138 一案
ナナセとオグラに鋭く太い爪が襲いかかる。爪での攻撃に気が付いた時、二人は一瞬受け止めようかと考えた。しかし、二人とも後ろに跳んで避ける。本能がそれを恐れた。
追撃がこない事に疑問を覚えていると、尻尾付近に男がいた。カヅキだ。薙刀で尻尾を何度も切る。そこで、竜が尻尾を持ち上げた。
「まずい!!」
カヅキは危険を察知し、すぐに距離を取った。地面を強く叩いた。
「あっぶねー!!」
その時、チャージを終えたソウシが、離れるように合図を出した。全力の<エクスプロード>を放つ。凄まじい爆発が起きた。
砂埃が舞う。次第にそれは晴れていく。ソウシが歯を食いしばる。
「……なんとなく……予想はしてたけど……」
確かにダメージはある。だが、竜の動きは変わらない。依然として睨み付けていた。そして、ブレスの予兆を察知する。
「ブレスがくるぞォ!!」
フランを含め壁を張れる者たちが、一斉に動いた。先ほどの風を見ているので多めに作る。そして、凶悪なブレスが壁ごと探索者を吹き飛ばす。
「ぐああ!!」「うわああ!!」「きゃぁあ」
皆は傷だらけになり、体中から血を流す。ブレスの範囲にいた者は立ち上がれない。
後方にいてブレスを浴びなかったカヅキが、皆の前に立ちふさがる。しかし、下手に攻撃できない。迂闊に飛び込めば死ぬからだ。
少し休めたのか竜が空を飛び始めた。空からさらに追撃をする気のようだ。戦闘機がそれを迎撃しようと、周囲を飛び、意識を逸らす。
「た、助かった……」
その間、後方にいたシワスを含めたヒーラーたちが、回復に専念する。彼が動けない者たちを後方へと運ぶ。
誰かが呟いた。
「強すぎるな……」
「ああ……攻撃、防御、速度……今までの魔物とは比べ物にならない。脅威的だ」
「体が硬いのはもちろんだが、厄介なのは……」
「あの強力な魔防壁か……ッ」
「あれのせいで殆どダメージが入らねぇ……」
「私魔防壁だけにダメージ与えられる」
その声をする方を見ると、シオリがMP切れでぐったりと地面に倒れていた。
「で、できるのか……」
「ずっと考えてた。倒す方法を……ずっと前から……」
「り、竜との戦闘を予測してたのか……!!」
クロスが言った。
「彼女にMPポーションを。魔防壁を壊したら一斉に攻めるぞ。準備しておけ」
「でも、あれ相手に一人じゃ無理」
「なら私が手伝う」
ナナセが名乗りでる。
「……もう一人」
そう言いながら、シオリが一人の女性を見た。
「私?」
ソウシが驚いた表情になる。そして、少しだけ笑った。
「ふふ、私が道を切り開く役だなんて……久しぶりね」