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廃嫡された元王太子との婚姻を命じられました  作者: 灰銀猫


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祖母の謝罪

 翌朝、私はお祖母様に昨夜オーリー様から聞いた話をした。さすがに一人で抱えるには荷が重く感じたからだ。それに王族だったお祖母様ならオーリー様が盛られた毒について何か知っているかもしれない、と思ったのもある。


「そう、オードリックが……」


 この話はお祖母様もご存じなかったようで、話し終えた後でそう呟くと黙り込んでしまわれた。


「毒について、何か思い当たるものは……」

「……これだけの情報では何とも言えないわね。子種を失くす『銀の涙』の可能性は高いでしょうけど、もう一つとなると……二つも毒を盛るなんて話、聞いたこともなかったし……」


 お祖母様も毒についての心当たりはないと言った。『銀の涙』の可能性は高いけれど、断定は出来ないと。そして二つ目の毒に関しては全く思い当たるものがなかった。


「じゃ、オーリー様は……」

「こればっかりは、陛下に尋ねないとわからないわね」

「陛下ですか……」

「ええ。あの子なら把握しているでしょう。でも、あの子がしたとは考えにくいわ。そうする理由がないもの。ただ……」

「ただ?」

「仮にそうだったとしても、表沙汰にはしないでしょうね」

「それって……」

「婚約破棄だけでも十分すぎる程の醜聞だもの。あれ以上、騒ぎを大きくしたくないでしょうね」


 それは王家の体面もあるけれど、オーリー様を守るためでもあるのだとお祖母様は言った。これ以上彼を貶められたくなかったのだろうと。


「それで、アンはどうしたい?」

「どうと言われても……王命なら断れないでしょう?」

「……そうね。うちも、ジェイドの件があるから」

「お父様の……」


 お祖母様の綺麗な眉が歪んだ。そう言えば父も王命に反したというか、王命が出るとわかっていながら、それを避けるために義母と事実婚を強行したのだ。辺境伯領の後継者は国が決めた相手との不文律を無視して。


「オードリックがうちに寄こされたのはあれの影響もあるでしょうね。でも、どうしてもと言うのなら陛下に話をしてみるわ」

「でもそうなると、余計に我が家の立場が難しくなりませんか?」

「そりゃあ、影響がゼロとはいかないでしょうけど……アンがあのバカの尻拭いをする必要はないのよ」


 確かに父の尻拭いを私がするなんて冗談じゃないと思う。それでも貴族は家単位でみられるものだ。父の瑕疵は我が家の瑕疵だから、私は関係ないなどと言っても取り合ってなど貰えないだろう。そりゃあ心情的には理解してもらえるかもしれないけど……


「……今はまだ、わかりません……昨日の話もまだ、整理できなくて……」


 毒のことや今の体調のこと、残された時間がどれくらいなのかも気になるけど、オーリー様がジョアンナ様を愛していることも気になった。今でも想い続けているのに私との結婚は不本意だっただろう。子が出来ないということ以前に、私を妻にすることに抵抗があったから形だけの結婚を勧めてきたのだろうし。

 一方の私は、政略なのだからそこに恋情がなくても夫婦として信頼関係を築いていけたら……と思っていた。好きな相手なんていないし、そういう感情は政略結婚が定められている身には危険だと感じていたのだ。父のように心のままに振舞えば、今度こそ我が家は王家から見放されるだろう。祖父母のような仲のいい夫婦に憧れたし、そうなれたらいいなとは思っていたけれど、それも相手次第だ。

 オーリー様ともいい関係が築けたらと思っていたところに、急に子は好きな男と作るように言われても困惑しかなかった。子を作るのは私の義務ではあるのだけど……


「……ごめんなさいね、アン。私たちがジェイドの育て方を失敗したせいで、余計な苦労をかけるわ」

「そんなの、お祖母様のせいじゃないわ!」

「そう言っても、私たちがもっと厳しくしていたら……」

「それだったらそれで、余計に反発しただけだと思いますよ」

「……確かに……」


 お祖母様は一瞬考えたけれど、想像の先にみえた未来は私と同じくいいものではなかったのだろう。父に関しては、正直言って本人の資質の問題だと思う。楽に流されたがる父相手では、厳しくしても反発を強めてより悪い方向に向かったとしか思えない。未だに自分が後継者だと信じて疑わないあのお目出度さは理解に苦しむし、本当に私たちと血が繋がっているのかと思ってしまうくらいなのだ。


「……まだ時間はあるし、オードリックがそう考えているのなら関係を強いることはないでしょう。結論が出るまでよく考えなさい」

「ありがとう、お祖母様。あとお願いがあるのですけど……」


 その後、私はお祖母様にオーリー様の診察をお願いした。薬を飲んでいるけれど効いているかどうかわからないと言っていたのが気になったのだ。もしかしたら十分な治療を受けていないのかもしれない。治癒魔術を使うにしても、現状を正しく知りたい思いもあった。


「そういうことなら、医師だけでなく毒に詳しい者も呼んだほうがよさそうね」


 そう言うとお祖母様が直ぐに手配してくれると言った。





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