82 強力な一撃
荒ぶる巨大な魔物。フェンリルの前に一人のある少女が立塞がった。地面から現れた鋭く尖った氷の柱が小さきモノを襲う。彼女は同じく氷の柱で危険な柱のみを冷静に砕く。
魔物は突然の体のだるさを感じつつも、この程度なら関係ないとばかりにそのまま少女を踏みつぶそうとした。
それに対し、少女は小さな盾を前に出す。氷を纏うことで二回りは大きくしていた。その程度、砕くのは容易い。二つは大きな音を出して衝突した。しかし、盾が割れないどころか、彼女はその場からぴくりとも動かない。
クロスは目に力がこもる。フェンリルが盾に触れる前に威力が落ちた気がしたからだ。
「なるほど。守り系統のスキル持ちか……」
軽い牽制だったとはいえ魔物は僅かに警戒する様子を見せた。鼻をスンスンと鳴らす。彼女に見覚えがあった。前回、自分等を妨害をしたモノだと気が付いた。その者の名はフランチェシカ。
フランは<チェーンマッチ>と<ヘイト>を使った。脚に鎖が巻き付いた。さらに苦痛も感じる。その不快さに、恐ろしい表情で彼女を睨み付ける。
「良い引き付けだ」
木陰に隠れていた戦斧を持った小倉が脚を、ナナセがわき腹を拳で、ライラが巨大化させたフレイルが尾を。そして、雷を纏ったシオリが首を狙う。
タイミングは完璧。全てはクロスの指示通りだ。だが手ごたえがない。魔物に触れた瞬間、ガッと氷に触れた音が鳴り響いた。各部位にピンポイントで氷が貼り付いていた。魔物は全ての攻撃を防御したのであった。
「へへっ。なめるなよッ」
ナナセが悪い笑みをうかべ、そう言った。その時、氷にヒビが入った。そこで魔物は凄まじい衝撃に襲われる。
「手ごたえありッ。馬鹿正直に拳を受けるからだッ」




