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125 摩訶不思議

 魔物を倒した事で、シズクは穏やかな笑顔を見せた。使命から解放されたのであろう。


「あっ!!」


 彼女は疲労していたが、シズクは倒れている女性に近寄り、起こす。


「大丈夫!!?」


「ぅ……ぅうん……」


 黄金色の髪の少女が目を覚ました。


「こ、ここは……」


 シズクと目を合わせると嬉しそうな表情を浮かべていた。


「どこから来たの?」


「どこ、から? 分からない……」


「名前は?」


「……分からない」


「立てる?」


「う、うん……」



「なるほど。強いストレスで記憶が。医者に見せた方がいいな」


「ストレス…………ね……」


「余程怖い思いをしたってことだ。俺は人骨を拾うから」


「どうして?」


「あの魔物にやられた人たちだ……地上で供養したい」


「そっか、ありがとう……私だけだったらどうにもならなかった。貴方が来てくれて良かった!!」


「いや、当然の事をしたまでだよ」


「それにしてもその人骨……いつから気が付いてたの?」


「途中から……かな。なんとなくだけど……」


 黄金色の髪を持つ少女は首をかしげていた。三人で地上に出た。


「んんー!!! 相変わらず良い天気ねェ!!」


 シズクは大きく背伸びをした。


「嗚呼……綺麗な青空だ」


「デッドには感謝しないとだね!! 無事に帰ってこられるなんて!!」


 歩きながら会話をしつつ、村へと戻る。シズクは相変わらず元気に言う。


「あっ、君も家に帰るんだよね?」


「そうだな。結構遠い」


「そっかぁ!! ……また会おうね!!」


「ああ、必ず!!」


 黄金色の髪の少女が俺の背後を見て驚きの表情をみせる。そして、不安そうに問いかける。


「あのっ……私はどうなるの?」


「大丈夫。悪いようにはしないよ。ちょっと医者に診てもらって治療するだけだから」


 少女はホッと胸をなでおろす。村に到着すると少女は驚いた。


「村……」


「うん」


「どうしてここに?」


「念のため。確認をしたかった、からかな……」


 少女は廃村を見て驚いていた。ほぼ壊れているボロ家。誰一人住んでいない静かな場所だった。


 道中の岩はあの禍々しい魔物を封じていた。それが割れたことで封印が解けたようだ。そこから奇妙な現象が発生していた。あの男は元は人間だった。いつしか危険な呪術に手をだし、狂ってしまった。いや、既に狂っていた。


 途中まで、まったく気が付けないほどの強力な幻覚だったのには驚いた。呪術。あの山奥のおじいさんが嫌がるわけだと実感した。



 心が痛むが、無数の人骨は一度ギルドに持っていく。混ざらないように工夫する。その中に、外傷で足が折れた人骨があった。これがきっと彼女のものだろう。だからこそあの魔物を倒してほしいと思った。


 ギルドマスターに報告する。少女はギルドの医者に診てもらっている。ギルマスはジッとこちらを見つめていた。


「……? いや、アンデッドや幽霊までなら分かる……しかし、デッド君を疑ってる訳じゃないんだが……」


(ダンジョン外で空間、時間のずれに近い特殊な現象が起きていた)


「その気持ちは理解できる……」


 遺骨やその傍に落ちていた衣類などを検査をしてもらっていた。ドアがコンコンと鳴り、入ってきた男が報告する。


「おそらくは600年以上前のものかと……」


「ふむ……」


 聞けばダンジョンは約1000年くらい前に発生したらしい。色々と疑問が湧いてくる。特にギルマスが恐れたのは……。


「俺はいったい……誰から依頼を受けたんだ? 思い出せない……」


「……」


「あの診察している子は……いったい?」


「……幽霊ではない」


 報告した男が帰り際にサラッという。


「あ、なんかあの少女。狐のような耳と尻尾がありましたよ?」


「「ええええ!!!!」」


「いやー不思議ですねー」


「「……」」


 そう言って男は部屋から出た。ギルドマスターは真面目な表情をしていた。渋い声で言う。


「ふむ……デッド君に任せよう……」


「え……?」


(ま、丸投げする気だァ……ッ)


 村の近くに遺骨を埋葬したいと申請したら、それが通った。そして後日、関係性は分からないが、黄金色の髪の少女も連れていく。


 険しくて立ち入れない、村が見える見渡しの良い丘の上に来ていた。そこからの風景を見て少女の耳がピコピコと元気に動いた。


 足を負傷した遺骨の傍にあったかんざしを、作ったお墓の上に置いた。そして、魔法をかける。


「何をしたの?」


「おまじないだよ。この場所に気が付く事はできる。でも誰も荒らす事はできないように……ここが彼女の家だから……」


 その時、少女が一つだけ思い出した。


「あ……私……は。そうだ。静音(しずね)だった……」


「そっか……良い名前だ」



 多くの謎を残したまま、この事件は一旦解決した。



誤字報告下さった方、ありがとうございます!! 修正しております。

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