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49 迫りくる悪夢

 校長が去って少し経った頃、その男は現れた。レッドクリムゾンは動揺する。何処からともなく現われたそれ。まるで認識できずに、ここまでの接近を許したからだ。


 冷たい声が廃墟に響く。普段の彼を知っているものなら誰もが驚いたであろう。


「お前がレッドクリムゾンか?」


「そうだ。そういうお前はデッドか?」


「ああ……」


「待っていた。お前を倒し。目の前でシオリをおかッ……」


 デッドと名乗る男はそれを無視して、何処からともなく取り出した大きめの布を三人にかけた。近くにいた三人はいつの間にかレッドクリムゾンから距離が離れていた。


「遅れてごめん……すぐに終わらせる」


 しかし三人は怯えているだけで反応はない。その様子を見てさらに怒りが込み上げる。



 レッドクリムゾンは自分を無視したその舐め切った行為に激怒したが、それは敗因に直結する事をしっている。彼は一度感情を抑えた。


「手品師如きが俺と戦おうってのか?」


「戦い? 悪いがそうはならない。お前が弱すぎるからだ」


「ッ貴様っ……ふん、俺を挑発するとは馬鹿な男だ。おい、教えた通りに言って見ろ」


 離れている三人は口をそろえて許しを請う。


「私はご主人様の物です。絶対に逆らいません。お好きなようにしてください。全て受け入れますので」


「ご主人様、大好きですわ」


「早く終わらせてご主人様。知らない人よりもシオリと遊んでください」



「だ、そうだ? お前の事など覚えてないらしいな。薄情な女共だなぁ?」


「闇の魔法か。下らない……精神を弱らせて強制的に言わせてるだけ。洗脳と同じ行為」


「はっ。知ってたか」


「ああ、嫌って程にな……」


「その眼……勘違いした偽物の天才とは少し違うようだな。ククク、喜べッ。お前も()()コレクションに加えてやろう!!」


「凄いよお前。心の底に沈めていた傷を呼び起こすなんて……お前は二度と地上に出られないようにしてやる」



「地上? ここが地上だろッ。訳の分からん事を……ああ、ダンジョンに連れて行くって事か?」


「……」


「お前の。いや、もう誰の指図は受けねぇ!! やれるもんならやってみろよォッ!!?」


 <ヒール>でライラの付き人たちを治癒する。そして次の瞬間、レッドクリムゾンの部下達と共にダンジョンの深層に転移した。辺りの景色が完全に変わっていた。誰もが困惑した様子を見せる。


「……は?」


 辺りを見渡す。知らないダンジョン。不気味、恐怖。あらゆる負の感情が制御出来ず、自然と鳥肌が立つ。男はそれに気が付かないフリをした。


「何をした? 幻覚か?」


「273階層に転移しただけだ」


 レッドクリムゾンは怪訝な表情をした。数秒ほど沈黙した後に言う。その発言を馬鹿にしようと思った。しかし、口から出たのは明らかな不安と動揺だった。


「な、何を言って……幻覚の魔法をそう思い込ませようとしてるだけだろっ。下手くそな芝居だ。そんな階層は前代未聞どころじゃねぇ。存在しな……っ」


 男は言葉を途中で止めた。突然空が暗くなったからだ。上を見上げると巨大な青いドラゴンが居た。しかもそれは一体ではない。複数体が悠々と辺りを飛行していた。


「なっ、なんだとぉ!!」


 恐ろしい雄叫び共にブレスをまき散らす。辺り一帯が凍結する。男の部下たちが一瞬で粉々に砕け散った。レッドクリムゾンだけは魔法障壁で守る。ドラゴンは何かに気が付くと急いで離れていった。


「ッあり得ない……一体じゃねぇ!! ドラゴンがこんなにッ。こんな事がッ」


「即死した方が幸せだったかもしれないな」


「ふ、ふざけるなよぉッ!!」


 レッドクリムゾンは加速し、急接近してデッドの体に触れると嬉しそうに吠えた。


「ハハハハ!! これでお前の力は俺のものになった!! ざまぁみろ!! これが俺の強奪の力だぁ!! 俺は今ぁッ。最強になったんだぁあ!!」


 はしゃぐ男を冷たい眼差しで見つめる。そして、男は気が付いた。


「ハハ、ハ……な、なんだー……力が……?」


「違うだろ? お前の能力は()()()()()。強奪に見せかけてるだけで実際は消えていない。絶望を与え、闇魔法を通しやすくするための虚言に過ぎない」


「な、何故それをっ。強力な隠蔽魔法をっ。そ、それよりなんでコピーできねぇ!!」


「対策ぐらいはしてる。そんな能力持ち、異世界には数え切れないほどいる」


 無意識だっただろう。彼は一歩二歩と後退りをしていた。目の前の男の脅威になす術がなかった。


「い、異世……そうかお前も!!」


「知ってて対策を怠ったのか? 遊びに付き合ってる暇は無い。それ以上何もないなら終わらせる」


 遊びだと言い切られて目を見開く。彼は激昂する。


「ク、クソがぁぁあッ!!」


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