140 圧倒的な力の差
探索者たちはひたすら攻撃を叩きこむ。MPの節約などまったく考えていなかった。
そんな時、空を飛ぶバイクが近づいてきた。竜の真上にくると後部座席から誰かが飛び降りる。ソウシが呟いた。
「カムイ……来たのね!!」
「カム兄……もっと早くこいよ……」
聞こえてはないだろうが、カヅキは軽く睨まれた。一瞬顔を逸らす。カムイはそのまま落下しながら刀で一撃を入れた。その傷から竜の硬さを理解する。
着地すると同時にその勢いを利用し、前に体重をかけた。
「零式<霧消>」
凄まじい力で地面を蹴り、一気に加速する。片方の翼を狙った。
「……」
確かにダメージを与えた。しかし、思ったよりも硬く、切り落とすまではいかなかった。
遠方では物好きたちがその様子を撮影していた。別のカメラに持ち替える。そして、中身を確認し始めた。
「黒霧の技だぞ!! おい、今の撮ったか!!」
「あれ? 駄目だ……」
「俺もだ……」
周辺に素早い影がシュっと動く。くノ一の格好をした者がその場を離れた。
「ん? 今誰かいたか?」
「え? なにがだ?」
くノ一は不敵に笑う。手になにかを持っていた。
「高性能のやつでも映らないけど……念のため」
カムイは動きが止まっていた。体に負荷がかかっているからだ。カヅキが守るように近寄った。
「神水も来ているのか?」
「父上も近くにいるが……裏方だ」
「なるほど。それならシン兄も動けるか」
竜が猛攻撃に空に逃げようと試みる。だが、上手く飛べない。翼の損傷が思ったよりも深刻のようだ。皆はその姿を見て畳みかける。誰かが言った。
「いける!! このまま押し切れるぞ!!」
シオリが最初に、ソウシが僅かに遅れて気が付いた。ソウシが叫んだ。
「皆離れなさい!!」
その声に疑問を覚える。今が絶好の機会だと。クロスはそれを信じ命令を出す。
「一旦引け!! 命令だ!!」
それを不満に思いながらも下がろうとした時、竜の周囲に無数の魔法陣が展開された。
「なっ……」
「おいおい、誰の魔法だ……ッ」
「決まってるだろ……」
「竜の魔法だ!! 逃げろ!!」
恐ろしい咆哮と同時に炎の光線が不規則に放出された。それを皆必死で避ける。その一手だけでこの場は大惨事となった。ブレスよりも威力が低いのが幸いだった。しかし、立っているものは数え切れるほど。
カムイが珍しく動揺していた。カヅキが倒れている。動けない自分を庇ってダメージを負った。死んではないが深刻な傷を負っていた。
「カヅキッ!! しっかりしろッ」
「……」
「ッ……お前の死は無駄にはせんぞ」
「……ってに殺すな……」
カムイはホッと胸をなでおろした。だが、それを顔には出さない。
「悪いが運んでいる時間はない……」
「分かってる……とっとと行け……」
カムイはわざと竜の視界に入った後、背後に回り込む。少しでも時間を稼ごうとしていた。竜はそれに釣られた。しっかりと彼を目で追う。