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廃嫡された元王太子との婚姻を命じられました  作者: 灰銀猫


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王太子ご夫妻

「兄上!」


 連れていかれた先は王族の席だった。目の前にはオーリー様と同じ銀の髪と金色の瞳、面差しを持つ男性が目を輝かせて、オーリー様を兄上と呼んだ。そしてその隣には金髪と薄青の瞳を持つ女性が寄り添うように佇んでいた。


(ま、まさか……王太子殿下?)


 場所が場所なだけに疑いようもなかった。


「ルシアン、グレース妃。アンジェリク=リファール辺境伯令嬢だ。アンジェ、弟のルシアンと妃のグレース嬢だよ」


 いきなり王太子ご夫妻との対面に、緊張が一気に高まった。私たちも王族の枠で入場したけれど、控室は別だったし警備も厳重だ。言葉を交わす隙もなかったのだけど……


「ア、アンジェリク=リファールにございます。王太子殿下ご夫妻に拝謁出来て光栄至極にござい……」

「ああ、堅苦しいのはいいよ」


 私の挨拶を遮ったのはルシアン様だった。小難しいのは苦手なんだよ~と言っている横でグレース様が窘めていらっしゃる。


「アンジェリク様、殿下がすみません」

「い、いえ……」


 グレース様にまで気を使わせてしまった。グレース様は優しそうだけど、しっかり意見を言う方らしい。


「グレースも固いこと言わないでよ。兄上の婚約者なら未来の義姉上なんだから」

「それでも、最初はちゃんと挨拶するものですわ、ルシアン様。しっかりなさって下さい。フィルマンが真似したらどうしてくれるんです?」

「う、わ、わかったよ……」


 どうやらルシアン様はグレース様に頭が上がらないらしい。でも、二人のやり取りからルシアン様はグレース様に甘えているようにも見えた。


「そうそう、君に会ったらお礼を言いたかったんだ。私は君に感謝している。兄上をここまで回復させてくれたからね」

「い、いえ、当然のことをしただけですから」

「そうは言うけど、治癒魔術の使い手は少ないからね。君は学園でも優秀だったらしいじゃないか」

「ええ、私も聞いておりますわ。上級魔術も取得されているとか。近年は一つを極めるよりも二つ三つを程々に学ぶのが主流ですから」


 確かにグレース様の仰る通りだった。上級魔術など滅多に使う機会がないので、そういうのは専門家に任せて中級魔術を複数取得するのが貴族的だと言われている。その方が簡単だし、色々な場面に対応できるからだ。私は平民になった時に備えて一つを極める方に進んだけれど、辺境伯家を継ぐのならそちらを選択しただろう。


「まぁ、この話は置いておいて。ねぇ、兄上、デスタン小公爵夫妻が話しかけてきたけど、何だったの?」


 にこにこと笑顔のままでルシアン様がオーリー様に尋ねた。


「ああ、あれか。相談したい事があるから時間を作って欲しいって言われたよ」

「へぇ、相談ねぇ……じゃ、いよいよ離婚する気かな」

「離婚? そんな話になっているのか?」


 相思相愛で結ばれたオシドリ夫婦との評判は、遠くリファールの辺境にも届いていた。それなのに離婚だなんて……オーリー様が怪訝そうに眉をしかめた。

 ルシアン様の話では、お二人は三年ほど前からぎくしゃくしていたらしい。内情はわからないけれど、セザール様はお気に入りの恋人と、ジョアンヌ様はいとこの男性と噂になっているのだとか。


「ベルクール公爵の逮捕のせいか?」

「それは関係ないよ。むしろそのせいで離婚出来ないとも言えるかな。ジョアンヌ嬢にはもう生家はないからね」


 確かにジョアンヌ様の実家は取り潰されてしまった。今離婚すればジョアンヌ様は平民になってしまうし、そうなればデスタン公爵家が非難されかねず、離婚しにくいのだという。


「じゃあ……」

「確証はないけど、離婚後は兄上と……と考えているんじゃないかな? そうなればデスタン公爵家の面子も保たれる」

「馬鹿な……」


 オーリー様は陛下の命で魅了の調査をして、その後毒のせいで療養したことになっている。ジョアンナ様との婚約破棄も、ミア様に飲まされていた毒の後遺症からジョアンヌ様の将来を案じてのことだったとの筋書きを作ったから、彼らもそれを信じているだろう。だから今離婚して、後はオーリー様ともう一度、と。


「馬鹿馬鹿しい。あれは体面を保つためで、私が王家に戻ることはないのに」

「でも、彼らはそれを知らないからね。父上の話から兄上が王籍に残ると思っているんじゃないかな」


 確かに表向きはオーリー様の罪はなかったことになっている。でも、陛下は王籍に残ることをお許しにはならないし、我が家への婿入りも絶対だという。


「まさかあの二人が……」


 ルシアン様の説明を聞いても、オーリー様はまだ信じがたいように見えた。でも、心情的には理解出来る。幼い頃から想い合っていた二人なのに、こんなに短い期間で破綻するなんて想像出来なかっただろう。





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