最近天気も良くなってきたし、あの公園かなり広いしピクニックでもどうかなって」

「ピクニック! 大賛成だよ!」


 茜は気持ちを身体で表現するように文字通り体を乗り出す。


「お兄さんはどう?」

「俺は……」


 確かに暇ではあったが、無理やり隣に座って食べている姉を見ると、簡単には頷けなかった。


「おにーさん? 忘れちゃった?」


 何かは明言しなかったが、瞳を細めた微笑みがショッピングモールでの帰りの会話を思い出させてきた。


「はい……行きます」

「やったぁ! 土曜日がすっごく楽しみ!」


 半ば強引に三人で遊びに行く事が決定してしまう。その元凶である鏡花はサプライズに成功したかのように愉快そうにしていた。




 土曜日はうららかなピクニック日和だった。気温も暑すぎず寒すぎず、過ごしやすい気候となっている。鏡花の作戦に天気も協力的でピクニックは決行されることとなり、十一時頃に刀真の家から三人でいってきますと出かけた。


「そういえば鏡花ちゃん、それ新しいお洋服?」

「ええ。最近買ったの、良いでしょ?」

「すっごく似合ってて可愛い!」

「えへへ、ありがと」


 今日着ているのは刀真と一緒に買ったもので、褒められた本には嬉しそうにはにかんだ。同時に服選びに携わった側も気分が良くなる。


「そうそう、とうくんも何だがオシャレな感じだね!」

「俺も、最近買ったんだ」

「カッコいいじゃん!」

「……どうも」


 せっかくだからと刀真も鏡花に選んで貰った服を着てきた。あまり、服には興味がない刀真だが、こうして褒められると、恥ずかしいが、着飾りたい気持ちが理解できた気がした。


「ふふっ」


 密かに鏡花はドヤ顔をこちらに向けていた。


「それにしても鏡花ちゃん、近くの公園で良かったの? 少し遠出するって選択肢もあったと思うけど」

「それだと疲れちゃうし、逆に近くだから良いのよ。いつもの公園なのに、特別感があるというか、新鮮に感じられると思うから」

「へー……」


 そんな事を考えたこともなかったので、鏡花の言う通りの感覚になるのか興味が出てくる。


「もしかしてお嬢様、やったことある?」

「小さい時家族とやっていたわ。高学年になってからはやらなくなったんだけどね。この感覚、懐かしいわ」


 言葉通り鏡花は昔に浸っていて、同時にその輝きを求めるようにも見えた。


「あたし達は近所ではやった事ないよね。お出かけして桜が綺麗なところでお花見した事はあったかな」

「そうだっけ?」

「とうくんは小さかったからねー。小学一年くらいの時じゃないかな」


 刀真はイマイチ覚えておらず、思い出そうとすると記憶の端っこに微かに触れるような気がした。


 他愛ない会話をしている内に住宅街を抜けると、すぐそこに見える公園へと着く。高低差はない平面に芝生が広がっており、自然が溢れて、遊具もぽつりぽつりと点在している。


「あれれ、意外と人は少ないんだねー」

「お昼時なのもあると思うけど、この辺にいた子供は、私みたいに皆成長して、人も増えてるわけじゃないから」


 公園には人影がほとんどなく、その面積を持て余していた。しかし、沢山人がいる中で、花見シーズンでもない日にレジャーシートの上にいるのはハードルが高かったので、刀真としては好都合だった。


「あそことか日当たりが良くてちょうど良さそうだね」


 奥の方に、広々とした開けた場所があった。刀真はそこにレジャーシートを敷いて、各々荷物をその上に置いて座る。レジャーシートはある程度の大きさがあり、三人で使うには余裕があった。


「ぽかぽかだねー」

「ええ、ここでお昼寝した気持ちよさそう」

「鏡花ちゃんやってみる?」

「ちょっと横になってみようかしら」


 二人は添い寝するような形で、頭の方は芝生の方に出てしまっているが、気にすることもなく寝転がった。


「何だか解放感があるよー。公園で横になるなんて大人になったら出来ないから」

「私も小学生以来かも。お兄さんもやってみたら」

「俺は別に……」

「せっかくだからしようよ、とうくん。ほらこっちにおいで」


 茜は隣に来るようにその場所をポンポンと叩く。乗り気でもなかったがそこまで断る理由自体はなく、刀真は茜の横で仰向けになる。


「どう? 気持ちよくない?」

「確かに」

「でしょー?」


 優しい日差しやそよぐ風、草木の香りを感じられて、心が穏やかになるとともに、子供の頃に戻れたような懐かしさを感じた。


「他に人がいなくて良かった。変な目で見られてたかもしれないし」


 刀真は改めてそう思う。二人はそこまで気にしていないようだったが。


「別に良いでしょ。お兄さんって結構人の目を気にするよね」

「もしあたし達の事を誰かが見たら、どういう関係だと思うんだろ。仲良し姉弟かな」

「いや、普通に友達とかじゃないの」

「もしくはハーレムとか?」


 突然、鏡花がぶっ込んできて刀真は変な咳が出てしまう。


「な、何を言って」

「冗談、冗談」

「でも、そう見えなくはないよね。美人二人を連れててさ」

「姉ちゃんまで何言ってんの」


 自分で美人と称しているのはひとまず置いておくが、そんな事を言われると変に意識してしまう。


「あ、顔赤くなった」

「うるさい」


 刀真は逃げるように二人から顔を背けた。すると、後ろからクスクスと笑う声が聞こえてくる。


 彼女達に精神を揺さぶられはするものの、何もしない今の時間はゆったりと流れて穏やかで心地良かった。


「ピクニックって何をするのかと思ったけど、こういう感じも悪くないね」


 刀真は歳を重ねて、すぐに一日が過ぎるようになった日常から少し離れられているような気がした。


「そだねー。ずっとこのままでもいいかもー」


 茜は言いながらさらっとこちらに少し身体を近づけてきた。


「良いと思うけれど、ずっとこうなのはきつくないかしら」

「いや、余裕でしょ」

「うんうん、とうくんに同意です」

「茜さんまで……と、とにかく遊べるものを少し持ってきたの」


 三人は一旦起き上がり、鏡花はリュックからトランプやUNOを取り出した。


「あれ、ゲーム機は持ってこなかったんだ」

「せっかくのピクニックだから、普段とは違うものが良いって思って」

「特別感って大切だよね! あたし、トランプとかしばらくやってなかったなぁ」

「俺も。友達いなかったし」


 家族とやった記憶がうっすらとあるくらいだった。


「お兄さん……可哀想」

「寂しかったよね……よしよし。今日はいっぱい遊ぼうね」

「優しくするのやめて」


 憐憫の眼差しを受け、姉には頭を撫でられて、可哀想な人と思わされて悲しくなってくる。


「じゃあやるわよ。哀れなお兄さんに楽しい思い出を作るために」

「おおー!」

「もはや煽ってるよね、それ」


 刀真達は昼まで、暖かな日差しとそよ風を受けながらまずはババ抜きで遊んだ。


 ふと、微かに残っていた家族と遊んでいた昔の感覚が蘇ってきたが、茜からジョーカーを引いてしまい、すぐに消えてしまう。とにかく今に集中すべく次は鏡花へと意識を向けて、トランプを楽しんだ。

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