10 上代詩織は恐らく天然
参考にならないので次を探しに行く。今度は男性の悲鳴が聞こえた。少し迷ったが頑張って駆け付ける。
そこには先日街中でゴリラの魔物を倒していた黒髪の少女がいた。美しい青い瞳。一見すると綺麗だが、見る程に深く冷たい印象を受ける。
男は腰を抜かしながら、それでも逃げようと必死に後退りをしていた。150cm程の少女に怯えていた。
二本の剣を装備しており、その一本を抜いて男に殺意を向ける。事情は分からないがとりあえず男の方へと近づいた。
「た、助けてくれぇっ。その女に殺されるぅ!!」
「そこを退いて。貴方には関係ない」
「…………そういうシチュエーションの設定、とかじゃないですよね?」
「っんな訳あるか!!」「何言っているの?」
普通に危ない状況だったらしい。
「それで、何があったんですか?」
「変態仮面には関係のない話」
埒が明かないので男の方を見る。
「お、俺は何もしてないぞっ。女の子が一人でこんな森で危ない、って思ったから助けようと近づいただけだ!!」
「なるほど。それだけで何も殺そうとしなくても……」
「寝てたら痺れダケの粉で動きを封じられてお尻蹴られた。その後胸揉まれた」
「っお邪魔しましたー!!」
去ろうとすると男が全力で止める。
「おい待てってッ。よく考えてみろっ。そいつ普通に動いてるぞ!!」
(麻痺に耐性があるか。対策してたんじゃないか。この人つえーし)
「服に仕込んだ解毒剤を舐めてなかったら危なかった」
「さよーならー」
「わ、分かったっ。謝るっ。謝るからっ……そこの男、すまないが謝罪に協力してくれ」
「普通に嫌だけど。俺関係なくない?」
「分かった。分かってるから、とりあえず耳を貸してくれ」
あまりにも必死だったのでとりあえず話を聞くことにした。すると羽交い締めにされた。
「かかったな馬鹿がッ。こいつの命が欲しければ裸になれぃ。その後に股を広げて命乞いしろやぁ!! おっと、ニーソと剣は身に着けたままでいいっ」
彼女は汚物を見る目になった。
(こいつ懲りてねぇ……)
「ククク。さあどうするんだ? お前のせいでこの男はズタズタのボロボロになるんだぜ!!」
「あ、俺に構わずやっちゃってください」
男はその言葉の意味を理解出来なかった。
「え?」
「分かった。ちゃんと成仏してね」
「え……あのちょっとぉっ?」
動揺する男に言う。
「ちゃんと殺せよ。そう簡単には死なないぞ」
「えっえっえっ?」
「じゃあ死んで。変態……」
彼女は特殊な雷の魔法、<赤雷>を使用した。
「お、おい待てっ。この男がガガガガガガぁぁあああガガガ!!!!!」
この辺り一帯に強力な赤い雷が広がる。赤い光に包まれるのは何とも不思議な感覚だった。男は一瞬で黒焦げに。さらにまだ体に帯電しているので痺れてピクピクと痙攣する。そんな状況でありながら彼はギリギリで生きていた。
「手加減したけど……なんで密着してたのに無傷?」
「魔力の膜を作って地面に流したから」
「ただの雷魔法じゃないのに……」
「まあまあ……」
(他にも数種類の魔法を併用したが、説明が面倒だ)
男の拘束がなくなり自由になったので立ち上がって土をはらう。
「死ぬ覚悟してたの?」
「まさか。あの人のために死にたくはないかな」
「仮面の人、何処かで会った?」
「しょ、初対面ですが」
「動揺した。なんで?」
そこでステータスを見られている感覚があった。この子を見かけた時、LVの偽装は29に変えている。抜かりは無い。
(恐らく、街でのあれは初めての狩りではないはず)
「……街中で魔物を倒してるのを、一方的にだけど見かけたことはあります」
「ストーカー?」
「違うよ!! ただの通りすがりの一般人です。それではまた」
彼女は何かと勘が鋭いのでなるべく関わるまいと考えた。急いで離れようとするも呼び止められた。
「待って……名前は?」
「ギ、デッド……」
(ギルティはまずい。聞かれると面倒だ)
「ギデッド?」
「ただのデッド。それじゃあ、さよな……」
「聞かなくても私の名前知ってる? もしかしてストー」
「お名前聞いてもいいでしょうか!!」
「上代詩織」
今度こそ離れる。その名前は何処かで聞いた事があるとふと思った。
光魔法を応用し電波を送受信出来るようにする。スリムフォンという携帯電話を取り出して、彼女の名前を調べてみた。すると検索の一番上に来ていた。色々な情報が載せられていた。
(天才少女……か)
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上代詩織
身長:149cm
体重:42kg前後と思われる
B:81
W:56
H:83
LV:31
ジョブ:魔法剣士
スキル:不明(長期戦を可能にする系統だと思われる)
二刀流
スピードとテクニカルな動きで相手を翻弄する戦法を取る事が多い。遠距離攻撃や火力、持久力もあるので戦闘面での欠点はほぼない。14歳の若さで既にLV31と驚異的な成長を見せる。さらに多数の固有魔法を使いこなす。所謂天才少女。
頑張ってシオリンの欠点をあげるのなら優しすぎるところだ。お尻を叩いたり、体の何処を触っても笑って許してくれる。それどころか女豹のポーズでおねだりしてくるので沢山コミュニケーションを取ろう。
得意魔法
……
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(殺意の高いサイトだな。それと残念ながら情報が古い。もうLV33になってた。ってあれ。ネットやテレビで有名なら知ってても良かったんじゃ……)
色々あったが、レナをここに連れてくるのは絶対に止めようと誓った。ただダンジョン自体には興味があるので、下の階に潜る事にした。
<エコーマッピング>を使用する。特殊な音波の魔法。音の反響で周囲の地形を正確に把握する。ここの多くは密林になっているので、下へ通じる道が分かりにくい。
(お、そんなところに道があったのか)
さらに奥へと進んでいく。
5/7 誤字報告下さった方、ありがとうございます。修正しております。