14 通話初心者
上代とダンジョンボスを倒し、数日が経った。朝のテレビを見ていると彼女が出ている。何となくステータスを確認するが視えない。当然と言えば当然だが試してみたくなった。
「古代の森、あの30階層のボスを倒したとのことですが。上代さん今のお気持ちは?」
「強かった」
「……」
その先の言葉を待つ。彼女を見つめてもボーっと見つけ返すだけで続きは無い。
「あ、ありがとうございましたっ。素晴らしいコメントでしたね!!」
慌てていると視線が動く。動揺してカンペを見ているのがバレバレだ。
「上代さん。それでは今一番意識している同世代のライバルは誰ですか。やっぱり海外探索者、ライラさんでしょうか? 出来ればいないとかは無しの方向でぇー……」
「デッド」
「……え? こ、故人ではなく……そのぉー、何と申し上げればいいでしょうね。えー」
「デッドって名乗ってる男」
「!!?」
記者らしき人物は動揺する。
「聞いた事のない名ですが、何者ですかっ?」
「私と同じ魔法剣士。底が見えない男の人。常に目隠しをされてる感じ。硬いか柔らかいか分からない。如意棒みたいなモノで……血が出た。だから剣かもしれない」
インタビュー慣れしてないコメントだった。心臓に悪いのでテレビをピッと消した。お昼ごろにふと思い出しデッドを検索した。
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デッド 上代交際
デッド 懸賞金500万。精鋭50人募集
デッド 殺す
デッド 変態野郎
デッド 遺体。上代歓喜
デッド 絶対に許さない
デッド 消す方法
デッド インビジブルソード40万円高い?
デッド デッド
デッド 偽物
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(不吉なワードしかない……あっ、そうだ)
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ギルティ イケメン説
ギルティ 最強
ギルティ 穏やかな心
ギルティ 死亡幽霊
ギルティ 量産型
ギルティ 聖女男装
ギルティ 何者
ギルティ 大罪を背負いし者
ギルティ ハゲてる説
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(すごい温度差だ)
タイトルがデッドの動画があったので、見てみる。仮面を付けた男が映っていた。
「俺がデッドでーす。シオリンと交際してますぅー。どうぞよろしきゅー」
「えっ。〇すって? おーけ。じゃあダンジョンに来いよ。このインビジブルソードで返り討ちにすっからっw」
「何処にも無いって? 知らねぇのかよ情弱。見えねぇんだよ、だからインビジブルソードな訳?
分かるぅ僕ちゃん?w」
「いいよ。だから来いって。どうせ来る勇気ねぇんだろうけどなぁ!! キャハハハハ」
すぐに動画を見るのを止めた。
(めんどくさっ。もうデッド名乗るのひかえようっと)
上代に電話した。音声はデッド仕様。ダンジョンに行ってるのか、コールを続けても全然繋がらない。切ろうかと思った時、通話が繋がった。
「ひゃい!! あっ……え? もしもしっ? もしっ」
「上代? 話があるんだけど」
大きな音が鳴る。どうやら落としたようだ。
「アアアーーーー」
「……忙しいならかけ直そうか?」
「大丈夫……大丈夫」
「大丈夫?」
「大丈夫…………何?」
(お、いつものトーンに戻った)
「デッドってのはもう名乗らないから。エクスと名乗る事になった」
「半分知ってる」
「え、マジ?」
「やばい組織に追われてるって聞いた。白づくめの女に薬で体の一部を大きくされて海に沈められそうになったって。今は下水道で震えながら暮らしてる。だから名を捨てた」
「それ嘘情報。普通に暮らしてるよ。そうだ、迷惑になってたら番号消して良いから」
「やだ消さない。変える時は教えて」
「……まあまあまあ。えっと、誰かに番号教えたりした?」
「してない。絶対言わない。私がデ、エクス倒すから」
「助かる。これからも俺の番号は言わないでほしい」
「うん、言わない」
(大丈夫そうだ。仮に俺の家に来ても対処は可能だけど。手荒になりそうだから出来るだけやりたくはない)
しかし、やはり心配になった。際限ない悪意、そこから変な事になって上代が落ち込むのも嫌だしな。隠蔽や阻害の複数魔法を使用した。
「ごめん。確認したかったのそれだけ」
「分かった。いつもは何処で狩ってる?」
「……おいおい話す」
「分かった。嘘だったら不意打ちする許可欲しい。二秒以内に返事がないと了承って事で」
「ぇ……だっ」
断る前に切られた。五秒後、電話がかかって来た。
「もしもし……上代?」
「特に用はないけど。電話の練習。あ、LV34になった」
「おめでとう」
すぐに切られた。その後、用のない電話がちょくちょくかかってくるようになった。
(さては気力を削いで不意打ちする気だな)
先ほど動画サイトを見たらダンジョン攻略、魔法会得方法、便利な魔法等があった。後で参考にしよう。
竜の巣窟で待っているとレナが現れた。顔を見るなり笑顔でこっちに来た。
「ねぇデッド。凄い事になってたね」
「……ちが」
「いや、流石にインビジブルとか記載されてたら気が付くよ……」
事情を一通り話した。レナと組む時にはゴブリンソードではなく、普通の鉄の剣にした。これは上代対策だ。学校でも飛鳥の時は支給品の剣を使用する予定だ。
「大変だったんだね……私で良ければいつでも相談に乗るよ」
「ありがとう」
「じゃあ番号交換だね」
レナは慣れた手つきで番号を交換した。機嫌が良くなった彼女は携帯を大切そうに鞄に入れる。覚える魔法を悩む原因が分かった。考えてみると彼女の目指す魔法使い像を聞いていなかった。
「どんな魔法使いになりたいか? そうだねー……」
この前とあるパーティーにあった時、魔法使いはやはりこれだと思ったらしい。大人数で階層ボスを倒したいとのことだ。
「となるとやっぱり火力か。覚えたい魔法とかはある?」
「んー、今は使える魔法を研ぎ澄ましてる感じ。パッと思いつかないかも」
「うん、そこは考えておいて。俺も調べておく。LV上げに行こっか!!」
「特訓の成果を見せてあげる!!」
レナは会う度に戦闘が上手くなっている。一緒に戦っていてすごく楽しい。これからの成長もとても楽しみだ。
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