137 地上からの攻撃
大変なのは黒魔術師のカモ、魔物の弱体化を担う者たちだ。竜が空を飛んでいる時から交代で弱体化を魔法や魔術をかけている。軍部とも連携していた。
探索者が見守る中、ついに竜が地上に降りた。戦闘機がその場から一時離脱する。遠距離からの砲撃も止まった。突撃の合図が出たので、一斉に近づいて攻撃をする。
「突撃ぃ!!」
<ロックプレス>や<エアクラッシュ>など、上空から地面へと叩きつける魔法を持っている者は、それを使用して竜を地面に押さえつける。
ライラたちはその手ごたえのなさに苦い表情を浮かべた。
「余裕のようですわね……」
「ライラ、少しでもダメージが蓄積するならっ」
「分かってますわ!!」
<ヘイト>や<チェーンマッチ>、<束縛する氷>、<アイスストーム>など、相手を拘束する技や魔法も無数に飛び交う。
次の瞬間、探索者は驚愕した。鎖や氷を全て引き千切ったからだ。おぞましい咆哮が一帯を揺らした。
皆が一瞬怯んだ中、オグラが接近し、大剣を振った。翼を小さな傷をつけた。しかし、その小さな傷に皆が力をもらう。
「怯むな!! 突撃ぃ!!」
竜はその小さな人間を見た。オグラは静かに笑い、竜をジッと見つめていた。
「これが竜か。面白い」
その時、後方から一瞬で距離を詰めた少女がいた。オグラは危険を察知し、距離を取る。その瞬間、彼女の纏う雷が解き放たれた。
それを見てナナセが目を細めた。自分のスキルと似た技、<雷震>を使ったからだ。シオリは開幕から全力でそれを放つ。
「建御雷神」
凄まじい威力に皆の表情が少しだけ和らいだ。だが、竜は口にマナを集め出した。シオリはもちろん、それを見ていた全員が驚きの表情をみせる。
「!!?」
「なっ……あれが効いてないのか!!」
「ブレスだっ!! 逃げろ!!」
雷を放出した状態。さらに大技を使った後で速度が落ちていた。逃げようと動くが完全にロックされている。フランが目の前に氷の壁を張るが、翼から発生した風で壊された。
「駄目だ!!」
「逃げられないッ」
そこでナナセが竜の顔面に強烈な拳を叩きこむ。魔力の波が共鳴し、増幅する。その凄まじい力が竜を襲う。
さらにライラが集中し、<エアクラッシャー>で追撃する。そして、最後にオグラが単純な力で顔を叩き切る。
あらぬ方向にブレスが放たれた。少しだけ体勢を崩した竜。しかし、なんともないかのように近くにいた二人を睨み付ける。
「き、効いてねぇのかよォ」
この短い間で理解した。そのフェンリル以上の力を目の当たりにしたナナセは苦い表情でそう呟いた。