17 リーダーの焦り
満月の夜は近い。明日からは魔物が強くなる可能性がある。ダンジョンには入らず、のんびりと過ごそうと思い。目覚ましをかけなかった。いい夢が見れそうだ。
クラス替えの行事。ダンジョン探索は三日目に突入していた。ソイヤのパーティーは四階層にいた。さらに奥へと進んでいく。
「おい、ソイヤ。ちょっと流石に進み過ぎじゃないのか?」
「大丈夫。この期間で分かった事は、先輩が沢山いるって事だ。上位クラスを目指すために魔物を狩りつくしているから、自然と難易度が下がるって訳だな。これを利用すると階層到達とLV上げを両立出来る。この好機を逃す手はない。この波に乗って三ヶ月も潜れば10階層だって夢じゃないッ」
「確かに日を追うごとに魔物の数は少なくなって、狩りやすくなっていってる。戦闘の熟練度も上がってる気がするぜ。流石ソイヤ」
「やっぱり頼りになるね」
「このまま先輩みたいになっちゃおう!!」
「ハハハ、それは調子に乗りすぎだってマコー」
「アハハハ。ごめん、ごめんっ」
「……しかし、今日は先輩が少ない気がしないか?」
「まあ、早朝だしな。直に増えるだろう」
五階層に到着する。慎重におびき寄せて狩りをする。撃破に何度も成功し、確かな手ごたえを感じていた。
魔物を倒し、スカウトが次のターゲットを探しに行こうとしたその時、奥の階層から数人が走ってきた。恐怖に満ちた表情。かなり慌てていた。
「何かあったんですか?」
「逃げろッ。中ボスだッ」
「なっ!! こんな階層になんで!!」
彼等は二言目は何も言わずに走り去った。
中ボスとは。階層ボスを倒した後にも強い個体の魔物が発生する事がある。群れの争い、探索者や他の魔物等を倒し、強くなる。下の階層から登ってくる場合もある。ただしステータスや戦闘技術はボス程ではない。
その理由は探索者が定期的に、中ボスになる前に狩るからだ。階層を綺麗にする。それも探索者の仕事の一つ。
「に、逃げよう!!」
「バラバラに逃げても危険だ。ここは陣形を組もうっ」
奥から走る音が聞こえる。一つではない複数だ。スカウトが遠目に魔物だという事を確認する。
「う、うわぁぁああ」
魔法使いが魔法を放つと同時に背を向けて走る。陣形など知らないとばかりに。一人が走ると釣られて皆が走った。
「何でも良いから逃げるぞ!!」
一番後ろでアヤコがこける。折角自分が作った時間を無駄にされて、魔法使いの男が思わず怒鳴った。
「何やってんだバカッ」
「た、助けてっぇ」
スカウトの女子が辛い選択を言葉にした。リーダーに最後の判断を任せる。
「ソイヤっ。もう無理よっ。全滅だけは避けないとッ」
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