142 一瞬の出来事
高速で飛ぶ小型の飛行機。校長とギルドマスターは現場が見える位置まで近づいていた。
「急げ!!」
軍は四体の竜。注意を引くため、何機もの戦闘機が周辺を飛ぶ。それに対して竜はブレスを放った。旋回して避けようとするが、無理だと判断してベイルアウトをした。
そこから遠方に見える戦車等も魔法により焼き焦がす。
「そんな……」
探索者は対空の術を失いさらに絶望した。そして、竜は地上に向き、ブレスを準備する。クロスが叫んだ。
「壁だ!! 壁を張れ!! できる限りだ!!」
その数は少なかった。殆どの者が戦意喪失していたからだ。そんな時、四体の竜は空を見上げた。
「な、なんだ……?」
全員が苦い表情をした。突然、空間が歪んだからだ。黒い雷が周辺に発生する。
「まさか、これ以上……増えるのかよォ」
皆は怪訝な顔をした黒い穴から人間のような者が現れた。そして、その歪みに竜たちは一斉にブレスを叩きこんだ。
「なんだ!!」
男はブレスの集中砲火で前が見えない。しかし、攻撃から数を把握する。
(竜四体の出待ちか……)
「良い攻撃だ……虚構の翼」
その瞬間、四体の竜が不自然に切られ絶命する。竜と一緒に落ちている時、周囲の状況に気が付いた。
(んッあれっ? ここ……地上か!!)
シオリが小さく呟く。フランたちも目を丸くした。
「ッ……エクス……」
カムイもそれに気が付き、刀を収めた。
「…………まだ……見えんか……」
重い肉塊が地面に到達した瞬間、轟音が辺り一帯に響いた。唖然としていた。見ている者は状況を理解できない。自然と声が漏れた。
「は……?」「え……」
「なにが……」
見知った顔が数名、ジッと見つめていた。
(あ……そういうことか!!)
俺は最善の作戦を思いつく。黒い穴から黒色の光を出し、自分を照らす。次に宇宙船が謎の力で、人々を吸い上げるような演出をした。お腹に紐を巻き付け、クレーンかなにかで持ち上がるような、そんな不思議な上昇をする。
「アアーー吸い込まれるー~」
(……皆傷だらけだな……回復しとくか……)
こっそりと回復した後、問題が発生した。黒い穴に吸い込まれる寸前で消える。俺はその場に取り残された。
「…………?」
(えぇええ!!)
もの凄く焦っていると、シオリと目が合った。凄く怪しげに見ていた。そこから急接近してきた。疑似的に黒いなにかを魔法で作り、先ほどの穴を再現する。転移でその場から移動すると同時に穴も消した。
探索者はその一瞬の出来事に困惑していた。
「え? え? え?」
「な、なにが起きた……!!!」
「え? う、宇宙人?」
「……い、いや、ダンジョンに繋がってるはずだから、ダンジョン人?」
「待て、竜はどうなった……ッ」
「た、倒……した?」
ライラが空気を読む。
「よく分かりませんが、私たちの!! 人類の勝利ですわ!!!」
その言葉に一瞬固まった。次の瞬間、全員が大きな歓声をあげた。
「うおおおおおお!!!」「生き残ったぞォォ!!!」
とある国。竜が四体が一瞬で消えたのを感知している者がいた。フード姿の男はその方向を見た。
「……四体同時に?」
その時、街で暴れている黒い竜が地に落ちた。その竜は二度と起き上がる事はない。
「ククク、予想以上に楽しませてくれる」