112 初めまして(初めてとは言ってない)
とある暗い部屋。そこで男が一人笑っていた。
「あの量の魔物が一瞬で……当たりを引いたか……」
海外でも特殊なスタンピードは起きていた。しかし、発生は時間差があった。
「異世界人……」
(適当に組み合わせた魔物を使ったが、こっちの奴等には驚異的な魔物ばかりだったはず。しかも場所が分からない程度には隠蔽出来る相手……だが、甘い。死んだことを認識できている)
「日本、か……面白くなりそうだ」
シオリに呼び出され、デッドの状態で竜の巣窟に来ていた。携帯は隙を見て、収納空間から取り出し、確認している。
油断すると狙って部屋に来るので大変だ。キョウが使う用の携帯はかなり前に新しいのを買った。料金二人分はダンジョンで稼いだお金があるので大丈夫だ。背後からシオリの声が聞こえた。
「おまたせ」
近寄ってきていた。さらにライラとレナ、フランまでいた。いつものメンバーになってしまう。
「お久しぶりですわね」
「久しぶり……」
この状態で唯一面識のないフランが言う。
「シオリ、誰この人?」
「エクス。魔法剣士」
レナにはシデンでこの事を話をしているので深く突っ込んでこない。
「へー。シオリと知り合いなんてレアな人ね。きっと変わり者なのね!! あ、強敵に突っ込まないでよ……」
「基本は突っ込まないようにする……」
(フランも変り者の枠に入ってるんだけどね……)
「LVは? それ次第でこっちの動きも変るから」
「……」
シオリも普通に聞いて来た。
「LV……嘘っぽい」
「そういえば最近あってませんでしたわね」
ライラは鑑定を使う。
「はぁ? 何であんたたちが知らないのよ?」
鑑定するためのアイテムは高い。高いからというわけではないがフランは基本、緊急時以外は使わない。使っても犯罪というわけではない。そこは人それぞれだろう。
「……」
「40ですの……本当に40ですの?」
「なんであんたが疑ってんのよ……見たんでしょう」
「ソウ40ダヨ」
「ほらぁ。すぐに人を疑うのは良くないって」
「「「40ー…………」」」
フラン以外は遠い目をしていた。
「ま、まあ。ダンジョンに来たんだからやる事は一つだろ?」
「そうね。じゃあ狩りをしましょうか!!」
早速、ダンジョン内を進んでいく。シオリ、ライラに続き、レナが次々敵の殲滅をする。フランはすぐに気が付いた。
(動きが良い……その辺の人より……ううん。昔組んでいた上級パーティーよりもずっと動きが良い……こんな人が無名で?)
「あなたならレナを任せられそう。前に出てもいい?」
「大丈夫。あの二人を援護してやってくれ」
「任せて」
フランが前に出るとレナが近寄ってきた。
「久しぶりだね」
「しばらく忙しかったからな。お互い。見ない間に魔法……凄く良くなってるよ」
「ほんと?」
「ああ。強くなった」
レナは褒められて嬉しそうにしていた。
味方強化と敵弱体化の効果はこのLV帯の探索者基準に合わせている。自分も参加しながら進めるのでこれはこれで面白い。
階層を進むとホブゴブリンが大量にいた。フランが背後に気が付いた。
「後ろから大量に!! って前に出過ぎだって二人とも!! レナとエクスの援護を!!」
「大丈夫」「大丈夫ですわ」
「え?」
十数体のホブを一瞬で討伐する。レナは無傷であった。
「速い……あっ……」
そこでフランは気が付いた。
(戦う度にバフとデバフが必ず付いてる……ッ。今までずっと……?)
「エクス。MPは大丈夫なの?」
「問題ない」
即答に驚きを隠せない。隙あらば前線にも援護攻撃もしていた。一人で数人分の働きをしていることになる。
「わ、分かった。信じる。でも危なくなったらいつでも言ってね」
「分かってる。パーティーを危険にさらす真似はしない」
「正反対!! それだけの力を持っていながら真逆の動き!! あんたらも見習いなさいよ!!」
フランはそれだけで凄く感動した。実際涙がポロリと落ちた。レナは良かったねとフランを慰めていた。そして、その二人は前線で競うように魔物を狩っていた。つまり、聞いてなかった。
それからも次々と魔物を倒しながら進んでいった。60階層に到達していた。フランはその進行速度に驚いていた。
(ほぼ休みなしでここまで……いつもの私達だけなら40階層付近。明らかに飛び抜けた力を持っている。この人はいったい何者なの……)
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