126 久しぶりの登場
フランは珍しく自宅にいた。モニターに映る男と会話していた。
「やあ、フランチェシカ。久しぶりだね」
「報告は送ってると思うけど。なにか用?」
「ハッハッハ。相変わらず……ん? なにか変わったかな……」
「そりゃまあ、遅めの成長期ってやつね」
男は視線を一瞬下げた。
「気のせいか。本題に入ろう」
「ねぇ、覚えておきなさいよ?」
「冗談だよ、じょうだん。それでゴーストの正体は分かったかな?」
(急に真顔で真面目な話をされたら困る……)
そこからは真剣な表情だったので、いつも通りに報告する。
「駄目、分からない。シオリと一緒にダンジョンに潜るようになったけどそんな人は現れない」
「……それでは君はどうやってサラマンダーを倒したのかね?」
「報告の通り、縄張り争いで弱ってたのよ。それで、偶然にも敵との相性が良かった」
「なるほど……」
(この反応、今まで一度もエクスを見ていない……?)
「私たちの監視してないの?」
「最近全国で奇妙な事ばかり起こっていてね。正直なところ、小さな島国だけに人員を割くわけにはいかないんだよ」
「ふーん。大変なのね」
「大変も大変。できれば君にも戻ってほしいくらいだよ」
「……それは難しいね」
「何故?」
「最近ペンギンのリンちゃんをお迎えしたから移動がどうしてもね……」
男は少し声量を下げてボソッと言う。
「男か」
「はぁ? ちがっ!! はぁぁ? なんでそうなるのよ。ペンギンって言ってるでしょ!!」
「……そういう事にしておこう。まあ、LVも上がったようだし、順調なようでなによりだ。またなにかあったら連絡する」
「分かった」
「あ、忘れていた……一番重要な話がまだだったな……」
「……重要な……話?」
(まさか、サラマンダーの時に監視の誰かがいた……?)
なにか操作をするとワイプ画面が現れた。そこにはフランの配信動画が映っていた。フランの面白シーンを集めたものだった。
「ハハハ、良い編集だろ?」
フランは秒で通信を切った。
「ふぅ。相変わらず分からない人……」
(でもまあ。修行して、エクスを知ったら大抵の事には驚かないようになった気がする。私も成長したってことかな……)
通信が切れた後、男は背もたれに寄りかかる。
「……多少変わっていたな。だが、あの返答の仕方。洗脳はされていないようにみえる。しかし、何故か君の居場所が分からない。辿り着けない……いったいなにを隠している……フランチェシカ」
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