65 平和な空間
ダンジョン、スカイロックから帰宅するとリビングルームの窓際に三人がいた。
フランがタンクトップとスパッツ姿で体を伸ばしていた。立った状態で真上に開脚していた。手で脚を持って支える。所謂I字バランスをしていた。
シオリはシャツと短パンを履いたラフな格好だ。地面にベタっと180度に開脚させ、体を前に倒していた。頬が床にぺたりとくっつく。柔軟をしていたが、そのまま力尽きた様子。
猫がシオリの頬辺りにピタリとくっ付いてニャーンと甘い鳴き声を発していた。それを見ているとシオリと目が合う。ジッと黙って何かを訴えているかのようだった。黒猫の方はご飯を上げた形跡があったのでご満悦だ。
ライラはコンプレッションウェアとレギンス。フランと同じくスポーツをし易い格好だ。髪は邪魔にならないようにまとめている。そして逆立ちのまま、腕立て伏せをしていた。
三者三様。それぞれ個性があった。
「ごめん。帰るのが遅れて。夕飯すぐに作るよ」
ライラはゆっくりと力を込める。音を立てず静かに逆立ちを止めると、綺麗に立ち上がる。近くに置いていたタオルで汗を拭きながら言う。
「お気になさらずに。キョウにはいつも感謝してますわ」
ライラはふわりと微笑んだ。
「キョウ、手伝いますわよ。こう見えて料理は一度だけした事がありますわ」
それを聞いて負けじとフランも言う。
「食器を出すのは任せて。後アイディアを出すのもね」
グーとお腹を鳴らしながらシオリは言う。
「塩振るのと味見は得意」
(……出会う前、なに食べてたか気になる)
「ありがと。でも、休んでていいよ。準備は殆ど終わってるから」
「そうでしたか。流石はキョウですわね」
シオリは猫と遊び始め、フランとライラは着替えに行った。再び皆が集まる頃には三人と仲良く食事をした。
食後、ふかふかソファーでくつろいでいたらライラが隣に座る。
「一緒に映画でも観ませんか?」
(そういえば、この世界の映画は初めてだ)
「いいね。見たい」
「それでは準備しますわね!!」
映画などを配信しているストリーミングサービスを予め準備してくれていた。お菓子や飲み物を配置していると、フランが寄ってきた。
「たまには良いかもね。私も一緒に見る」
「え……そ、そっちでいつものようにストレッチをしてても良いですのに……」
「別にいいじゃないっ。ね、ねぇキョウ」
「え? うん、まあ」
「ほらぁ」
ライラはあからさまにしまったという顔をしていた。フランが珍しくしたり顔をしていた。よく分からないが楽しそうで何よりだ。




