47 異常事態
探索者ギルドに事件の関係者を届けた。やる事を終え休憩も兼ねて、とある建物の屋上で考え事をしていると、キョウの下にカラスが一羽飛んできた。
「鳥か。ん、こっちに来てないか? はは、そんなはずないか」
冗談で腕を出すとそこにとまった。
「うそぉ!!」
脚に金属の小さな筒が取り付けてあった。
「カラスじゃ伝書出来ないだろ……なんかの能力か?」
それをパカリと開けると手紙が入っていた。そこには謝罪と何処かの位置情報が記載してあった。
(……これは……)
魔物討伐が落ち着いてきた頃、フランの下に一人の女性が近づいてきた。一瞬ファンかと思ったが違うと感じた。何処か怯えていたからだ。
「あ、あの!! これを……ッ」
手紙を渡された。渡したと同時に走り去っていった。
「あっちょっと!!」
読んでみると衝撃を受ける。
(シオリが攫われた? 冗談でしょうッ)
誰かに言ったり、一人で来なければ人質を殺すとあった。
「フランチェシカ。どうした?」
「あ、ちょっと。少しの間、パーティーを抜けて良い? 用事が出来ちゃった」
「だいぶ落ち着いてきたしな。もう大丈夫だろう」
「悪いわね」
「いや、本当に助けられた。日本の探索者じゃないのに。ありがとう」
「困った時はお互い様よ」
別れた後、フランがとある廃墟に駆け付ける。しかし、誰も居ない。強い口調で呼びかける。
「いるんでしょう? 約束通りシオリを解放しなさい!!」
陰から服がズタボロのシオリ。そして、フードを付けていない男が現れた。彼女には首輪と紐が付いているだけで特に手足は拘束されていない。そこに違和感を覚える。しかもそれだけではない。彼女は泣いていた。まるで子供のように。まるで別人のように。
「何をしたの?」
「なぁにっ。俺に忠誠を誓っただけさ」
フランはその声に聞き覚えがあった。すぐにこの前の襲撃を思い出す。
「シオリが? ふざけないで」
「おい、土下座しろ」
「はっはい!!」
そう言って上代が膝を突く。それをフランが止める。
「止めなさい!! どうしたのシオリ!! らしくない!!」
一瞬フランの方を向いたが、すぐに目を逸らしてそのまま土下座する。
「も、申し訳ございませんッ。許してください。何でもしますっ」
「シオリ!!」
「靴を舐めろ」
「はい……」
男の言われた通りにそれを実行した。不快感を覚えたフランが男を睨み付ける。
「薬……いや、魔法で何かしたのね。どうやら少しキツイお仕置きが必要みたいね」
「ククク、お前も直にそうなる。おら邪魔だシオリ」
レッドクリムゾンが上代を蹴とばすと弱弱しい悲鳴を上げて地面に転がった。
「終わるまでそこで尻でも振って床でも舐めてろ」
「は、はいっ喜んでっ」
「あんたっ!! 絶対に許さないッ」
そこで配下らしき男達が奥からゾロゾロと出てきた。彼等は協力して大きめの袋を上に放り投げる。
それをレッドクリムゾンがフランの真上に来た辺りで割る。すると大量の粉が降り注ぐ。フランは瞬時に状況を判断し、<アイスウォール>で自身の周囲を覆い、粉末を浴びるのを防いだ。彼の部下の方が麻痺で数人倒れ、自滅した。
「ふんっ。卑怯な男ね……どうせそんな事だろうと思った。シオリがあんた何かにやられるはずがない」
「卑怯とは心外だ。俺は戦いをしてるんだ。そこらのガキがやってるお遊びとは訳が違う」
粉が飛散するのを防ぐために氷の水滴で湿らせると、氷の壁を解く。そこでレッドクリムゾンの部下たちが一斉に襲い掛かる。<アイスニードル>で正面を、<アースグレイブ>で地面から円柱を出して彼等に攻撃を仕掛ける。
「シオリ……相当油断したみたいね。この程度の奴等にやられるなんて……」
「クク、お前がな」
フランは思わず顔を歪めた。背後から声が聞こえたからだ。動きが前とはけた違いに速かった。振り返りながら剣で背後を攻撃するが、近すぎるせいでそれは上手く機能しない。腕が加速しきる前にレッドクリムゾンに腕を掴まれ、そのまま押さえ込まれた。
「クククっ。頭に血が上りすぎだぜ」
その言葉と同時に腹部に激痛が走った。拳を叩きこまれ膝から崩れる。
「ぅぐ……っ」
「さあ、お前も服従しろ」
「誰があんたみたいな屑のッ。何でも思い通りになると思わない事ねッ」
「いいねェその表情。ククク、そそるぜ……」
誤字報告下さった方、ありがとうございます!! 修正しております。




