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24 エンカウント率高いな

 古代の森33階層のボスを討伐してから二日後。リビングで優雅にホットウォーターを飲んでいると、隣でドンと何かを叩くような音が聞こえた。何か騒いでいる様子。


 少し驚いたが、それ以上は深く考えない。テレビをつけると、上代が出演していた。


「今回は何とッ。古代の森、33階層のボスを倒したということですが。上代さんは二回連続の撃破ということでッ……これは前代未聞!!? 歴史に残る快挙っ!! 今のご感想の方はッ?」


「強かった」


「……はいっ、ありがとうございます!! もう一人の主役ライラさんはご都合が合わず来られないとのことです。非常に残念ですが、なんと!! コメントを頂いております。えー……」


「ジャイアントポイズンスネイクは巨大な階層ボスである。その巨大さもさることながら、もっとも恐ろしいかったのは、ボスに迫るサイズの取り巻きが10匹おり、同時に襲い掛ってくる事。極めて凶悪なボスで、人生で一番苦戦した」


 そこまで聞くと出演者が各自にリアクションを取っていた。共通なのは皆がこわばった表情をしていた事だ。続けてコメントを読み上げる。


「パーティーメンバーと共に激戦を繰り広げた。あともう少しで倒せるというところで、強力な衝撃波を周囲に展開し、さらに毒を飛散させ、パーティーを壊滅の一歩手前まで追いやった。しかし、幸運にもこれに対処出来たデッドのスキルがあったからこそだ、命を懸けた一斉攻撃により、終に倒す事が出来た。我々は勝利したのだ。とても強かった」



(あの蛇、そんな名前だったんだ。っていうかパーティーってところが上手い。なんか多い気がするからな。流石ライラさん、ありがとう)


 その後に巨大な遺体の写真が映る。スタジオから恐怖の声を出す演出があった。


「またしてもデッドが現れました。彼はいったい何者なのでしょうか」


「強い……男……」


「……はい、ありがとうございます!! これもライラさんからコメントを頂いております」


「デッドは正体不明のフードと仮面を付けた男である。突然現れ、いつの間にか消えていく。まるで妖精のようだ。インビジブルソードは見えなかった。一番重要なのはとても優しい殿方です。だそうです!!」


「新階層に謎の男。これからの進展が楽しみですね。お越しいただきありがとうございます。以上です。他の目撃情報があれば是非、気軽にご連絡くださいっ。お待ちしております」



 もしかして評価が変わったのではと検索してみる。


-----


デッド ライラ交際

デッド 上代交際

デッド 二股

デッド 毒以外の殺し方

デッド 刺されろ

デッド 森の妖精

デッド スキル何

デッド インビジブルソード162万円安い?

デッド 殺したけどなんか質問ある?

デッド 懸賞金999万

デッド 魔物説

-----



(こんなもんだよな)



 買い物に出かける。ミリタリーショップがあった。詳しい訳ではないが、この世界ではどうなってるのか気になったので入る。


 銃は存在している。そこには魔法銃というジャンルが増えていた。装備もダンジョンで普通に使えそうなモノばかりだ。


(は~。凄い数だな。性能はよく分からないけどカッコイイなー)


 素人の観点で店を見回っていると、見知った女子が店員に話しかけていた。


(上代か。なんでこんな所に?)



「これ。どのくらい凄い?」


「お嬢ちゃん、ガスマスクなんて渋いもの買うねぇー。見ての通り、口や目を守れる。防塵、液体を一切通さない高性能マスクだ。MPを消費してさらにフィルターの性能を高められる。数回で詰め替えが必要だけど、皮膚から摂取した毒物を浄化する機能もある。高いモノだと浄化できる種類が増える。軽量で使い勝手も良い、人気商品だね。ただ高いんだけどね」


 少し早口気味に説明をしていた。


「大丈夫。それ欲しい」


「それじゃあ、必要なモノを集めてくるから待っててね。それの組み合わせを決めてから値段を計算するよ」


(へー、色々なオプションがあるのかー。わくわくするやつだな)


「後、色々な毒物の対策をしたい」


「ど、毒物の対策ときたかぁ。さては熟練の……あっ、もしかして上代さんっ……!! ちょっと待ってね。色々良いのを持ってくるからっ」


 ウキウキの店員が店を歩き回っている時、暇になったのか、こちらと目が合った。


「なんか思い出した?」


 本当に初対面の時の約束を覚えていたらしい。


「とくには、あの時の情報が全てだったみたいだみたいですね。すみません」


「そう……」


 上代は首を傾げる。ゆっくりと左右に動いている。色々な角度でこちらを見つめる。すると急に携帯を取り出して、電話をかけ始めた。


(ん? ッ……!!?)


 すぐに気が付き、隠蔽の魔法をかけた後に、自分の携帯を防音の魔法で包む。


「ど、何処に電話を?」


「教えなー……ダンジョンにいる仲間。いつもはすぐ出てくれるのに出ない」


「……い、忙しいんじゃないんですかねー」


「……思い出した。ダンジョン内は電波が届かない」


「あ、確かにそうでしたね。忘れてました。あははは。きっとダンジョンでもの凄く頑張ってるんですね。後からでいいんでは?」


「でもコールが鳴ってるから電波届いてる。ダンジョンに居ない。きっと誰かと話してて、忙しいから電話に出られないのかも」


(ひぇぇぇぇ)


「さっきから適当に合わせて、話逸らそうとしてる?」


 携帯を鳴らしながらゆっくりと近寄ってくるので、それに合わせて後退りをする。


「そんな事は。あ、早く買い物済ませないと母さんに怒られる!! それじゃまたッ」


「携帯持ってる?」


「いえ、家に忘れて来ました。う、うっかりだー」


 心なしか携帯を入れている位置をピンポイントで見ている気がする。


「私の事知ってる?」


「……テレビで見かけたことが……」


「私も……私を極端に避ける人。知ってる」



「ひ、人見知りなもので……俺は……」


(この直感こそが天才たらしめる気がしてきたッ)



「ごめんねぇっ。結構待たせて。色々と持ってきたよ」


 そこで一通りの商品をかき集めてきた店員が声をかける。彼女は振り向いた。その隙に死角に入り、隠蔽魔法使いながらカメラを闇魔法で妨害。さらに空間転移を使おうとする。しかし、寸前で思い至った。


(いや、追いかけてこないのはわざとか!! 上代は特殊なサーチも使えるはず。突然消えるのは不味いッ)


 走ってその場から逃走する。上代はその不自然な動きをジッと見ていた。その後、お茶やコーヒー。食料を買い込んだ。


(急に携帯を出した時はビックリしたー……)



 買い物を済ませて帰宅した。



誤字報告下さった方、ありがとうございます!! 修正しております。

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