25 学生と探索者の違い
留学生のフランチェシカは一年A組の生徒と十人のパーティーを組んでダンジョンに潜っていた。
古代の森の浅い階層は順調だったが、13階層から進まない。
「凄いっ。フランチェシカさんのおかげでこんな深い階層までまで来れた」
「一、二階層でもきついのにっ。新記録更新だ!!」
「学校で自慢できるぜ!!」
フランチェシカは目を丸くした。
「えっ……いや……ここは36階層まで制覇しているんでしょ。まだまだこれからなのでは?」
「っていっても……LV10だしな。フランチェシカさんも凄いけど、制覇している人たちの火力はもっと凄いんだ」
フランは氷の魔剣に特注のミスリルシールドを装備している。ルーンガーディアンというジョブで重戦士に近く、敵を引き付ける戦い方をする。
(確かに私はアタッカーじゃない。少し時間はかかるけど、動画を見た感じでは20階層付近までなら余裕で行ける。上手く行けば30階層だって到達可能。私が魔物を引き付ければこのパーティーでも25くらいまでは行ける……)
しかし、彼等をよく見ると顔色が悪い。フランは失望した表情を隠し、優しく告げる。
「そろそろ私も限界。戻りましょうか」
「賛成ー!!」
「もっと俺たちの戦いを見せたかったんだけど、フランチェシカさんがそう言うなら」
「もう十分な成果を上げたしなっ!!」
(やはり学校で得るモノなんてなにも……)
翌日、学校にはダンジョンに向かう事を告げた。ギルドを訪ね、熟練の探索者たちを募集する。目標は35階層。ボスの一歩手前だ。
珍しい海外シーカーに興味を引かれ、すぐに人は集まった。急遽なので大体SからBランクまでの十人が集まった。
ステータス的には十分だと感じたが、実際ダンジョンで戦闘をこなすと、連携が少し物足りなく感じた。それでも尚、30階層まで一気に突破できた。
「米国の天才少女、すげーな」
「フランチェシカがいるだけで死ぬ気がしない。後ろに目でも付いてんのかぁー」
「慣れれば誰でも出来る。それに貴方たちも良い連携。もう少し積極的にパーティーに参加すればもっと良くなる」
「ひゅー。お世辞でも嬉しいね」
「そう言われると乗せられたくなっちゃうな」
30階層、かつてここに植物の階層ボス、アルラウネがいた。今は微塵もそれを感じられない。高台からその場所を見渡す。
「あの化け物を二人で倒したなんて、信じられないよなー」
「その魔物は傷ついて弱っていたと考えるのが妥当ね。でも、ここに来るまでにこっちもかなり消耗してる。やっぱりどう考えても普通に戦って勝つのは無理……」
「ははは、俺たちも同じ気持ちだよ。膨大なMPでもない限り不可能だ。未だに疑ってるくらいだ」
「膨大なMP、か。そうね。確かにそれならやり方によっては可能そうだけど……」
「だけど?」
「たとえ、無限に近いMPを持ったとして、ただの蛇口だと意味が無い。それに敵の状況に合わせて複数の魔法を同時に、そして正確に操る技術がいる……」
「MPを活かす程の高い魔力と高い技術が必須か……」
「しかもそれだけじゃ足りない。少人数だと余裕がまったくないからね。瞬時に最適解を出す力。その答えを信じ、迷わず実行し続ける精神力。一手でも間違えたら簡単に死ぬでしょうね。それなら探索者のレベルを落として人数を集める方が現実的……」
「……強く同意するよ。二人なんて馬鹿げてる」
(そう、威力という一点だけならシオリはもしかするとクリア出来るかもしれない……でもそれ以外は……それ以外をカバーできるほどの人物がいるとは思えない。どの国であっても)
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