78 以心伝心
キャンプ場所を決めると、大きな焚火を皆で囲っていた。メインとサポートが一緒になってご飯を食べる。しんみりしている者も居れば必要以上に明るい者もいた。
しかし、共通していたのは一人一人が皆の顔をさり気なく見ていた。これが最後になる可能性もある。それは完璧にという訳にはいかないが、人それぞれのやり方で記憶に残そうと。
酒を片手に巨大な戦斧を扱う男。小倉がシオリに問う。
「デッド……そいつは本当に存在するのか?」
誰もが気にしているが言わなかった質問を彼は堂々と聞いた。幾人かの者がそっと耳を傾けた。特にフランは興味深そうにしていた。パチパチと焚火の音だけが聞こえる。
シオリは少し悩んだ。その真剣な表情を見て応える。
「……生きていればいつか会えるかも」
なんとなく嘘を吐きたくないと思った。それを聞いた彼は一瞬笑った。
「そいつはァ死ぬわけにはいかねぇな」
「なんで?」
「はっ。理由なんて決まってる。強い者と戦いたい。それだけだ」
「……私の知る限りでは無敗。人でも魔物でも。誰も倒せない」
「クク。無敗の男、か。いいな。是非とも最初に倒したくなった」
「それは無理」
「残念だが、嬢ちゃん。そう言われると余計やる気が出るってもんだ」
「無理。だって私が最初に倒すから」
それを聞いて僅かに止まった。そのまま小倉は楽しそうに笑う。それに釣られて周りの人も静かに笑った。暫くなにかを楽しんだ後、彼は力のこもった。しかし、柔らかな声で飾りのない言葉を放つ。
「戦士たちに」
それはシオリを認めた言葉にも、過去の戦士たちへの弔いにも見えた。そう言って彼は持っている器を前に差し出す。話を聞いていた数人の者たちも同様の動作をして一気に飲み干した。
遅れてシオリも真似をする。温めた牛乳を掲げてゴキュゴキュと飲み干した。
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