132 海水浴
浜辺で叫ぶという様式美を終わらせると、駐車場に停めたマイクロバスのカーテンを閉めて着替え始めた。
俺と校長は下に着こんでいたので、バスの陰でパパっと着替える。バッグに着替えが入っている。さらにその間、認識ずらしの魔法を周辺にかける。有名人がいるからだ。校長が感心する。
「ほー。この感覚。相変わらず、なんでもありだね。君は」
(相変わらず鋭い……)
「なんのことです?」
「なかなかしぶといね~」
そこでカーテンが開いた。シオリがこっちを見ている。海を見て誤魔化していた。
「綺麗な風景だなー」
「そだね~」
フランたちが慌ててカーテンを閉めた。そして、着替え終わると照れくさそうに五人が現れる。
「ど、どうかな?」
「どうですの……」
「自信ないけど……」
俺の背後に重なるように隠れている校長が、ボソっと小声で月が綺麗ですね、結婚しよう、世界一綺麗だよ、女神かと思った、などの言葉を言えと圧をかけてくる。
「みんな似合ってるよ!! もの凄く!!」
それを聞いてほっと胸をなでおろした。楽しそうに海の方へ走っていく。校長が残念そうに言う。
「ぇーー……」
「いや。きっと喜んでいたと思います」
五人が走っていると海の前で止まる。そこでシオリが気が付いた。
「あれ? 真実の水着は?」
シオリが知っている水着ではなかった。可愛らしいボーダー入りのビキニになっていた。ステータス補正がかかっている。
「あーあれ…………最初から家のプール用だけど?」
「……それ。強補正のやつ」
「えー? 全然補正なしだったよ? あ、でも間違って隣の一段階上を取っちゃったかなー? 種類多かったから~」
「……」
ライラは青色にビキニ、シズは花柄のワンピースを選んでいた。レナはフリルデザインの水着を着ていた。
フランがペンギンを解き放つと走りだし、海に飛び込んだ。なんと、そこは深かった。凄い速度で海を泳ぐ。水を得た魚のようだ。
フランがその姿を見て子供のように喜んでいた。同じく小さな動物のゴーレムと一緒に遊んでいる人がたくさんいた。
そんな時、校長が決め顔で言う。
「こういう時はなるべく大人が介入しない方がいいのさ……」
そして、ライフセーバーが複数いることを確認すると校長はお店に入り、泡立った小麦色の飲み物を注文し始める。
「ぷはぁー!! 旨いっ」
(まさかこのためにきたんじゃ……)
誤字報告下さった方、ありがとうございます!! 修正しております。