106 成長する変異種
街では緊急事態に陥っていた。様々な変異種が暴れている。人の姿に近いホブゴブリンを臨時でオウガと名付けた。数十人の探索者がその魔物を取り囲んでいた。
ソースが遠距離から指と腕を素早く動かすと、それに連動する槍がオウガを襲う。
「脚を頂くとしよう!!」
槍が脚を目掛けて飛ぶ。人から奪った剣でそれを弾いた。
「こそこそしてんじゃねェぞ!!」
オウガは言葉が流ちょうになっていた。怒りをぶつけるように地面を強く蹴り、一瞬で近づく。ソースは逃げ切れないと悟り顔を歪める。その時、黒霧神月が割り込み、薙刀で妨害する。その隙にソースは槍を手元に戻す。
「感謝するッ」
「ソースッ。もう一度距離を取れ!!」
「ぬぅっ、ソースでは!! ッ了解!!」
周辺から魔法が飛びかいオウガに襲い掛かる。ソースより距離が遠い。とはいえ狙われないのはソースがヘイトを貰ってるからだ。あえて視界に入り、引き撃ちで牽制している。
魔法はオウガに何度も当たるが、けろっとしている。全体的に硬いが、魔法に対する耐性が高い様子。
「もっと弱体化の魔法をっ……」
そこで、突如物陰に隠れた魔導師が震えていた。それを不思議そうに見る他の探索者たち。スキルにより何かを見てしまった。怯えながら言う。
「LV……68……化け物……ッ」
「ッ……う、嘘でしょ……そんなの勝てるはずがっ」
ソースは距離を取り、槍を操作し、再びオウガをけん制する。
「くっ。フェンリル討伐の時のメンツが集まればッ」
「無理だってッ……各地でも変異種が現れてるらしいからな!!」
「スタンピードとは何かが違う……いったい何が起きてるっ」
船で魔海域を進んでいた。フランが疑問をぶつける。
「なんか……左右にいる魔物、船に追従してきてない?」
隣に居た無線の男は言う。
「あー初めてですけど。結構離れてますし、刺激しなければ来そうにないですからー」
「……流石はこの海域に慣れてるだけあるね」
魔海域を抜けた瞬間、魔物がその海域の境界に並び、動きを止めた。追ってこないようだ。そして、魔海域側へと泳いで去った。皆の緊張が一気に抜ける。
「助かったですのね……」
「まったくもう二度と行きたくないね」
「いやー。私としてはまた来てほしいですけどね」
「……なんで?」
「なんかまた貴重な体験が出来そうで」
「絶対来ないからっ」
(この人は鋼鉄の精神をお持ちで……)