148 人質
俺は珍しく登校していた。校長に呼び出されたからだ。
「平和だね~」
「そうですね~。ところでなんの御用ですか?」
「いや~知ってる?」
「なにをですか?」
「木間冠帝」
「いえ……その人がどうかしたんですか?」
「昔ちょっとお世話になってね……でも、彼は変わってしまった。いや、元からそういう男だったのかもしれない……」
「……なぜ、今そんな話を?」
「調べていたら辿り着いてね……以前、ダンジョンから強力な魔物がわんさか出てきたでしょ? あれを起こしたのが彼だ」
「あの事件を……」
「なにか怪しい動きを見せたらしい。十分に気を付けてくれよ」
その時、二年の先生が慌てて入ってきた。
「うちの生徒が攫われましたッ……!!?」
「……誰だい?」
「風下蓮奈ですっ」
「……彼女はもうLV25を超えたと聞いているが……」
「はい。ですが、それが一瞬のできごとで……」
「それほどの手だれ……」
俺は立ち上がり校長に言う。
「すいません校長。また後で!!」
「ああ、こっちは勝手に動くから、君は安全なところへ」
校長の眼を見た。長い事話しているのでなんとなく分かった。校長は遠回しにレナを助けておいでと言ってくれた。
「はい!!」
廊下に出ると遠くからフランがやってきた。
「キョウ大変よ!!」
「フラン。聞いたよ。レナが攫われたって」
「うん。私は探してくる。もしかしたら今夜は帰れないかも!!」
「……気を付けて」
フランは携帯を取り出しながら走って行った。
俺は屋上に出ると変装をしてエクスになった。魔法の<サーチ>を展開し、レナを探す。
(結界……まるでこの世界の住人を弾くような……)
少し離れた場所に空間移動する。裏路地であった。目の前には大きな建物がある。
(空間が歪んでる……普通じゃそこに行きつけない作りになっている。LV100以下じゃ絶対に探せない場所……)
そこで薄々気が付いていた事実と向き合う。
(俺が狙いか……)
内部に入ると長い階段があった。そこをひたすら降りていく。すると深部に女性が立っていた。その横に意識のないレナが倒れていた。生存を確認する。
するとレナを攫った女性が喋り出した。
「私はドローマ。冠帝様のご命令により日本を壊しにきた。悪いけどそれには貴方邪魔だと判断したわ」
「……木間冠帝」
「知っていたのね。話が早くて助かるわ」
「悪いけど構っている暇は……」
「無理よ。貴方の強さは分かってる。だって冠帝様が警戒した男ですもの。普通に戦えば私は絶対に勝てない」
「それじゃ」
その時、床に魔法陣が発生した。俺はそれに驚いた。
「なぜッこの術式を!!」
「貴方と同じよ。私も異世界人なの。油断したわね」
一瞬で結界が張られた。この結界は似ている。かつて、異世界で俺を封じたあの手錠と。
「……」
いや、それよりも高度な改良を加えていると感じた。
「抵抗は無駄だと理解したみたいね。外の景色は見せてあげるわ。破壊が終わるまで大人しくしていて頂戴」
壁に外の背景がモニターのように映し出された。今は大人しく従うフリをするしかないようだ。