90 休息
お昼前。リビングの大きなソファーに腰をかけているとフランたちが帰宅する。玄関から三人の声が聞こえた。
「ただいまー」
玄関に迎えに行くとお帰りと返した。三人は再会できたことを喜んだ。そこで疑問が浮かび上がる。
「……入らないの?」
「うん入るよ……ちょっと先に戻ってて」
「うん?」
リビングに戻ると三人はお風呂に直行した。誰が最初に入るかで喧嘩になっているようだ。
(フランとライラは自宅があるのに……)
結局三人は一緒に入った。くつろいでいるとフランがリビングのドア前で声をかけた。なにかと思って来てみるとドアに取り付けられたすりガラスに、彼女のシルエットが浮かび上がった。
「フラン?」
ドアを開けようと近づく。
「ま、待って。あのさ。着替え……忘れた……んだけど……」
「え。ちょっちょっと取ってくる。何処にあるっ?」
「タンスの一番上に入ってるからっ。お願い……それと他の段は開けないでよ」
フランの部屋に向かおうとした時、後から来たシオリがノータイムでドアを開けてリビングに入ってきた。一瞬驚いたが、大きなタオルを体に巻いていた。
「大丈夫。私が取ってくる」
「良かった。じゃあ頼むよ」
ホッとしたのも束の間、フランと目が合った。余りの出来事に硬直していた。彼女はすぐに近くの壁の裏に隠れようとするが滑って転ぶ。その体勢のまま言葉にならないなにかを発し、慌ててバスルームへと戻っていった。
(見え……)
ライラの家にも入り適当に漁る。その後三人分の着替えを頭に乗せ、両手で支える。
それを届けようとリビングを横切った時、徐々に緩んでいたタオルがパサっと地面に落ちた。
そこで偶然、猫が俺の顔に目掛けてダイブしてきたため視界が遮られる。シオリは気にせずにそのままバスルームへと戻っていった。
「ん。ミーちゃん。遊んでほしいのか?」
ニャーニャーと鳴いている黒猫を床に下ろして額や顎を撫でる。気持ち良さそうにしていた。
暫く遊んでいると三人がリビングに入ってきた。同時に猫はトコトコと歩きだし離れていった。
「あ……相変わらず気まぐれだなー」
三人は俺をソファーの中央に座らせると、ダンジョンでなにが起きたのかを語りながら感想を言っていた。どうやら共有したいらしい。
それを聞いて俺も思い出す。三人はLVがどうとか関係なしに前に出て、皆を引っ張った。最後まで諦めず格好良かった。最初は皆懐疑的だった。でも最後は三人の実力を認めていた。
話していると次第にウトウトと体が揺れる。シオリがソファーの背もたれを倒した。驚いたのか、両端の二人が体を掴んでそのまま倒れたので俺も巻き込まれる。
さらにシオリは、全員が足を伸ばせるように柔らかい椅子を置いた。いつの間にかライラとフランは寝ていた。シオリが二人の位置を調整し、自分の寝るスペースを作り、太腿を枕にして丸まった。良いポジションを見つけるとゆっくりと目を閉じた。
(動けない……)
とりあえず音声操作可能なエアコンで適温にした。
ふと天井を見つめながら思った。なにはともあれ無事で良かった。穏やかな表情で眠る彼女等に言葉をかける。
「お疲れ様」
ぐっすり寝たのを見計らいスルっと抜け出す。薄い布を上からかける。起きたらお腹いっぱい食べられるように調理に取り掛かる。案の定、凄い食欲でお腹いっぱいに食べた。
誤字報告下さった方、ありがとうございますっ!! 修正しております。




