40 ギルマスと校長
警察のお偉いさんが数人ほど集まって会議していた。
「探索者育成高等学校で死者が五名。行方不明者が一名ですか……その他の学生や、不良グループが八名。計13名も殺害されてます。高圧的な人物が多い印象ですね」
「最初の犠牲者が二年F組か」
「この行方不明者も同級生にですね。既に殺害されている」
「……もしくは犯人の可能性が高い」
その写真に全員が注目する。
「二年F組。赤宮真躯、か」
「引き続き捜査を開始。もう一つ、彼を探す班を作れ。腕を犠牲にしたとはいえ、あの黒霧から逃げ切った男。油断するなよ」
「はい、心得てます」
「それと、あくまで行方不明の捜索で情報収集をしろ。マスコミには事故の線も追っている、と。余計な事は言うなよ」
「はいッ」
警視正の男が別室に移動した。そこには探索者ギルドのマスターと学校長がいた。40代ほどの男が二人。警官の質問が丁度終わったところである。校長は不安そうに警察に問う。
「あ、赤宮君は見つかるでしょうか……」
「必ず見つけてみせますよ。ご心配なさらずともきっと無事に帰ってきます」
「なのでご協力ください。どんな生徒でしたか? 特徴をもう少し教えてください」
「彼の担任に聞いた話ですが、LVが低く。それがコンプレックスだったようです。ジョブは魔法使い。ソロでダンジョンに行くことが殆どだったみたいですが」
「他には? 話してる途中に思い出した事でも、最近変わったことでも何でもいいですから……」
「他にー……ですか」
「……例えば異世界だとか口にしてませんでしたか?」
「……? 異世界? いえ、特にはそんな話は聞いてませんが……担任もそのような事は言ってなかったと。このタイミングでそんな突拍子もない事を。何か異世界が関係あるんですか?」
「いえ、今のは忘れてください。リラックスさせようと冗談を言ったまでです」
「そ、そうですか」
数十分後に校長とギルドマスターは別々に部屋を出た。校長が外に出るとさっきの緊張した様子とは別人。欠伸をして頭をかいていた。暫く歩いていると人通りの少ない道、壁に寄りかかった男から声をかけられる
「本当に知らないのか?」
「ギルマスか。知らんよ。その質問をされたのは二度目だ」
「総監にもか?」
「ははは……それで、黒霧君には話したのか?」
「ああ、一応説明はした。驚いていたよ」
「だろうね」
「話を逸らすな。お前はそういうのに詳しいと思うのだが……」
「詳しくはないよ。ただ数人ほど、異世界人に会った事があるだけだ」
「赤宮もその類ではないのか? 黒霧を撒いたほどの相手だ」
「さてね……彼等はこっちに来ると、何故か力と正体を隠したがる」
校長は真剣な表情でそれを思い出すように語る。
「もぉ~~~こっちの魔物退治も手伝ってくれよぉー~~~~っ」
さっきまで真顔だったおっさんが急にくねくねと動き出した。
「言動がウザい。ダンジョン内だったら危うく殺してたぞ」
「ひどっ……」
「しかし、それには同意する。探索者は常に人手不足だ」
「だろうなー。っと話を戻して」
(お前が変な動きをするからだろうに)
「確かにその性質上、F組に生息する可能性が高いが……赤宮は違うと思うよ。だが異世界人が赤宮に関与した可能性は高い」
「根拠は?」
「勘だ」
「ふぅー。そういう輩の勘とやらは何かと当たるからな。非常に助かる」
「そういう星に生まれてきたのかもな」
「……ふむ。否定は出来ない。そうだ、ついでに聞いておきたかった。デッドやギルティ……奴等もか?」
「恐らく……デッドの方に至っては確実に黒霧より上だ」
「はぁー。名乗り出てくれんかねー」
「それより今は一年の方が気になるな」
「一年に何かあるのか?」
「二年のF組の子が突然にA組に上がった。その子が一年の最弱で有名な子にご執心のようだ。もし彼がそうだとしたら、短期間でLV上げの手伝いをした事になる」
「手伝い……こちら側か、それとも……思い切って試してみるか?」
「お、珍しくノリが良いね~。誰か適当な人貸してよー」
誤字報告下さった方、ありがとうございます!! 修正しております。




