119 ライフです
翌日、校長室のドアを叩いた。
「失礼します」
「あ、キョウ君じゃないか」
「実はご相談があります」
「あー名前を統一するの~」
「……な、なんの話でしょうか?」
「えー。じゃあなんの用?」
「実は……数分後、屋上に来る、”ライフ”という方が荷物を届けてくれます」
「荷物?」
「海底ダンジョンで助けた人の、知人の知人のそのまた知人の、さらにその子供の知り合いからのお礼だそうです。あ、ライフさんは配達を頼まれただけで無関係な人です。それを校長先生が受け取り、家に送り届けてほしいと思ってまして。お代はもちろん自分で払います!!」
「へー、面倒な設定だね。中身は?」
「せ、設定? 何の事か、わかりかねます。小さなゴーレムだと聞いてます」
校長を経由することで高性能ゴーレムを誰が作ったのかを誤魔化す作戦だ。キョウを守るためだ。
「なるほどー。分かった、引き受けよう。すぐに屋上に向かってデッド君を迎えに行くよ」
「ライフです」
校長が部屋から出た。しかし、屋上に向かわずに、しばらく待つことにした。ドアを開けてみると校長がまだ廊下にいた。
(早く屋上に行ってください)
「あー。最近腰痛が酷くてね~……」
「ライフさん、待ってると思いますので」
「ああ、悪い悪い!!」
チラチラと見ながらドアを閉めた。今度こそ屋上のドア前に行ったので、転移する。屋上で校長とライフは邂逅した。
「君がライフ君か」
「はい!! 俺がライフです!!」
「へー強そうだね。デッド君並みにー。へーライフ君か~」
「な、何の事だか…………話は聞いていると思うのでこれを」
小さな箱。中身が見れるよう半分が透明のパッケージで作られている。
「これがゴーレムね~。なにこれ?」
「カイコがモデルらしいですね。モフモフの真っ白で可愛いでしょう? ディフォルメされてますし」
ポケットに入るサイズのものを選んだ。後は猫などに見えないように調整してある。
「へー、ライフ君も趣味変わってるね。でも、そういうの。いいと思うよデッド君」
「ライフです」
そう言いながら箱に添えてある説明書を開いた。
(それ校長宛の手紙じゃない)
「人工知能が搭載されていて状況に応じて成長することがあるの? なにそれ、僕も欲しい」
「し、試作品なので……」
「そっかー。これ、その内巨大化して戦いそうだね~」
(違います)
「まあ。とにかく後は頼みましたよ!!」
校長にヘリコプターの幻覚を見せる。梯子を降ろしてきたのでそれを上り座席に乗る。実際はエア梯子に空気椅子だ。魔法で空を飛んでパントマイムしている。
「ほー。こりゃ凄い。一見分からないな。ライフ君も大変だね~」
校長は紙を取り出す。魔道具を使いそれに火をつけた。急いで風の魔法で強風を再現して煙を動かす。
「……」(やめぇい!!)
「必ず届けるよライフ君。あ、気を付けて帰らないとデッド君になるよ~デッド君~」
ヘリは上空へと高度をあげる。去りながら言う。
「はい~ありがとうございますー。それとライフですーーっ!!」
適当な場所で障害物に隠れて転移し、校長室に無事に戻ったのである。
「どうでした?」
「うん。最初は面倒と思ったけど、中々楽しめたよ~」
「そ、そうですか……それではお願いしますね」
「はいはい任せて~」
後日、カイコモデルのゴーレムが届く予定だ。
誤字報告下さった方、ありがとうございます!! 修正しております。