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92 片手間でも問題なし

 夕方に差し掛かると二人はほぼ体調を取り戻していた。回復が早い事に感心する。ソファーに座っているとシオリが隣に座った。


「バチバチ。バチバチ。バチ」


 そう言いながら横腹をポンポンと何度も突いてきた。指は丸めて力が入ってないので痛くない。本人は意識してないだろうが可愛らしい動きだ。


(急にどうしたんだろう……特殊なマスコットポジションでも狙ってるのか……?)


 ある時、シオリの魔力に変化が起きた。微弱な電気を魔法で作り、拳に纏ったのだ。


 このまま俺に触れると、その電気は体の外側を流れて、その間に消える。それを避けるために自動で守っている魔力壁を解除した。


 体に微弱な電気が流れる。


「アアアー……不思議な感じががァアアーー」


 マッサージみたく心地よい。シオリは残念そうな表情をみせた。


「おかしい」



(これが普通なんだよなー。ていうか油断してる時に仕掛けるのやめぃ)


「ん? マッサージ上手いと思うけど」


「その台詞は予想通り」


(予想通りなの!!)


「ハハハ。よく分からないけど読まれたかー。シオリには敵わないなー~~……」


(いや。マジで心臓に悪い)




 フランが部屋から出てリビングに入る。夕ご飯の時間だ。良い香りが全体に広がっていた。


「あれ? キョウは……自分の部屋?」


 ソファー付近からキョウとシオリの声が聞こえた。近づいてみるが見当たらない。


「かなり硬い」


「あ、そこそこ。けどちょっと優しすぎ。もう少し力入れてくれると」


 二人の姿は見えないが、ソファーの陰から会話が聞こえた。


「こう?」


「ぁあーそれそれ。気持ちいい。まるで天国にいるみたい」


「そのうち柔らかくなる。そろそろ中に。これすると皆喜ぶ」


「だろうな~」


 それを聞いたフランが慌てて走って回り込む。


「ちょっと!!」


「ん~?」


 シオリとフランの目が合った。彼女は丸い飴に細い棒の付いたモノを美味しそうに舐めていた。そして、キョウはうつ伏せで寝ている。シオリが仰向けで天井を見ていた。背中合わせの状態。


「な、なにしてるの?」


「低周波治療器の原理で体のケアしてる」


 シオリは背中から特殊な電流を出しているようだ。暫く経っても力加減が変わらない事にキョウが疑問を覚える。


「あれ? 今やってる? さっきとあんまり変わらない感じが」


「あ、まだ。今から深くいく」


 電気で筋肉を刺激する。収縮と弛緩をくり返すことで肩たたきと似た事が出来る。体の治療でも使われている。


 全ての店舗にあるかは不明。自己責任だが、体が痛い時や疲れた時に治療を受けると良い経験になるかもしれない。そして、シオリの言葉と共に電流が増加する。


「くぅ~~!! 体の芯まで届くぅー。体の疲れが取れていく。最高~」


「良かった」



 フランはその光景を見て言う。


「……や、やっぱりね。そうだと思った!!」


 シオリが飴を舐めながら訊ねた。


「なんで慌ててたの?」


「ぇえ? わ、私も肩がねー。出来れば先にマッサージしてほしかっただけだけどぉ? え、え。逆にそれ以外になにかあるっ!!?」


「でもさっき、なにしてるのって」


「う、うるさいっ。そ、そそれより。あッ。皆でご飯を……ッ」


 ライラも近づいてきた。


「気持ちいいのは分かりますわ。終わった後は体が軽くなるんですの。でも長時間するのは良くないですわよ。ほどほどにしませんと……」


「そうだな。そろそろご飯にするか。ありがとうシオリ」


「ぅん」


「……シオリ?」


「ん?」


 眠そうなシオリをフランとライラが二の腕付近を掴んで持ち上げ、椅子に座らせた。その後の夕飯はとても楽しいひと時だった。




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