130 ショッピングモール
フランたちは軽く変装をして、ショッピングモールの三階に水着を買いにきていた。フランとシオリ、シズは囚人服のようなボーダーの水着をジーと見ていた。
「うん。良い感じね、皆はなに色にする? あ、私紺色にするから被せないでよ」
「……フ、フランお姉ちゃんっ?」
「ふふ。そうね。シズはオレンジのボーダーが似合いそうね!!」
「あの……ちょっと……」
シオリは気配を消し、すぅーと離れて別の水着を見て回る。
俺は中に入らずに、通路にいた。モールの中心、吹き抜け部分に面した手すりに掴まり全体を見渡していた。
色々な人たちがいた。人の流れが途切れることはない。皆笑顔で買い物を楽しんでいた。
(やっぱり見てるだけでも楽しいな~)
自分の水着はすでに購入してある。その時、ライラが通路を歩いてきた。モール内で行くところがあると言って、一人で買い物を済ませた様子。
「なに買ったの?」
「フランのために探しましたわ!! 見てからのお楽しみですの」
「おー。早速渡してあげよう」
フランを見つけ近寄る。
「あ、ライラ。紺色は駄目だからね」
ボーダーの水着を手に取り、見せびらかす。
「……し、心配しなくても絶対に被らないですわよ」
「あれ? なに買ったの?」
「そうですの。これはフランの水着ですわよ!!」
プレゼントに喜ぶフラン。
「ええ!! どこに売ってたの!! ブランド?」
「ドラッグストアですの」
「薬局? なんで……?」
袋を渡されると中身を取り出す。なんと少量の包帯が入っていた。
「……なにこれ?」
「長年のデータを使い予想した結果、これひと巻で隠すには十分だと思いますの」
「え? え? え? 分かんない。これをどこにどう巻けって? なにが小さいってぇ?」
凄まじい怒りの形相で圧をかけてきた。思わず後退る。
「じょ、冗談ですの!! 冗談!!」
ライラは話を変えようとシズを見る。
「それじゃあシズ。可愛い水着を選びますわよ」
「わーい!! あっ。ボ、ボーダーも可愛いけど全体を見たいな!!」
フランは笑顔でシズを送り出す。
「そっかー。じゃあ後でね」
「うん!!」
シズはライラの跡をトテテテと追う。
「……」
女性店員をフランが呼ぶ。機敏な動きでシュっと現れた。
「お待たせしました~!!」
「これ……センスないですか?」
「いえ、とんでもない。素晴らしい水着ですよ。なんと……私が発注しました!! この輝きに気が付けるのは一部の選ばれた人だけなんですよ~」
「だよね!! だよね!!」
フランはそれを誇らしげに購入する。買い物が終わったのでシオリを見にいった。
「まだ選んでたの?」
「うん。どっちが大きく見える?」
「え?」
お店に設置している器具のスイッチを押す。シオリの立体映像が現れる。一瞬で試着した姿を客観的に見る事ができた。既にピックアップしていた数種類の水着をフランに見せる。
「な、なんで大きさが変わってるの!!」
「そういう水着だから」
「!!?」
「あの真実水着買ったの?」
「……ま、まあね。嘘は良くないよー。嘘はー」
「違う。これは未来予測。先取り水着」
「み、未来予測……先取り……ッ」
「それで。どれが良い? 後どれが悪い?」
フランは目を閉じてしばらく考える。そして、決断した。
「こ、これが良くて……これは駄目ね……」
シオリは目を閉じていた事には触れずに駄目と言われた方、黒の水着を選んだ。
「はぁ? なんで大きいの持ってるのよ」
「なんとなく」
「くっ…………ど、どれも大きすぎで盛ってるのバレバレだって。きょ、興味ないけど聞いて良い?」
「なに?」
「こ、この一番小さいのでどの程度盛れてるの?」
「それが素の状態」
「はぁ? 嘘でしょう? 嘘だよね?」
「…………ぅん……」
「……」
選んだ水着のサイズを確かめる体で、試着室に避難する。ピッタリだったのでそれを購入した。ライラは赤と青を見ている。シズはピンクや花柄を見ている。
(ライラもシズもその場から動かなくなった。もう十五分もあれば決まるだろう)
シオリが通路に出た時、フランはシオリがいたコーナーに現れた。そして三人は、そこから数時間かけて水着を購入した。
誤字報告下さった方、ありがとうございます!! 修正しております。