146 交流
広い間に豪勢な食事、まるで旅館のようだった。フランとライラには帰りが遅くなると伝えた。すると今日は外食にすると言っていた。
海鮮料理が大量に運ばれてきた。ワイワイとにぎやかに食事をしているとカヅキが話しかけてくる。
「は~、あんたがあのデッドだったとはな。もう少し見た目も中身もヤバイ奴を想像してたけど。驚きだ」
次男のシンリュウが言う。
「失礼だぞカヅキ。愚弟が申し訳ない」
「構わない。とくに気にしてない」
話が分かると認識されたのか、カヅキが小声で聞いてきた。
「ぱぱっと強くなる修行方法ないか?」
「意外だ。カムイほど強さに執着してないかと思った」
「これでも探索者だからな。こそっとな。ついでに兄たちをあっと言わせれば面白いだろうなってな。それで、なんかないのか? できれば楽に強くなりたい」
「少し荒くなるが……もっと濃いマナがある所にいけば。もちろん精神と肉体、技術の鍛錬は最低条件。だが厄介なのはこれをやって必ず強くなる訳じゃない」
「マナ? ……となるとダンジョンの奥に行けばいいのか」
「普段からマナを意識していない者が多い……いや、最近の傾向か。LVという数値に囚われ過ぎているがゆえに伸び悩む」
(あのお爺さんは大切な事を理解していた)
いつの間にかカヅキの背後にカムイがいた。シオリも俺の背後にいた。
「なるほど、まずは器を鍛える。お前に紹介してもらったルートが最短のようだ」
「げっ。なんでいんだよ。さっきまで親父と飲んでただろ」
「お前に負けるのだけは死んでもごめんだからな」
カヅキがしまったという表情になっていた。彼は耳元で言う。
「また後で詳しくな」
皆が寝静まった後、縁側に座って月を眺めていた。透き通った夜の空気を感じていた時、穏やかな声が聞こえた。
「たまには良いものだろう?」
当主が話しかけてきた。
「良いですね」
彼もまた座って月を見る。
「……カムイは強くなれるかね?」
少し間を空けた当主は気まずそうに言う。その顔を見た時に驚いた。心配そうな表情。父親の顔をのぞかせた。
「ええ、まだまだ強くなれます」
「そうか……」
当主はなにかを話そうとしたが、それを止めて立ち上がる。
「邪魔をしてしまった」
「いえ、お気になさらず」
「今日は楽しかったよ。また呼んでも?」
「はい。楽しみにしてます」
当主はそう言って立ち去った。もう少しだけ夜を堪能した後、眠りにつく。たまにはこういう日も悪くない。