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53 必死の説得

 解決出来るかは分からないが自然と笑顔になる。何度もお礼を言う。それが大袈裟だったのかお爺さんは驚いていた。


 後は怯える三人を説得するためにすぐに自宅に戻った。しかし、フランと上代には速攻で拒否された。彼女等はそれほど心に深い傷を負っていた。


 しかし、こっちも諦める訳にはいかない。何度も説得する。ライラの家にも行き、話をするが相手にしてもらえず。


「上代!! フラン頼む!! 一度でいいからっ」


「無理だよ……どうせ私なんかじゃなにも出来ない。弄ばれるだけの玩具(おもちゃ)……」


(不安な言葉だけど。フランが喋ってくれた)


 どうやらレナが頑張ってカウンセリングをしていたらしい。それを否定しようと会話を続ける。


「そんな事は」


「半月も無視して。どうせ私なんてその程度の存在」


「え?」


 そこで上代も話し出す。


「どうせ嫌われて避けられるなら。猫と居る方が良い」


 猫が呑気にニャーニャーと鳴いていた。


(上代も喋った。いや、喜んでいる場合じゃないな)


「そんな事はない。ずっと心配して」



 そこでレナが手招きをして部屋の外に呼んだ。


「何処行ってたの? 二人ともキョウを探していたよ。Connect送ったのに無視してぇ……フォロー大変だったんだから」


「あー。ちょっと旅に……」


「はぁー。女の子をほったらかして旅ねー」


「でも必要な事で……三人を治せるかもしれなくて……」



 連絡を入れ忘れた俺の言葉を念のため確認したようだ。レナは優しく微笑んだ。


「うん。三人の為だって分かってる。でも、とりあえず謝って誤解解いた方が良いかも」


「分かった……」


 魔力(マナ)切れの携帯を付けると、確かに通知が何通か来ていた。


「レナ先輩。二人のこと見ててくれてありがとう」


 レナにお礼を言った。すると彼女は優しく微笑んだ。その後、しっかりとフランたちには謝り倒した。


 そこからさらに半月後に二人の説得に成功した。決め手は一緒に修行することだ。ライラにもその戦法で説得を試みる。


「その前に家に入れてもらえないと」


 ライラの実家。豪邸に再び挑む。すると意外にもすんなりと中に通してくれた。部屋に入ると両親と通訳の魔道具が置いてあった。


「……君の素性を調べた。日本の学生が娘に何の用だ?」


「ライラさんの治療を考えて――」


「帰れ。とっくに最先端の医療魔法を駆使している。だが、それでもダメだった。その時の気持ちがお前に分かるか!!」


「発言は軽率でした、申し訳ございません……しかし、僕も引けません。治るかもしれないんです」


「……会った事は僅か二、三回程度。その程度の関係性で何故そこまでする?」


「上代と。友達と一緒に居る時……とても楽しそうだったから。あの笑顔を取り戻したい。お嬢さんは責任を持ってお預かりしますので……どうか」


「あなた。わざわざ日本から来て下さったのに。それにライラの判断に任せようって話し合ったでしょう。何をやっても無理なら、せめてライラのやりたいようにと……」


 途中で母親が泣きだした。それを見て父親も怒った表情が流石に困り顔になった。


「ッ……娘の判断に任せる。連れ出したくば説得してみよッ」


「チャンスを頂けるのですね。ありがとうございます」



 布団を被っている。上代たちと同じ症状だ。


「今度は誰ですの? もう嫌ですわ。実験台にされるなんて……」


「俺の事は覚えてるか? 上代の友達の」


「……キョウ」


「そうそう!!」


(彼女が一番症状が軽い。治療が僅かに効いているのか)



「貴方も私を利用しようと? それとも襲う気ですか?」


 とはいえ、闇魔法の影響でネガティブな発言が多い。奴の使ったそれは闇魔法の中でも外法と呼ばれるモノだ。


「どっちも違う。治療を受けてもらいたくて」


「触診がしたいのですか? 良いですわよ。もう慣れましたし」


「違うよ。自身で力を取り戻すんだ」


「……どうせ戻っても無駄ですわ。あの男には勝てませんわ。黙って従うのが賢明」


 ここで失敗したと思った。レッドクリムゾンは予測を超えて早く死亡した。奴を殺した事で、超える事が出来なくなった。早計だった。


 しかし、奴を放置する訳にもいかない。ただ捕まえるだけでは自力で、もしくは仲間が手引きし、脱獄する可能性があった。だからあの決断をした。


(嘘でも良い。彼女に力を……)


「俺はLV4になったばかりだ。そんな俺が一人で。半年も経たずでLV10になったらどうする?」


(さらば……F組……)


「最近4に上がった方がそんな短期間に……非常に厳しいかもしれませんわね」


「一緒に修行してそうなってみせる!! だからもう一度挑戦しよう」


「……何度もここに来たそうですね」


「頷いてもらえるまで来る予定だ」


「……何故そこまで?」


「好きで好きでたまらないからだよ。あの――」


「本当ですの? その言葉」


「笑顔がっ……え? あ、うん。必ず取り戻すって決めてる」


「分かりました。一度だけ。もう一度だけ信じますわ」


「ほんとに!!」



 ライラの付き人の力を借り、三人を車で目的地に連れていく。彼等は一室を借りて、目立たないように護衛の任務をこなす予定だ。黒猫はレナに預けた。


 車は途中までしか入れない。最後は歩いて山道を上る。山頂付近の小さな屋敷に老人が立っていた。渋い顔のお爺さんが急に態度を改めデレデレの笑顔で歓迎してくれた。


「揃いも揃ってべっぴんさんじゃな。外は冷え込む。さー入った入った」


(あれ。なんか雰囲気が。人が変わった?)


 渋い雰囲気を捨てたお爺さんが皆を集める。


「まずは何を?」


「滝行じゃな。身を清め。心を無にする。もう一度自身を見つめ直すのじゃ!!」


 こうして自身の闇を祓うための修行が始まった。


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