39 代償
「……」
カムイは男のその言葉に答える事なく、刀を構えた。危険な思考。早く止めを刺すために。そこで男はギョロリと不気味にカムイを見た。一瞬近づくか迷いが生じた。
「<オーバドライブ>……ッ」
「!?」
瞳が赤く変化する。彼の体から蒸気のような煙が立ち昇る。そして右腕で左腕を掴むと痛みを分散させるように雄たけびをあげ、そのまま自身の腕を引きちぎった。
「なにを……」
「くははははは!! 供物だぞ!! 力を貸せ!!」
「肆式<風切>」
カムイは接近する。レッドクリムゾンの首を切り落とすために刀を振る。しかし、何処からともなく男とも女とも分からない人型の魔物が現れた。腕を出すと固い皮膚で刀を止められた。一旦距離を取る。
「やれやれ、このレベルの相手に腕一本とは……足りないよ。ご主人……」
「MPもギリギリまで差し出したっ。時間を稼ぐだけで良いッ」
そう言って彼は迷わずに屋上から跳んで逃走する。
「本当に悪魔使いの荒い……」
「待てっ」
「おっと、ここは通さない。俺を倒してからってやつだね」
悪魔を自称する者が闇の魔法を使用する。複数の黒い剣。それ等が宙を舞いカムイに襲い掛かる。それをかわして刀を一度収めた。
「黒霧神威。参るッ」
「ははは、律義な人間。おもしろーい」
フードの男、レッドクリムゾンはひと気の無い路地裏のドアに入る。歩きながら治癒魔法、<ヒール>を使い、引き千切った部分を止血する。そこの隠し扉に地下へと続く道があり、そこに入っていく。その時、彼は驚いた表情をみせた。
「!!? この感じ。もうやられたのかッ。黒霧……本当に恐ろしい男だ」
狩りのやり方を変えなければならない。さらに力を付けるため、再び闇に潜み機会をうかがうのであった。
カムイは訝しげにそれを眺めていた。悪魔はバラバラになり地面に伏して尚、不気味に笑っていたからだ。
「召喚の類か。あの男の目的はなんだ? どうやってそれ程の力。スキルを手に入れた?」
「それが知りたきゃMPくれよー。そしたらぜーんぶ教えてあげるよぉー」
「断る」
「ケケケケ、分かってるじゃないかぁ。悪魔のこと」
会話にならない事を察し、止めを刺そうと近づく。
「あ、そうだ。ご主人のことじゃないからこれは言ってもいっか。ここではない世界~。そう、この世界には異世界人がいる……何処かに潜んで、何かを企んでいる。強い強い力を持つ……怪物だよぉ、けけけ」
その言葉にカムイは眉をひそめる。
「世迷い言を……」
「フフ、なんで止めを刺さないの? ねぇ、まだききたーい?」
「……」
「キャハハハハ!! おしえなーいっ」
その瞬間、悪魔は粉微塵になる。そして、蒸発するように消えていった。最後まで笑いながら。
「異世界人……?」
彼は首を横に振る。そこで立ち止まるのは無意味だと判断する。そして、完全に見失ったので報告へと戻った。
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