139 それぞれの全力攻撃
ポーションを飲むシオリにナナセが聞いた。
「それでどうする?」
「そっちがスキルで竜を殴ったら、私が合わせて増幅させる」
「ッ……私のスキルを利用してさらに増幅するってことか?」
「そう」
「……簡単に言ってくれるなァ……できるのか」
「やらないと倒せない……」
「っ……」
ナナセは覚悟を決めた瞳を見て思わず後退る。彼女ならそれをやってのけると感じた。それが悔しかった。長年スキルを使っているがそんな事を考えた事がなかった。
以前ソウシがこの少女を天才と言った意味が、より一層理解できた。
「魔防壁にヒビを入れると同時に魔法で破壊する」
「了解……タイミングが重要ね」
シオリは上空で暴れる竜を見た。それを見て若干修正をする。
「……ライラはその後に続いて」
「了解ですわ。保険ですわね」
先ほどの竜の動きから、降下するタイミングを予測する。今回一番緊張するのは魔防壁を割る者たちだろう。しかし、本人たちよりも周りの者が、その緊張に耐えられずに言葉を発した。
「あの竜。さっきよりも動きが良くなってる……」
「ああ……落とすのに苦戦しているな……」
その言葉には誰も答えなかった。信じるしかないからだ。ソウシがチャージを発動する。魔導師が気が付いた。
「嘘……二つ同時に……ッ」
一つの魔法では足りないと判断し、同時発動する。カヅキが尋ねる。
「……初めて見るな」
「そりゃ初めてだもの……」
「そうか。初のお披露目を見れるとは幸運だな」
彼の眼は成功すると確信していた。それを見てソウシが笑う。
「当然」
しばらくすると竜の高度が下がる。降下ではなく、戦闘機が落としたようだ。これは大きいとナナセが急接近する。シオリもそれに合わせて接近する。
そして、ナナセが地面に落ちた竜に強烈な一撃を入れた。さらに雷を全身に纏うシオリが加速し、追撃をする。
「<雷震>……ッ」
僅かな差でシオリが攻撃をすると、力が増幅して凄まじいエネルギーが発生した。竜の表面からピキピキとなにかが割れる音が聞こえた。ソウシが叫ぶ。
「二人とも離れてッ!!」
二人が急いで距離を取る。その瞬間巨大な爆発が二つ同時に起きた。ついに魔防壁が砕け散る。
「すげー……本当に成功させやがった……」
しかし、そこで終わらない。ライラが<エクスプロードフレアバーストストームアブソリュートデッド>で追撃をする。竜に炎の竜巻が巻き付く。爆発と炎の柱が竜を襲った。苦痛の雄叫びをあげた。
効いていると判断したクロス。彼は間髪入れずに叫んだ。
「突撃!!」
最高の好機が訪れた。全員の同時攻撃が開始される。誰もが自身の全力を叩きこむ事しか考えていなかった。