134 ダンジョンの歪み
無事に旅行を終えた。俺たちは少しだけ日焼けした。
俺はいつものようにダンジョンに入っていた。竜の巣窟の973階層にいる。とある階層から空間に歪みを感じていた。
(歪み始めた辺りから魔物のLVが急激に高くなった)
竜や異形の怪物がそこら中を徘徊していた。巨体だけでなく、小さな魔物もおり、どれも凶悪だ。
(奥に進むほどマナが濃くなっていってるな)
襲いかかってくる最低限の魔物を倒して、奥へと進んでいく。
ギルドマスターは仕事が一区切りついたので、コーヒーを飲んで一息ついていた。廊下を走る音が聞こえ、慌てた声で報告がきた。
「異変です。屋上に来てください!!」
「落ち着け、どんな異変だ?」
「と、とにかく見てもらった方が早いかと!!」
屋上から空を見上げると、黒い円が浮かんでいた。気味の悪い雷がバチバチと不快な音を発していた。その部分の空間が歪んでいるようにもみえる。
「まさかこれは……冥府の門……ッ」
「そ、それはもしかして……あのッ」
「ああ……数百年に一度、ダンジョンの奥と繋がると言われている現象……急げ!! 日本中へ緊急事態宣言だ!!」
「了解です!!」
とある国。高層ビルの屋上でフードを被った男が驚いていた。空の空間が突然歪んでいるのを目撃したからだ。
「……ほう。聞いた事がある。ククク、面白い……」
次第に歪みの周辺で鳴る雷が激しくなっていく。そして、深淵の穴の中からそれは徐々に姿を現した。黒く鋭い爪が顔を覗かせる。鱗を持つ巨体。巨大な翼。恐ろしい形相をした魔物だった。
「黒き竜、か……美しいな。クク。対処できなければ滅びる」
竜は恐ろしい咆哮と共に大空に駆け上がる。人々は逃げまどう。無情にも禍々しい黒い炎で街を焼き尽くす。
「フフフ。さて、各国に仕込んだ魔物を動かすか。この混乱にどのような手を打つ? 異世界人……」