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111 勘の鋭い魔物

 フランたちの携帯にも連絡があったようだ。船が陸に近づく頃、四人は戦闘準備をしていた。俺は地域ごとの調査を終えた。


「キョウ……ごめん。ここに居て。かなり緊急事態らしいの」


「うん、気を付けて」


 陸に到着するなりヘリコプターが降りてきた。


「行きますわよ!!」


 四人は飛び立った。ゴーレムさんの腕はコソっとなおしておいた。お世話になったお礼だ。そして、ゴーレムさんたちの新しい技は緊急時にならない限りは数か月の間は使わないでとお願いした。折角の技を取り上げたくなかったからだ。


 フランたちに聞けば救出記録もあるので、細かく調べれば分かる。しかし、校長の力を借りればその辺はうやむやに出来そうなので時間が欲しい。


 探索者(シーカー)育成高等学校なので、避難するのを手伝いに行くという理由でその場から離れる。その後、空間転移でひと気のない森の開けた場所に来た。この特殊なスタンピードを終わらせる。


 まず結界を張った。衛星、魔法の探索などあらゆるものを遮断。つまり隠蔽する。各地の変異種。現状倒せそうにない魔物、戦闘していない魔物を厳選し、結界内に招いた。




 オウガを勧誘していた洋服を着た魔物は驚いた様子を見せる。


「ここ……は?」


 辺りを見渡すと200から300の魔物が居た。既に勧誘済みの仲間も沢山いた。


「……誰かのスキルというやつかな? フフフ、手間が省けた」


(ん? オウガがいない……呼ばれた者には何か条件がある?)


「皆さん!! よくぞ集まりました!! 人間たちを狩るために同盟を組まないかいっ!!」


「何だ? 人間みたいな恰好を」


「これは遊び。この方が人間が怖がるのさ」


「くく。なるほど。そういうタイプの遊びッてか」


「理解が早くて助かるよ」



 そんな時、少し離れた場所でスライムが地面を必死に叩いていた。次は天井を叩く。


(逃げ場が無い!!)


 そして、その現象を引き起こしたであろう人物を見て悲鳴を上げた。


「うわああああああ!!」


 急いで距離を取る。しかし壁に阻まれた。必死でその壁を叩き壊そうとする。しかし、ヒビすら入る気配がない。


「何だこの臆病者は……」


「変異種の恥さらしが。人間に怯えるだとォ……」


 五体ほどの変異種がスライムの前に現れた。


「う、うるさい!! お前たちも手伝え!!」


「こんな出来損ない。俺等には不要だ!!」


 一斉に襲い掛かる。スライムが広がって体積を増やすと同時に、襲い掛かる魔物を吞み込んだ。


「なっ!! 一瞬であいつらを!!」



 スライムはひたすら壁を叩いていた。


(……90階層以降ッ……奴等は人間を恐れていたんじゃない!! ……あの人間だ……あれを恐れたんだッ……!!?)


 キョウはこの中で一番強いスライムを凝視していた。


「ひぃ!! なんで僕を!! こっちを見るなぁぁああ!!」



 洋服を着た魔物はその力を見て、スライムが欲しいと強く願った。


(素晴らしい……あの魔物がいれば、人間を一掃できる!! 世界を滅ぼせる!!)



 そんな時、一人の人間が居た事に気が付いた。


「おや、何故こんな所に? 何者かな?」


「人間だよ。そして、俺がお前たちを呼んだ。解析が終わるまで待っててほしい。報告しないといけないから」


「は? つまり我々を集めたのは貴方? くくくく!! ハハハハハハ!! いやぁ!! 人間の真似をしてみたのだけど、本物には勝てない。人間はやはり面白い生物だなァ!!」


 魔物は紳士的な振舞いにお礼を言う。


「感謝しますよ。おかげで最強のパーティーが完成しそうだ」



「一つ、勘違いしている事が分かった。お前たちは自身の本能や考えで地上に出たんじゃない。作られた者にそう埋め込まれていただけだ」


「……はっ。我々が作られた? おかしなことを言う。我々はダンジョンで誕生し、特別に強くなった。そして、自らの意思で望んでここに来た」


「信じようと信じまいとどちらでも。ただ、これが俺に出来る手向けだ」


「……何を……」


 そこで三体の魔物が人間に絡んできた。



「馬鹿な野郎だ。俺達が勝手に殺し合うとでも思ったか? 舐めすぎだぜ人間!!」


「作戦は失敗だったな!! 低能野郎がぁ!!」


虚構の翼(インビジブル)


 魔物は殺意のこもった拳を振りかざし襲いかかる。全員触れた。人間には何もなかった。しかし、そのうちの二体が粉々になり、絶命した。


「は……?」


 そこで初めて洋服の魔物は危険を感じ後ろに跳んだ。


「お前はまだ解析が終わってない。さっきのは危なかった。でも死ぬ寸前で解析は終わってる。急に変更して大変だったよ。他は大人しくしていてくれ」


 それを聞いて殴りかかった魔物は怯えながら尻もちをついた。


「……ッ」



「……な、何者だ貴様!!」


「さっきから言っている。人間だよ……」


「っ」



「安心して。無駄な痛みはない」



 洋服を着た魔物は得体の知れない人間に恐怖を覚えた。その時、魔物がはじけ飛ぶ。一体、また一体と。状況を理解した魔物は後退りを始めた。



「あ、あああ……あ……っ」


「に、逃げろぉぉ!!」


 その言葉を皮切りに、皆叫び声をあげて壁、地面、天井を叩き始めた。


「うわああああああ!!」


 ようやく洋服を着た魔物も背を向け壁に向かった時、声が聞こえた。


「解析完了……」


「ひぃ……」


 その瞬間、全ての魔物が消滅した。



 ギルドに軽く顔を見せた。すでに校長が居て笑顔で挨拶してきた。


「やぁデッド君。お手柄だったね」


「……まだ何も言ってない」


「ハハハ。なんか消えたってさ。魔物~。いやーびっくりだよね~」


 今回の伝言はデッドではなく、キョウに対して送ってきた。もう完全に分かってやっている。


「……」


「デッド君。報告を頼む……」




 家に戻るとフランたちが先に帰宅していた。すると兎がお出迎えしてくれた。おでこを撫でた。目を閉じる姿が愛くるしい。遅れてフランとライラが玄関に来た。


「キョウ無事で!! 良かったですわ!!」


「もう、無理しちゃだめだって!!」


「あ、ごめんごめん。せめて何か出来ないかなって。魔物……結局どうなった?」



「……分からない。到着する前に突然消えて……全国で同じ報告があがってる」


「へー。不思議な事もあるんだな」


「前代未聞ですわよ。あの量が全国から消えるなんて」


「分からないど。とにかく、皆無事でよかった。すぐに夕飯作るよ」


 二人は嬉しそうに飛び上がる。部屋に入るとペンギンが近寄ってきた。触り方は分からないけど少しだけ撫でてみたら嬉しそうにしていた。黒猫は窓際で日向ぼっこをしていた。


 手を洗い、冷蔵庫を見ているとシオリがわき腹を連続で突いてきた。


「どうした?」


「おかえり」


「ただいま」



 こうして海底ダンジョン探索は無事に終えた。




誤字報告下さった方、ありがとうございます!! 修正しております。

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