115 ダンジョン内での休憩と雑談
お昼になったので、昼食を作る。処理を終えたブラックリザードの肉を野菜と一緒に煮込む。鍋料理だ。ダンジョン内なので量は適度にしている。
「美味しそうですわね!!」
「絶対美味しい」
「食べやすそう」
「ちょっと待って!!」
「「「え?」」」
「ここ、ダンジョン内だけど?」
「大丈夫ですわ。食べ過ぎて動けないなんて事はないですの」
「速攻で消化」
「美味しそうだね~」
フランは彼女等が正常な思考を失ったのでは、と心底心配した。
「……あ、あのさ。この人数で、なんで道具あるの? ていうかブラックドラゴン何処に?」
「エクスが持ってる」
「そうですわね」
フランが見てきた。軽く空間から物を出し入れする。リザードをチラリと見せた。
「ッ!!!?」
「あ!! そうですの。言い忘れてましたが、エクスはそういうスキルを持ってますわ」
「遅い!! 言うの遅いって!! え、じゃあ今日、レナの鞄の中身空なの!?」
「うん。だから動き易いよ」
「……な、なんでフェンリル討伐にいないのよ……」
(あ。流石はフラン。意外と冷静な事を……)
「用事があって遠くに……」
「……それなら仕方ないか」
鍋が良い具合になったのでお皿に取り分けて、話を変える。
「ありがとう」
皆が手を合わせた後に口に運ぶ。こっちの文化にも慣れたものだ。
「美味しいですわね!!」
「美味しい」
「美味い!!」
「味がしっかりしてる!!」
「口に合って良かった」
「何て言うか。懐かしい味だよね」
「そうですわね」
「家庭の味」
シオリが突然ホールインワンを決めた。心なしかこちらを見ている気がする。
(……い、いつもと味付け変えてるんだけど)
「あーそれそれ。この国特有の味付けなのかな」
「くぅ~美味しいですわね~」
俺はそれを乗り切ろうと、美味しいと連呼しながらご飯を食べた。食後の休憩中。フランがふと思い出すかのように言う。
「んー。中ボス相手にダメージを喰らってないような気がする……」
「私の完璧な立ち回りですわね」
「ライラ助けた。私の勝ち」
「いいえ? あれは鉄球のガードが間に合ってましたわ。ノーダメージですのノーダメージ!!」
「絶対死にかけてた」
レナが間に割って入る。
「まあまあまあ。二人とも凄かったよ」
「あれ? そういえば、MPがあんまり減ってないような……」
(……)
「ああ、それはエクスですわね」
「え?」
「MP回復させるスキル持ってる」
「は? そんな事っ。あり得ない。自分以外のMPを回復なんて!!」
「でも、ヒールは存在するだろ?」
「それとは違う……今までそれは確認されてない。だから皆、ポーションで回復をしてるのよっ……あ、あんた何者なの……?」
シオリが近寄ってきて、拳をつくって体中に触れる。ポフポフといった感じでまったく痛くない。白状しろと言いたげな様子だった。
それを見てフランは気が抜けた。どうでもよくなった。シオリがここまで懐くのは滅多にない。悪い人ではないと考えた。
「まあいっか。一緒にダンジョンを攻略する。それだけ分かれば十分ね」
「その通りですわ。それでは行きますわよ。この先に!!」
「え?」
「まだ余裕」
「いや、ちょっとこの先は……73階層にサラマンダーが……」
二人が気合が入った様子で進み出す。その時、フランに疑問が出来た。シオリと組んだことで色々と分かった。彼女は一見無謀なようで絶対に出来ない事はしない。
(まさか……本当に勝つ気なの……? それほど自信があるって事……ッ)
フランは考える。いつもと違う事は何か。答えはすぐに出た。それはエクスがいる事だった。