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61 資金の心配は無し

 フランたちが正常に戻ったので、いつも通り学校に登校する。約二月くらいだが、皆の顔つきが少し逞しくなったように感じた。毎日ダンジョンに通い、鍛えたのだろう。まるで浦島太郎になった気分だ。


 同級生に「あ、生きてたんだ」的な目で見られた。男子の会話が聞こえた。


「おい、聞いたか?」


「フランチェシカちゃんだろ。今日来るって」


「でもスキルも魔法も使えなくなったんだろ……それって」


「後なっ。滅茶苦茶怖がりになったらしいぞ!!」


「ひょー。もしF組に来たら俺が(いち)から指導してやろうかなー」


「いいねー。手取り足取り教えてあげよう」


「ダンジョンで魔物が出たらキャっとか言って抱き着かれるかもー!!!!」


「まじかよー。最高だな!!」


「楽しみだァー!!」



(残念ながらその願いは叶わない)



 他にも女子数人のヒソヒソ話が聞こえる。


「あの子マジで調子に乗ってたよねー」


「貧乳のくせに生意気だしっ」



(いや、優しい良い子だろ)



「私の彼氏もあいつの話ばっかり。絶対媚び売ってるよぉ」


「うわっ酷いねあの女」



(えぇっ……酷い言いがかりだ)



「今日来るって。魔法もスキルもジョブも無くなったなんてぇwどんな顔してるのか楽しみー」


「ほんとそれっ。金持ってそうだから体育館裏に呼び出して装備揃えさせる?」


「あ、そうだ。ついでに土下座させよーよー。土下座」


「それいいよ。さすがミーちゃん!!」



(絶対無理だから……やめとけって……)



 先生が教室に入ってきたのでダンジョンに行ってきます、と言い残して教室を去る。ダンジョンに潜った後、家具を買いにお店に行く。お金はそこそこに持っているので奮発して高価な物を買う予定だ。




【先日・ギルドにて】


 ギルドマスターが非常事態の時に手伝いをしてくれた事の礼をすると言い出した。部屋に入ると、堂々と。しかし、機嫌を伺うように言った。


()()()君。出来る限りの事はするつもりだが……土地が欲しいとかはちょっと……」



(まだ何も言ってない)


「そうだ。ダンジョン資源の換金をお願いしたいのだが」


「そ、それだけでいいのか?」


「その代わり内密の取引という事で。人払いを済ませてもらえると助かる」


「もしかして、上代君とボスを倒した時に拾ったのか?」



「それはその時に全部彼女に持たせた」


 当たり障りのない程度の資材は時々レナに換金してもらっている。無名なのに高価な物を売ると何かと怪しまれるためだ。


(ギルドマスターにも深すぎる階層の資源を渡すのはまだ止めておこう。現実的な階層のやつだな)


 部屋が汚れるので場所を移動する。大型の魔物を解体出来る場所だ。隣には収納が出来る部屋も多数にある。


 収納魔法で鉱石や魔物の遺体など、今まで溜めていたモノを大量に取り出す。収納空間は時が進まないので腐敗などはしていない。


「……な、なんだこれ?」


「ダンジョンの魔物や鉱石……その他諸々」


「いやまて……いやっ、なんだこれっ? 何処から出したっ!?」


「内緒の取引……」


「……この鉱石。この魔石も、見たことが無いぞ……もしかしてミスリルやオリハルコンよりも……

おい何だこれ?」


「それと。ついでに査定もお願いしたい」



 ギルドの公式記録にある階層の魔物や素材だが、まだ見つかってなかったらしい。まるでアマゾンの奥地のよう。これだからダンジョンは面白い。


 ギルマスは頭を抱えていた。内密にこれだけのモノを同時に処理する事は不可能だと判断する。


「全て同時には無理だ……小分けしないとな。悪いが何度か来てくれ」


「分かった……」


(あ、やば……)


「ギルドマスター。()()()の鉱石なんですがね」


「鉱石がどうした? なにかー……」


 色々なモノに紛れてブラックリザードと巨大な人骨が出ていた。なので言葉巧みにギルマスの視線を誘導し、それ等をサッと収納する。しかし、運悪く普通にこっちを見てきた。


「おい待て。今ブラックドラゴンの遺体が無かったか?」


「いやぁ? ただのクロトカゲだが?」


「じゃあ何故今戻した? まるで隠すように」


 穏やかな口調だったが、顔はまったく笑ってなかった。


「……せ、戦士の名誉を守るため的な?」


「ぐ……」


 ギルマスはずるいと思ったが口に出さなかった。戦士の名誉のためなら仕方ないとそれ以上は追及しなかった。険しい表情で悩んでいたが、ある時を境に一変し、穏やかな表情になる。


 過去にブラックドラゴンを倒したというパーティー。彼等の証言には何処か違和感を覚えていた。彼等が得意気に話す戦術ではそれを倒せないと感じていた。そこを詳しく訊くが、肝心な部分が抽象的だった。そして、何より不可解だったのが証拠の素材(そざい)。つまり体の一部を何も持っていなかった。


 仮に力を付けた魔物が階層ボスを倒したならば、今度はその魔物がボスとして居座るだろう。しかし、彼等は階層を難なく素通りしていた。周辺の階層にもブラックドラゴンを倒したような魔物は居なかった。


 それ等は地形の破壊や傷などで判断できる。ダンジョンは再生するというが、正確に元通りになるわけではなく、壊れた状態から成長すると表現した方が近いかもしれない。その場所のみ時間が早まる感覚だ。


 そして今、ようやくそれ等の謎が解けた。ギルドマスターは何処かスッキリした様子で話を進める。


「問題は金だな」


「換金できないのか?」


「短期間に大量の金が動くと政府が勘付く。やはり小まめに換金するのが一番良いってことだ」


「なるほど。遺体の鮮度はずっと変わらない。マスターの案でいこう」


 納税はしっかりとする。それが違和感なく緩やかになるように調整する。一方ギルマスはその時間の概念を無視した発言にツッコミたかったが、それを呑み込んだ。


「……ふ、ふむ。だが魔石鉱石はそこそこ欲しい。調査に時間がかかる。先に調べていた方が効率がいいだろうッ」


「あ。ちょっと欲望が見えた」


 目を逸らし、そんな事無いですよアピールをしてきた。数秒後に咳ばらいをする。


「……今、日本は人材不足だ。上位はもちろん、それを支える探索者(シーカー)が全く足りてない。特に中堅のな。その為に人材育成をしたいのだが、政府が五月蠅くてな。これがあれば政府を色々と大人しくさせられる」


 もっともらしい理由を付ける。途中から威風堂々としていた。流石ギルドのマスターだ。


「そういうことなら構わない。ただし」


「内緒という事だろう……分かってる。私とて君の信用を損ないたくはない。ただ、黒霧(くろきり)とだけは話させてくれ。信用出来る人物だ」


「……分かった。よろしく頼む」


「こちらこそ」


 こうして俺は十分な資金を得たのだった。



誤字報告下さった方、ありがとうございます!! 修正しております。

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