表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

115/149

114 視野を広げるとライラが見えた

 距離を取った三人。フランが言う。


「どうする?」


「お腹狙う」


「俺もそう思う。さっきみたいに立ち上がらせてから、フランとレナで止めっていうのは?」


 それを聞いたフランが珍しく狼狽(うろた)える。レナも自信なさげだ。


「わ、私ぃ!!?」


「か、火力が足りないんじゃ……」


「短時間だが、少し強力なバフをかける」


 シオリが即座に同調する。


「賛成。じゃあさっきのを誘発させる」


「私も協力しますわ!! 滅多に経験出来ませんわ。偶にはいいじゃないですの」


「え、え、ちょっと……偶にじゃなくてボス相手には初めてだって!!」



 俺が<ファイアボール>で牽制している内に、ライラとシオリは自身にバフをかける。


「<ブレイズブレイバー>」


「<我に力を与えたまえ。其は万雷の化身……<雷公(らいこう)>」


 急激な能力の上昇をした二人は魔物に攻撃を開始する。ここでフランとレナにバフを付与した。


「な、何この力は……いつものと違う……」


「不思議……元から知っていた、そんな感じがする……」


 バフは二つかけた。一つはヒーラーの師走(しわす)レベルの強化。もう一つは一時的に潜在能力を引き出すバフ。集中力が高まり、普段使われてない力を引き出す特殊な魔法。それはゾーンに入る感覚に近いかもしれない。


 前衛と違い、後衛は知性をフルに活用するので、無意識に自身を抑圧する傾向にある。もちろんそれが悪いわけではない。ただ、別の可能性に気づくきっかけを与えたい。



「全力で撃つと良い。援護は任せろ」


「う、うん」


「分かった」


 その時がきた。魔物は二足歩行になり、二人を踏みつぶそうとした。


「<アースグレイブ>!!」「<エアプレス>!!」


(なるほど……)


 背中にエアプレスをする事で、土の杭に押し付ける形になる。


「<風刃(ウィンドカッター)>」


 レナが腹部を狙う。フランは驚いた。ほぼ同時に魔法を使ったからだ。自分も負けじと練習中の魔法を使用した。


「<ロックプレス>!!」


 巨石が宙に現れ、魔物の背中に落下する。二人は協力して魔法で挟む。そして、二人の魔法は魔物を貫いた。ゆっくりと地面に倒れ、轟音と地響きを起こす。その音と揺れが、これは現実なのだと実感させた。


「や、やったッ……」


「やったねフラン!!」


 フランは驚いていた。体が少し震えている。脳から心地よい何かが溢れてくる。


(わ、私たちが。中ボスとはいえ、こんな深い階層のボスを倒した……ッ)


 フランは拳を握りしめた。


(なに、これ……すごく嬉しい……ッ!! こんな感覚は初めてっ!!!!)


 ニヤニヤとした表情のライラが近寄ってくる。


「ふふふ。これで私たちの気持ちが少しは分かりましたわね」


「良かった。これで無罪」


(それですぐにノってきてくれたのか……)


「う、うるさいわね。それとこれは別よ!! 無謀に飛び込ませるわけにはいかないから!!」


「でもっ……今の感覚……絶対に自力で辿り着いてみせる!!」



 興奮するレナの言葉に頷くフラン。この状態は消耗が激しいので、効果が切れるまで一旦休憩を挟む事にした。その間、フランは先ほどの感覚を思い出していた。その純粋な笑顔は幼子のようであった。







誤字報告下さった方、ありがとうございます!! 修正しております。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ