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108 止まらない魔物たち

 ナナセとソウシ、シワスを含めた臨時パーティーは頭は獅子、胴体は熊、尾は大蛇の異形種と戦っていた。10メートルと巨大な体を持つ。


「あんたたちと組むと絶対に変なのと遭遇するね」


「っせー。こっちの台詞だッ」


 ナナセは接近し胴を殴り、スキル<共鳴増幅>を発動させる。振動が上手く作用し、巨大なエネルギーを作り、内部を傷つける。しかし。


「魔防壁に阻まれてるな……ちょっとしかダメージが無い」


「離れてくださいッ」


 シワスの言葉に一度下がる。その場所に重い前足が突き刺さる。地面が砕け、穴が空いた。


「何度かぶちこめば魔防壁は割れると思う」


「私も削ってるんだけどね」


「フェンリルよりは戦い易いですが……臨時パーティーですからね。火力集中が難しいです」


「ハッ。全部避けて、何度も殴ってれば勝てんだろッ」


「……良かった。あの才女たちに心を折られないか心配だったけど」


「ああ? そんな訳あるか!! ……次はあんな無様には終わらねェ」


「ハハハ、良い探索者(シーカー)ね」


 シワスがバフを駆けると再びナナセが突っ込んでいった。



 路地裏で探索者(シーカー)たちが走っていた。


「いたか!!?」


「駄目です、いません!!」


「くそ、あのドロドロ野郎がぁ!!」


 赤い液状の魔物、スライムは排気口や小さなヒビなど、少しでも通過できる場所があればスルリと抜けて逃げていく。


「うあぁぁ!!」


「あ?」


「後ろっ……」


 背後からスライムが男を包み込む。一瞬で男を溶かした。


「くっ、死ねぇぇ!!」


 男は剣でスライムに切りかかるが、変形されてヒョイと避けられる。同時に腕からクルクルと巻き付かれ、次第に体全体を覆われると溶かされた。


「っおかしいなー。90階層とか100階層の魔物は人間に怯えてたんだけどなー。皆大したことないや……お、こいつ。先月振られてやんの~」


 溶かした。いや、取り込んだ者達の思考を取り出し、LVを奪っていく変種のスライム。今まで溶かした人の姿になると路地裏を出て自然に歩きだす。


 遠くでそれを確認した男が震えだす。もう一人の男がその様子に顔を歪めながらも問いかける。


「どうだった?」


「レ……LV152……あの魔物……やばすぎるッ!!!?」


「ば、馬鹿な!! そんなのことっ……下手すると我が国がっ」


「あ……」


「え?」


 背後にスライムが居た。一瞬で男を呑みこむ。腰を抜かした。声が出ない。尻もちをついたまま必死に距離を取ろうとするも虚しく。男もまた溶かされた。


「まあいいや……馬鹿みたいに弱いけどその知識は素晴らしい。全部貰っていくとするよ……」



 オウガは魔法使いの存在に気が付き始めた。正確には体の異常に。


「さっきから体がだりぃのはあいつ等か?」


「ッ……」



 ソースが慌てて槍でオウガの首を狙う。指二本を使ってそれを止めた。そして、もう片方の腕も使い槍を破壊する。


「その動き……図星だなぁ」


「しまっ――」


「ハッハーーッ!! 殺してやるぞ!!」


 オウガが魔法使いが潜むビルに向かって加速する。剣を使わず、建物を殴ると全体が軽く揺れた。窓ガラスが割れる。


「かてーなァ」


 そう言って建物の中へと入っていった。追ってきたカヅキは建物に向かって叫んだ。


「逃げろッ!! オウガが来るぞ!!」


 慌てて皆が逃げ出す。オウガは愉しそうにそれを追いかけた。


「クハハハ。お前等はほんとに面白い生き物だなぁ!!」


 カヅキは薙刀をソースに投げた。


「それを頼む」


「分かった!!」


 刀に切り替えて建物の中に入っていったオウガを見つけると、急接近し切りかかった。


「おいおい。追いかけるのは俺の役割だろォ!!」


 オウガは振り向くと同時に剣を振る。


「参式<水霧>」


 オウガは確かに切ったと思った。しかし、切られたのは自分だけであった。ただ大したダメージではなかったので怒りは無い。いつの間にか背後にいる男に言う。


「……不思議な動きだ」


「不思議なのはお前だよ。何故地上に来た? 何が目的だ?」


「目、的? ……何だったか……そんなものがあった気がしたが……ああ、そうだ。人間を殺そうと思っただけだ」


「何のために?」


「…………さあな? 本能がそうしろと言ったからじゃないか」


「ダンジョンに戻る気は?」


「クハハハ……無いねェ。こんな愉快な事はダンジョン内にはねェからよォ!!」



 時間稼ぎは終わり。カヅキは建物から出る。逃げるなら追いかけるまでとオウガは彼を追う。






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