81 変化する状況
クロスはスカウトが戻った時に密かに出した合図により、魔物の数が分かっていた。そこで素早くメインパーティーを四つに分ける構成を考えた。
まず一匹に対し五人を割り当てる。その中にガーディアンとヒーラー、攻撃が得意なジョブを一人必ず入れる。
そして、六人を予備とし、臨機応変に対応出来るようにした。予備とは言っているが人数の関係から常に動く事になるだろう。その六人はクロス、師走、シオリ、黒霧、鴨、飯島。
頃合いを見て指示を出す。
「行け上代ッ。突撃だ!!」
その指示を受け、シオリがボスの下へと走り出す。ボスは驚いた。威嚇が終わり、小さな生物たちの下に加速しようとしたところに現れた影。
フェンリルは出鼻を挫かれながらも、突如現れたそれを叩き落とそうと瞬時に前足が動いた。鋭い爪が襲い掛かる。しかし、スルリとそれを回避しながら雷を纏った双剣を振りかざす。
シオリは目を細めた。首を切ったが硬すぎて、ほぼほぼダメージは与えられなかったからだ。同時に地面から巨大な氷の棘が現れた。フェンリルの魔法である。
それを回避するが、遅れて反応した取り巻きの狼も物理的な攻撃で加勢する。シオリは回避のみに追い込まれた。
「失敗した。残念」
<飛雷・乱舞>をボスと取り巻きの脚の付け根に放ちながら後退する。それに怯むことはなく、ボスを守りつつも取り巻きが襲い掛かる。
シオリを追うことで出来た僅かな間隙を見つけると、クロスの作戦は実行された。分散させた魔物を囲み、各個撃破の形をとる。
正確にはボスに火力を集めているため、ボス以外のパーティーは主に時間稼ぎで、もし隙が出来て倒せたら運が良かったという感じだ。
基本は無理をしないように立ち回る。押し過ぎても押され過ぎても問題が発生するので、力の均衡を必死で維持するのが役目だ。
そこでサポートパーティーで選ばれた七名が前線に上がってきた。ソース、藤原、レナもそこに居た。伊西がクロスに言う。
「一番小さい奴は俺たちが引き受けよう」
伊西は最善だと思われる行動を選ぶ。既にその構成もしたうえで援護に来ていた。
「メインパーティーのガーディアンと支援魔導師を残す。それ以外は五人と合流。六人に切り替えるぞ」
「なるほど、ガーディアンが二人か。了解だ」
こうしてボスと取り巻き、計三匹に対しては六名ずつ。残りのもう一匹の取り巻きに対してはサポートメンバーを合わせ九名。予備が六名という構成になった。




